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ハッキング

11


「儂らはネモ達に別れを告げ、アトランティスに作られた転移装置でこの場所<深淵の地下迷宮>へ入った。この迷宮は知っておると思うがルシフェル様がお創りになった。今では魔物が徘徊する場所だが、当初は魔物など居ない入り組んだ洞窟じゃった。まぁそこは儂らが向かう場所に適応しなければいけないと、あの方が段階的に魔物を配置して下さったのじゃ。初めは弱い魔物から徐々に強い魔物へとな」


「そして全員の力の底上げを計ったということですね」

 レディは事務的に確認を取る。こういう時のレディさんは並列で色々やっているんですよね。


「うむ、そうじゃ。儂らは人間に比べれば確かに少しだけ強かった。じゃがの、新天地というかお主等らの言う魔界じゃな、そこに対応するには弱すぎたのじゃよ。だからお主らのようにパーティーとか言うものを組んで攻略を始めたんじゃ。おかしいじゃろ?ルシフェル様が作ったダンジョンをルシフェル様と攻略なんて」


「だが、儂らにはこれ以上ない幸せだった。何万という多種多様な眷属を引き連れ、それが混合パーティーを作り、死線を潜り抜けていく。儂らはルシフェル様のもとで一つになることが出来たんじゃ」


「でも一つ問題があった?」

 レディが問いかける。


「何故わかるのじゃ?まぁいい。一つ問題があったのじゃ。我らには魔力というものが無かったのじゃ」


「今あるじゃない。どういうことなの?」

 ミリアが問いただすが、


「せっかちちゃんだのぅ、話すからゆっくり聞きなさい」

 ナーガは孫を宥める様に優しく言う。


「わ、分かったわよ」

 ミリアの顔は真っ赤になっていた。


「儂らの魔力の無さは致命的だった。人よりも強いとはいえ、それは肉体の話じゃ。魔力が無い時点で強さの上限が頭打ちになってしまったんじゃ。そこでルシフェル様は、ご自身の翼を覆う羽根を我らに与えて下さったのじゃ。個人差はあったが、全員が魔力を有することが出来た。それからじゃ、すべての種族の子孫にも生まれながらに魔力を有することが出来たのは」


「それでは、ネモは、その子孫が魔力を持つことが出来ない。いえ・・・・出来る・・・わね・・」

 レディは言いかけて途中でやめてしまった。


「そうじゃ、ネモにはルシフェル様より受け継いだ船があった。当初あれの動力はルシフェル様の魔力じゃ。それに長らく触れることでネモやその子孫、それに船周辺に居るものに影響を与えたのじゃ」


「船から出てくる魔力の波がアストレムル全域に影響を与えた・・・」

 レディの呟きにナーガが頷く。


「そうじゃ。それにより人も動物も魔力を有することになり以前よりも強くなった。儂らも<深淵の地下迷宮>を10年かけて踏破した時には以前と比べ物にならぬほど強くなった。アストレムルに残った人とこれほどまでに強さの開きが出来たのは、ルシフェル様と一緒に居た時間が関係していると思われる。なぜならお主らも感じているじゃろう?レッドの波動を」


「うん、・・・何となくだけど分かる気がするわ。魔力の、力の上限が少しずつ上がっていると思うの」

 サーラは目を閉じ体の中をめぐる力を感じ取っていた。それを聞いた他の隊員も目を閉じ確認する。


「うむ。儂らが10年かけて強くなったところを、お主らは当時の儂らを超えた強さからスタートしておる。だが、未だ儂を超える強さの者が居ない。それの意味が分かるかの?」


「時間・・・ですか?」

 レディが答える。


「それもある、だが他にもある、分からんか?」

 ナーガが旅団員の顔を見渡した。


「では聞くが、レッドがこの世に居なかったら、お主らは今何をしていたと思う?」

 ナーガが皆に問いかけた。


「私は・・・私達は<壺>で全滅していたわ・・・」

 リティスが言葉に詰まりながら答える。

「そっすね・・・兄貴が居なかったら、あそこで死んでいたっす・・・」

 ウッドも答える。


「ルルは・・・ルルは・・・・」

 ルルは言葉に詰まり答えられない。


「私もルルもシズクも、レッドが居たからここまで来ることが出来た。レッドが居ない世界なんて考えられないわ・・・」

 サーラも言葉に詰まる。


 みんなが口々に答えた。皆、今よりも充実した未来を回答したものは居なかった。


「そうじゃ、レッドが居なかったら何も変えられんかったじゃろう。今でも心の何処かで何かあってもレッドが助けてくれると思っておる、違うか?」

 ナーガの言葉に誰もが口を閉じた。


「お主らはルシフェル様の力、シルヴィア様の永遠、そしてネモの知識を手に入れここまでやってきて、儂の試練を乗り越えた。残る4つの試練をお主らのみで超えてレッドを迎えてやれば何かが起こるじゃろうて」


「それはどういう意味ですか?」

 レディが問う。


「さぁのぅ、すべて聞いてしまったら冒険にならんじゃろ。自分たちで何とかしてみなさい。儂は後方で見学させてもらうよ、ほっほっほ」


「あと一つだけ疑問があるのですが?」

 レディが食い下がる。


「なんじゃ?攻略に関しては教えんぞ?」


「いえ、攻略ではありません。先ほどネモの知識と言いましたが、それは船の事ですか?」


「まぁそれもあるがのぅ・・・」

 ナーガはレディをじっくりと見つめ答えるか迷っていたが口を開き始めた。


「お主はレディと言ったのう・・・お主はネモの娘にそっくりなんじゃよ。名はメーティスと言ってな、とても美しく聡明で父を超えるほどの才能があった。じゃが、病弱で儂らも心配しておったのじゃが<深淵の地下迷宮>へと入ってしまったので、後の事は分からんがレディさんを見ると、そういうことなのかと推測してしまうがの」

 ナーガは自分の孫を見るような優しいまなざしを向けた。


「そんなことがあるはずが・・・ないです。あり得ません。私はレディ、クランhopeのシステムメイド人形。でも懐かしい響き・・・」

 レディは動揺していた。


「メ・・メーティス」

 レディがその言葉を口にした途端、レディの中枢へ何者かのハッキングが始まった。


「アラート!!中枢システムに何者かのハッキング検知、浸食速度が速すぎます!デコイ展開し時間を稼ぎファイアウォール展開、ウイルスキラーシステムロード」

 レディの顔はいつもと違い焦りの表情が現れていた。


「無駄じゃよ、それは浸食じゃなく記憶だからの。自身の記憶は殺せんて・・・酷な事をするもんじゃなネモよ」

 ナーガが寂しそうにつぶやくがレディには届いていない。


「おかしい・・・ファイアウォールやウイルスキラーが反応しない・・・外からの侵入経路不明・・・、こ、これはシステム中枢内部から情報が溢れて・・・るの・・・まさか、マザー・・・あぁ、あなたは・・・お父さ・・」

 途中から微動だにしないレディを旅団員が固唾を飲んで見守っていた。しばらくするとレディの瞳が開いていく。


のんびり書いていきます。

モデルの件ですが、サーラさんとルルさんの、元ネタが分りませんでした。多分どなたかのオリジナルかなと思います。もう少し探してみます。


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