災厄
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「あれは、大地が震え始め天変地異・・・災厄が舞い降りたときじゃった。儂は、我が蛇族は行き場を失い、あとは死を待つだけじゃった」
ナーガが語り始めると旅団員はナーガを囲んで耳を傾けた。
「一族で集まり最後の時を迎えようとしたときじゃ。空を飛ぶ大地が現れたのじゃ。我らは恐れおののき地に伏せた。これで終わりじゃと・・・」
「すると、それは音もなく儂らのもとに降りてきて中から光に包まれた2人、わしらにとって神とも呼べる方が現れたのじゃ。その方こそルシフェル様とシルヴィア様じゃった」
二人を思い出すナーガは恍惚の表情を浮かべる。
「そしてルシフェル様は儂に提案してきたのじゃ。ここで滅ぶのを待つか、僕たちと新天地を目指すか。その道のりは険しく厳しいものになるかもしれない。決めるのは君たちだよ、と」
「わしらに残された時間は無く、即断せねばならない状況であった。だが我が一族に残る選択をしたものはいなかった。例えこの先に地獄が待っていようとも、あがいて生を掴むことを選択したのじゃ」
「ルシフェル様とシルヴィア様はそんなわしらを暖かく迎えてくれた」
ナーガはその当時の事を思い出し、ゆっくりと深く呼吸する。
「なぜそんな大事なことを忘れてしまっていたんじゃ・・・儂は・・・儂は・・・ルシフェル様、シルヴィア様・・・・・」
ひとしきり泣き、落ち着きを取り戻したナーガが再び話し始める。
「すまぬな・・・。では続きじゃな・・・」
「辛いのであれば、後程ロードが帰還した際でも宜しいですよ、ナーガ王」
レディが空気を読みナーガ王をいたわる。旅団員もレディと同じ思いであった。誰にもつらい過去はある。それは閉ざしておけば思い出すことが減って滅入ることも減るだろう。しかし話してしまえば、その時の感情や情景がフラッシュバックして襲い掛かってくる。
「いや、いいのじゃ、これも使命、続けさせてくれ」
レディが頷く。
「儂らが大地と思っておったそれは空を飛ぶ船じゃった。お二方はそれを操縦し、次に向かった場所は吸血族が住んでいる洞窟じゃった。そうデッドラインの一族が住んでいる場所じゃよ。それは山々が連なる場所だったのだが災厄は山すら崩していた。山の麓の洞窟に住んでいた吸血族は弱点である日の光のもとに逃げることが出来なく洞窟ごと押しつぶされていったのじゃ。外に出ても死、中に残っても死、地獄じゃったろう」
「わしらに船に残るように言ってお二方は地上に降りて行った。ほどなくしてお二方は大勢の吸血族を特殊フィールドで覆い連れてお戻りになられたのじゃ。デッドライン率いる吸血族もルシフェル様についていくことに決めたのじゃ」
ナーガ王はレオに跨り微動だにしないレッドをちらりと見た。
「わしらの次王も試練のなかであるか・・・・続けよう」
一呼吸置きナーガが続けた。
「次に向かったのは、一帯が毒で覆われた大地に住む悪魔族の支配地だ。ここまで言えば分かるじゃろう、アスタロトの一族が住む場所じゃ。いまでは悪魔と言えば恐ろしいと思うじゃろうが、あの時代の悪魔族は少し特殊な力と食文化を持った人間と変わらない種族じゃったのじゃ。それは悪魔族だけでなく儂らも同じじゃ。人間よりも多少頑丈な皮膚を持っていただけじゃからの。人間は自分を基準と考えてしまうからのう。基準を外れてしまえば異常だとな」
ナーガの言うことも尤もだ。人間はすべて自分基準で計ってしまう。世界基準といっても人間が考えた基準である。もし人間よりも上位の新人類が現れたらどうするのだろうか?最低IQ300超え、身体能力は現在のトップアスリートの2倍、さらに食に関しては肉食で、それ以外の栄養摂取が出来ない。この新人類が人口の半分を占めたら。またこの比率は変動していき、徐々に比率は旧人類を超えていくが旧人類がすべて居なくなるわけではない。隔世遺伝で必ず旧人類は生まれてくるのだ。世界を導いていた旧人類は?生まれてきた旧人類はどんな処遇になるのだろうか。
「船は毒の沼地に不時着し、わしらの時の様にルシフェル様はアスタロトに提案をしたのじゃ。あの方は決して強制などしなかったよ。アスタロトもルシフェル様の提案に従い船に乗ることに決めたよ」
「次に向かったのは、天人族がすむ天空城じゃ。ここも災厄の影響で多くの居住区が崩壊しておった。無事であったのは居城のみであった。ここは危険だからと居城がギリギリ視認できる位置に船を停めて空中で静止した船からルシフェル様が12枚の・・・それはそれは美しい翼を広げ飛び立ったのじゃ。船に乗っていた儂ら一同は美しさのあまり膝を付き茫然と眺めておった」
ナーガは、その当時を思い出し恍惚な表情になったと思うと怒りの表情を浮かべた。
「そのときじゃ!居城の方角からルシフェル様に向かって攻撃が始まったのじゃ!あやつら天人族はこの世界で進化した種族で、今でいうところの雲の旅団の国と言えば分かるじゃろう。あくまで例えじゃ、お主らがそのような事をしないというのは、これまでの行動で分かっておる」
ナーガは落ち着くように一呼吸おいた。
「あやつらの攻撃の威力はすさまじく一発でも掠るだけで我が一族を殲滅するほどであった。その時のわしらには空を飛ぶ力は無く、皆がルシフェル様を助けたい一心でいた。ルシフェル様の弾除けの為に飛び出そうとする他種族の者達を抑えるのに必死じゃったよ」
怒気のこもる口調でナーガは怒りを隠さない。
「だがな、そんな攻撃などルシフェル様にはそよ風じゃった。軽く髪をかき上げるかのように腕を振ると、どこかに吹き飛んでしまっていたよ」
今度はフッと笑顔になるナーガ王であった。
「そしてルシフェル様は最後に残った居住区に向かって飛んでいったのじゃ。その時はシルヴィア様も隣に並んでお飛びになっていらっしゃった。シルヴィア様もルシフェル様同様の非常に美しい10枚の翼を広げておったよ。二人が空を舞う姿は踊りを踊っているようじゃった。その美しさに誰しも言葉を失った」
二人が空を舞う美しさは攻撃を仕掛ける天人族の攻撃すら鈍らせたようだ。
「お二方は居住区にたどり着くと、シルヴィア様はルシフェル様を守るように居城を向いておられた。ルシフェル様に攻撃が始まるとシルヴィア様もルシフェル様と同じく、まるで踊りを踊るように優雅に舞っておった。纏った絹のベールが起こすそよ風ですべての攻撃を吹き飛ばしておった」
「そしてお二方が船に戻ってくると後ろには、血の涙をながしておる天人族の女性がおったよ。うむ、アンラ・マンユじゃ。彼女は国と王に捨てられたのじゃろう、強い憎しみの感情が彼女を支配していたよ。選別から漏れた天人族で憎しみを抱くものがすべてルシフェル様に賛同したようだった。いつもわし等を蔑んでいた天人族であったが、この時から儂ら下等種族を蔑むことは無くなっておった」
「次に向かったのが、氷に閉ざされた大地、アイスプリズンロックじゃ。ここにはルシフェル様とおなじ天使族が住んでいた、というか堕とされたと言った方がいいかの。その翼はルシフェル様と違い漆黒であった。王に逆らい美しい翼を失ったということだ。ここには皆も分かるであろう?ベリアルがいたんじゃ」
「ルシフェル様とベリアル様は旧知の仲でにこやかに談笑しておった。わしらは恐ろしくて近づくことすら出来なかったよ。ここでも黒き翼の者たちが沢山乗船したのじゃ。そして船が出発するときに、ベリアル殿がルシフェル様に請願をしたのじゃ」
「人族を乗せてくれと、ですね?」
レディがそう言うとナーガが頷いた。
「そうじゃ、人族はこの時代あまりに貧弱であった。下等種族のわし等よりも貧弱であった。だが彼らの繁殖力は目を見張るものがあった。その中でも統率が取れた、村よりも大きい街があったのじゃ。そこの長がベリアルと親交のあったネモじゃ。ルシフェル様は船をその街へ転進し救出に向かったよ」
「ネモは倒壊の危険がある場所から街の人達を安全な広場に誘導していた。儂らの乗った船は大きく、近づくのは危険なため少し離れた場所へ着陸した。空を見上げ恐れる人族の驚愕の表情は面白かったぞ。まぁわしらも人の事は言えんがの」
「ネモはルシフェル様の提案を受け入れた。どちらにせよ残れば死じゃからの、少しでも生き残る方を選ぶのが長というものじゃ。そしてネモ達人族も船に乗船したのじゃ」
ナーガが一呼吸いれるとレディが問いかける。
「一つお伺いしても?」
「フッ、聞きたいことは分かる。お前たちの旗艦ネオアトランティス号は我らを助けるために使われた船じゃ。初代艦長はルシフェル様、二代目艦長がネモじゃ。船名は無かったがネモのゴリ押しでネオアトランティス号となったのじゃよ」
ナーガはレディが質問する前に答えた。
(・・・いや、船名はロードが名づけました。では何故一致するの・・・偶然・・それとも・・ロードの船が過去に跳んだ?・・・ありえないわ・・)
のんびり書いていきます。
レッドさんのモデル(あくまで見た目)はスター〇ーシャンのフィ〇ル・カ〇ューズの赤髪verです。そのモデルの性格などさっぱり知りません。イメージ沸くようにネットで探していたら、こんな感じかなと・・・。他にもモデルの設定をしているのですが、何のキャラなのか不明なため、分かる分だけ少しずつ紹介しようかと思っているのですが、イメージが壊れる可能性もあるのでどうしようか迷っています。(元ネタとこの内容と合わない可能性があるので)




