虚無空間
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「一撃までなら死にはしないわ!武器破壊が出来なくても良いからギリギリまで見極めるわよ」
リティスがはっぱをかける。シャルロッタ、シドニー、ブリタ、オリガ、ロドル、マルコ、カルロ、ヘスス、ローラン、ホラントがウェポンブレイクを狙う為集中する。このメンバーであれば素の防御力が高いため、失敗しても重傷を負うが一撃は耐えられるはずだ。
ベリアル別体が巨大な斧を振りかぶり、タンク隊に向け振り下ろす。
斧が到達するまで1秒と掛からないのだがリティス達におかしな現象が起きた。時間がゆっくりと進んでいたのだ。振り下ろされる斧がゆっくりとスローモーションのように向かってきたのだ。
「これは、一体どういう・・・」
「シャルロッタ!今は集中しなさい。これなら完全なタイミングでカウンターを当てられるわ!」
リティスが再度集中するように檄を飛ばす。そして全員が集中し髪の毛1本無い位まで斧を引き付けカウンターを狙う。
「今!「「「「「「「フルカウンターウェポンブレイク!」」」」」」
その他のタンク部隊も追随し武器破壊技が炸裂する。
リティス達に振り下ろされた斧は一瞬動きを止めたがベリアルが更に力を加え押し込む。だが、柄の部分を含め粉々に砕け散り態勢を崩し両手を地面につけた。
「今だ、いくよ。トリニティディケイド!」
アーク達3姉弟はベリアルを3方向から囲み父親譲りの特殊フィールドを形成した。魔族との混血により、ベリアルの魔力とも波長が合う為イージスフィールドを侵食することが可能だった。但し欠点もあった。デッドラインであれば一人でも使用可能だが、未熟な子供達では3人協力しないと出せない点と、未熟であるがゆえに術に集中する必要があり無防備になるという事だ。もし倒し切れなければ、アーク達はひとたまりもないだろう。
「今です!皆さんお願いします」
アークが叫ぶと同時にベリアルも立ち上がり雄たけびをあげた。
オオオォォォーーーーー
するとベリアルの前に黒い球体が浮かび上がった。そしてその球体へ腕を入れ何かを引っ張り出そうとしていた。しかし、すべてを引き出すことは出来なかった。なぜなら旅団員のOBLが発動したのだ。
力と光の奔流がベリアルを飲み込み静寂が訪れる。
カラーーーン
乾いた音が静寂を破る。先ほどベリアルが引き出そうとしていたものは破壊されたものと同じ斧の柄だった。柄の部分だけが地面に落ちたのだ。ダンジョンが崩壊するかもしれないと思っていたが、あれだけの威力の技を繰り出したのにもかかわらず迷宮が崩れることも無かった。さすがルシ製だ。
フロア中央に、毎度のことだが呆けている人物が1名、ベリアルだ。
「・・・・・フッ、そう言う事か、ルシ」
辺りを見渡し、ナーガ達を視界にとらえた瞬間すべてを理解したようだ。
「さすがはベルじゃわい。説明など不要じゃの」
ナーガがベリアルに声を掛ける。
「その様子だと私以外は混乱していたようだな。まぁ何にせよ、これで迷宮守護という役目は終わったということか」
ナーガ、アスタロト、アンラ・マンユが頷く。
「メーティスも元気そうで良かった。あいつはこうなることが分かっていたから、ネモに任せたんだな」
「ベルおじさん、お久しぶりです。多分そうかもしれません・・・別れの日にルシフェル様は、またみんなに会えるから心配しないでって言ってましたから」
「これで、ルシとシルヴィア以外は揃ったわけだな。あとは赤の王か・・・」
ベリアルはレッドを見つめた。
「お話の途中に申し訳ありません。わたくし雲の旅団レッド隊の・・」
サーラがベリアル達の会話に割り込む。
「知っているよ、サーラ殿。聞きたいことはレッドの事だろう?」
サーラがすべて話す前にベリアルは答えた。
「え、あ、はい」
サーラが畏まるのは他にも理由があった。ベリアルは明らかに戦闘力がナーガ達よりも上で戦闘力は60万を超えていると思われた。正確な数値はレディでなければ分からないが、肌で感じる威圧感で分かるのだ。
「そう畏まらなくていい。戦闘力は跳ね上がっているが、以前の私と同じく戦う気はないよ。で、レッドの事だが、彼は今、君達の呼びかけを待っている事だろう。もちろん、試練を乗り越えていればの話だが」
「でも、どうしたら良いのか・・・」
「サーラ殿、心配は要らない。そろそろ来る頃だよ、そうだろうメーティス?」
ベリアルに言われたメーティスが頷く。
「うん、もうすぐ・・だよ。・・・皆様、お待たせしました。ロードを迎えに行きましょう」
レディの帰還に団員から歓声が上がる。
「レディなのよね?メーティスは大丈夫なの?」
サーラが喜びつつもメーティスの心配をする。
「はい、私はレディです。メーティスは私の中に「心配してくれてありがと、ちゃんといるから大丈夫です」・・・と申しています」
レディが一人二役を演じているように答えた。
「で、私達はどうしたら良いのかしら?」
「はい、ロードの心は現在、虚無空間にあると思われます。ですがこの空間を見つけることはほぼ不可能です。見つけることが出来るのは、この世界を創造した者、もしくは虚無空間を観測したロード及びルシフェル様でしょう」
「ならレッドは自力で戻ってくるのね?」
「いえ、見つける事と、そこから出ることは違います。中に入ってしまうと、すべてが無、時間も無い世界を意識のみが漂う。力無きものは自己を保つことも出来ずに消滅してしまいます」
「ならどうしたら・・・そうか!私達はまだレッドの力を感じることが出来るわ。そう言う事ねレディ?」
サーラは気付いたようだ。
「サーラさん正解です。ロードと繋がっている魔力糸。これは虚無空間によって限りなく断線に近い状態になっています。しかし切れているわけではありません。皆さんの魔力糸を縒って太い綱にして力の限り呼びかければロードに届くかもしれません」
レディはそう言ったもののモニターしている団員の状況を考え一度休息を取ろうと提案するも却下される。
「レディ、心配してくれるのはありがたいけど、あなたになら分かるわよね?」
「はい、何よりも優先するのはレッドさんですよね」
レディが可愛い笑顔で答える。
「あ、あなたレディよね?」
サーラはレディの変わりように少し驚き問いかけるも
「どうしたんです?私はレディです?それよりもレッドさんを呼び戻しましょう」
レディは自身がレッドの事をレッドと呼んでいることに気が付いていないようだった。普段であればロードと呼んでいるのだが、レディの中で何かが起こっているのだろう。
「え、えぇ・・ちょっと聞いてみただけよ」
戸惑うサーラだったがレッドを呼び戻すのが先だと思いレディの変化は後回しにする。
「では、私がレッドさんを探しに潜ります。皆さんはシズクさんに力を集めて下さい。シズクさんはみんなの想いを纏めて私に流してください。皆さんの想いの力をソナーとして発信しレッドさんの位置を探します」
レディが瞑想に入る。
「ん、分かった。月花、サポート、お願い」
シズクも続けて瞑想に入った。
のんびり書いていきます。




