パーティー
8
「手応えはあったけど、これで倒せなかったらどうしようかしら・・・」
サーラがつい弱気な言葉を口にする。スカウト組も召喚されたメデューサとリザードマンの処理が終わったようで固唾を飲んで見守る。だがサーラも含め未だ余力を十分残していた。
「クラリスとイライザは戻ったようね。もし、立ち上がることがあったら分かっているわね?」
全員が頷いた。これはレッドに、絶対に使用するなと言われていた技の事だ。命を削り繰り出す技で通常では考えられない威力を生み出す。俺が使った広範囲自爆奥義ホーリーフレアバーストがそれだ。死を前提に行った技でLvもカンスト状態ではなかったが一帯を消し炭に変えることが出来た。あの時の俺の戦闘力は大体5000程度でも威力は20万オーバーだったろう。40倍以上の威力を出せていたと思う。
現在の旅団員はカンストしており戦闘力も平均10000程だ。ほんの少しの命を削るだけで先ほどの最強技を繰り出せば威力は5倍を超えるだろう。最強技の平均威力が5万だとすると25万の威力だ。リーズ達の魔法に詠唱時間が含まれなければリーズ達が最強間違いなしだ。だって25万の4乗って・・・・まぁ詠唱が終わればだけどね。詠唱が邪魔されれば0だし。
「いえ、問題ないでしょう。スキャン結果はナーガの戦闘力を表示していません。皆さんお疲れ様です」
レディが答える。しかしサーラ以下旅団員は戦闘態勢を維持したままであった。
やがて光が収まり状況が見えてくる。まだ砂煙が舞っている中に人影が見えた。
「!!!、散開!」
サーラの号令で全員が散らばる。そこには先ほどの巨体のナーガではなく、いつもの見慣れたナーガが立っていた。
「皆さん、お待ちください!その方を攻撃しないで下さい。生体反応が私に登録されています!」
レディが叫ぶ。それを聞いたサーラが片手を上げ攻撃を中断させる。だが戦闘態勢は崩さない。
「どういうこと?」
サーラがレディに問いかける。
「あそこにいる方は間違いなくナーガ国王本人です。理由は解析していますが未だ不明です」
レディの表情が消えている。こういう時は本体と情報のやり取りをしているのだ。
「分かったわ、まず私が行くからみんなは手を出さないようにね」
サーラは構えを解きナーガへ近づく。
「おぉ、そなたはレッドと共にいる、えぇ・・・と第4夫人であったか?名は確かサーラと言ったか?」
意外なことにナーガから声を掛けられた。
「!!!、まずい」
レディが物凄い速さでサーラとナーガの間に割って入った。
「ナーガ国王、拝謁できて光栄です。私は雲の旅団のサポートを務めさせていただいているレディと申します。後ろにいるのが我がロードの、第 2 夫 人 候 補の サーラ様です。お間違えの無いようお願い申し上げます」
そう言っているレディの後ろでは今にもナーガに一撃を入れようと構えていたサーラが拳を収めるところであった。
「それは済まないことをした。サーラ第2夫人候補よ許してくれ」
ナーガがすまなそうに答えるとサーラも怒りを収めたようだ。
「レディさんと呼んでいいかの?して、ここはどこで儂はいったい?」
ナーガは状況が掴めずレディに問いかけた。
「はい、申し訳ありませんが私の手を握り10秒ほどお待ちいただけますか?」
レディが能面のような顔に戻り答えたのでナーガもそれに従い手を握る。
「スキャン実行、解析完了、お待たせしました。ではこれから説明しますが宜しいでしょうか?」
レディの言葉にナーガが「うむ」と頷いた。
「現在の場所は<深淵の地下迷宮>地下6000階フロアです。今のナーガ国王の戦闘力は以前の40倍以上の、40万です。これも推測になりますがアストレムルにいたナーガ様と、ここを守護していたナーガは、元は一つだということです。何かの要素が起因して二つに分かれたのでしょう。本来の姿を取り戻したことで、力も本来の力を取り戻したということです。そして力の結晶であるナーガ国王の別体を倒すことにより記憶を持つあなたの体を呼び寄せ封印された何かを解放した。他にも・・・」
「他にも何じゃ?」
「ナーガ様の一族の皆様にも変化が訪れるかと・・・推測で申し訳ありません」
「ふむ・・・状況は理解した。だが封印された何かなど儂には無いぞ?うっ・・・なんじゃこれは霧が晴れていく・・・」
ナーガの瞳から涙が零れ落ちた。
「そ、そなたは・・あぁ・・・そうであったか。ルシフェル様・・・儂は何で大事なことを・・・とても・・とても大切な思い出を忘れてしまっていたのじゃ・・・・」
全員その場でナーガを見つめ次の言葉を待つ。
「儂は以前ルシフェル様に救われ一緒に旅をしておったのじゃ。そうじゃな、おぬしらの言うパーティーというやつじゃ。ルシフェル様とシルヴィア様に助けていただき、他にはアンラ・マンユ、アスタロト、デッドライン、ベリアル、そしてネモじゃ」
ナーガは誰に向かって話すわけでもなく、呟くように語り出した。
のんびり書いていきます。




