儂らも同じ
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「イタタッ、何があったのdeath」
砂煙の中からデッドラインがヨロヨロと歩いてくる。
「oh、アーク!それにセリーヌとイレーヌまで。たしか<深淵の地下迷宮>へ行っているはずでは?ん、よく見ると旅団の方もいらっしゃるようですね・・・・と、いうことは」
デッドラインは状況を把握したようだった。
「そうじゃ、ディー。ここはお主も知っておろう?」
「ナーガ王よ、なぜあなたもここに居るのデ・・・」
言いかけた途中でデッドラインの表情に変化が起こった。
「ふぅ~。私の心の中にあった違和感が解けましたよナー爺」
言葉使いにも変化が起こりデッドラインはすべてを理解した。
「どうやら長い夢を見ていたようだ。久しぶりアユ、アースそれにメーティス。あと勘違いしない様に、我が子たちよ。夢から覚めた後でも、私はユリアを愛しているよ。それにお前たちもね」
デッドラインの言葉を聞いて3姉弟も安心したようだ。
「さて、いま旅団の指揮権はどなたが?」
「私です」
「サーラ殿か。ナー爺から概略は聞いていますね?」
サーラは頷いた。
「では、私からそれ以上説明することは無いでしょう。あとは残る試練を超え我らが新天地へ到達するのみです」
「承知しました。本日はここで休み、明日から攻略を始めたいと思います」
「そう畏まらなくて良いですよ、サーラ殿。我らは赤の王に忠誠を誓う者。あなた達と同列ですので」
「え、あ、はい、承知しました」
デッドラインにそうは言われたものの急に変えられるものでは無かったので戸惑うサーラだった。そんな二人の会話を遠巻きに3姉弟が聞いていた。父親の急変に戸惑っていたのだ。おちゃらけた口調が急に真面目君か!という様な変わりように、どのように接していいのか分からなかった。
「どうしたお前達。私は何か変か?」
二の足を踏んでいた子供たちに声を掛けるデッドライン。
「パパなんだよね・・・、何かいつもと違うから調子が狂うというか・・・」
アークの意見に二人の姉も首を縦に振っていた。
「そうだな、こんな私をお前たちは知らないものな。よし、家族だけの場合にはいつもの私に戻るということで、どうだ。こんな父親だが、目覚めを待つ一族の長でもあるのだ」
アークは子供たちにいつもの調子でウィンクをする。
「分かりましたわ。私達だっていつまでも子供のままではダディの顔に泥を塗ることになります。偉大なダデ・・父にふさわしい振る舞いを取りましょう、イレーヌ、アーク」
イレーヌとアークが頷いた。今のデッドラインの戦闘力は凡そ45万。遥かに強大な本当の父を見た3姉弟は尊敬と、ほんの少しの畏怖の眼差しを向けていた。
「そんな怖がることは無いよ、私は私だ。さぁおいで」
両手を広げたデッドラインに3姉弟は飛び込んでいった。3姉弟をそっと抱きしめるデッドラインの顔は優しさにあふれていた。
「子を大事に思う親は何も人族だけではない。魔族と言われた儂らも同じじゃ」
デッドライン親子を見ながらナー爺が呟く。
翌朝、いつもの隊列で攻略が開始された。中央の先頭にはレッド隊、そのすぐ後ろにはアークたち3姉弟もいた。3姉弟はいつにも増して魔力を高めていた。偉大な父に情けない姿は見せられないと。
「セリーヌ、イレーヌ、アーク!気合入れすぎよ。そんなことじゃ、到着する前に魔力切れになるわよ」
サーラが心配して声を掛けた。
「サーラさん、心配してくれてありがとうございます。でも到着までは5日ほどあると思うので色々と試したいんです」
「アークにそんなこと言われちゃったら、私達も気合いれて頑張んなきゃね。みんな、試したいことがあれば到着までの間にやるのよ」
サーラの言葉を聞いてローテが終わった者すべてが瞑想に入り魔力を練り始める。大勢の魔力が混じり合い異様な魔力を纏いながら進むせいか、進路を塞ぐ魔物の数が減り進行速度が増した。
(シズク。アークは5日後って言ってたけど合ってる?)
(うん、間違いない)
(このままじゃ早く到着しちゃうから調整するわね)
(サーラに任せる)
この時から半日攻略し、翌朝まで瞑想するというのが主流になり急激に旅団員の力が上昇していった。
のんびり書いていきます。




