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状況把握

6


 あれから何日経過しただろうか・・・・ずっと暗闇の中を睡魔と戦ってきた。ここから出る方法が分からない。今ある体を動かそうが瞳を見開いても現実の世界に戻ることが出来なかった。


「おめ・・・ござ・・すロード」

 そんな時、急に声が聞こえた。


「レディか?どこにいるんだ?」

 俺は当たりを見渡すが以前と変わらずここには何もない。


「私・・その世界に・ける力があり・・・ので、直・・・語り掛・・・ます」


「俺は力を完全に開放できたのか?」


「は・、・・状・分析では間違・な・と思わ・・す」

 徐々に鮮明に声が聞こえてくる。


「レディ、君は一体どこまで理解できているんだ?」


「・・はロード程の力はあり・・んが、自・・化による魔改・を行い、世界から宇宙へと拡大して解析し知りえた結果をもとに、ありとあらゆる可能性を計算してきました。そしてロードという被検体のおかげで不確定要素を排除し現在の状況を踏まえて出した結果は・・」

 俺はレディの言葉を待つ。


「あくまで推論ですが、ロードの力はこの世界において∞ということになります。分かりやすく言えば、私達が存在するこの世界、いや宇宙よりももっと大きな何かを手に入れ支配下におきました。その“何か”から生まれるすべてのエネルギーを手に入れ、それは現在も成長しており計測不能です。そしてその本質が理解できるようになれば更なる世界への扉が開かれるかもしれません」

 レディが口ごもる感じが読み取れたので続けるように言う。


「しかし、これには検証が必要に・・・いえ、話します。仮にもしそこに到達することが出来れば破壊だけではなく創造することや時間さえも支配可能になると思われます」


「ビッグバンの力とそこに生まれたすべての者たちの力、吸収した何かのありとあらゆる力が俺に与えられ、・・・そのなんだ・・神のような力も・・・か?」


「簡単に言えばそういうことになります。成長を続ける宇宙のエネルギーは無限です。おそらくこの世界、いえ宇宙ではロードを超える存在は居ません。ロードに傷をつける事すら不可能です。仮にロードを倒せるものが居たとしたら、ロードと同じ存在で対消滅させるしかないでしょう。しかし、そうなるとこの世の世界、宇宙がすべて無くなってしまい勝ち負けなど存在しないので意味がありませんが・・・」


「分かった、これで俺の修業は終わりで良いのか?」


「はい、終了です。今のロードであれば暴走することなく力を制御できるはずです」


「オッケー、で、どうすればここから出られるんだ?」


「自分の体をイメージし、瞳を開けて下さい、ゆっくりと、体に馴染ませるように、ゆっくりと。皆が貴方を待っています・・・・」

 声が小さくなっていきこれ以降レディの声は届かなくなっていた。


「いや、目ぇ開けてるしぃ!」

 そういう事じゃないのか・・・・。俺は再度瞳を閉じる感覚を思い出し、現在見えている何もない景色を閉じると真の暗闇が訪れた。また五感が無くなる。自分が落ちているのか立っているのか、横たわっているのか分からない。


―――まず自分の体をイメージするんだ、強く!

 ドクンッ・・・・・・・・・-ドクン!

 

 何か内から力の鼓動が伝わりだした。それは徐々に早くなる。


 ドクン、ドクン、ドクン、


 同時に体の感覚が戻ってくる。つま先から頭のてっぺんまで感じることが出来た。あとは言われた通りにゆっくりと瞳を開ける。暗闇に光が差し込むのと同時に音も伝わってくる。


「・・・レッ・・レッ君!レッ君!」

 一番最初に見えたのはシズクの泣き顔だった。次にサーラやリティス達レッド隊。その周りにも目元が真っ赤になったミリアやクラリスも見える。俺には今の状況がどのようになっているのかさっぱり分からなかった。


「俺は、レオに乗っていつものように力の開放のため瞑想を・・」

 状況を確認するため自分を見るとレオに跨っていた。自分の手のひらを確認するが問題ない様だ、と思ったが違っていた。更に確認しようと手を挙げた瞬間、手が手から飛び出したのだ。詳しく言えば、手を挙げたら肉体の腕から力そのもののエネルギーの腕が先に上がって、後から肉体が追い付いて重なったのだ。顔も左右に振ってみるが、肉体が後からついて来る感じでとても気持ちが悪い。


「ロード、今は我慢して下さい。しばらくすれば同調するはずです。今は器である肉体がロードの力に相応しい体に再構成していますので」

 レディの説明に納得してレオから降りてみんなから状況を聞くことにした。


「で、何でみんな泣いてるの?・・って、デッドライン!どうやって?」

 デッドラインが居た。その他にもナーガ、アンラ・マンユ、アスタロト、ベリアルもいたのだ。それは以前よりも格段に強い状態だった。戦闘力で言えば40万オーバーだろう。個の戦闘力で言えば俺以外勝てる見込みはないが、1万越えの旅団員30~40名で何とかなる強さだ。そんな予想外の事もあり俺の頭は状況を把握できずにレディに確認を取ろうとするとデッドラインが片膝をつき頭を垂れる。他の魔王もデッドラインに合わせ頭を垂れた。


「我らが次なる王よ、ご帰還お待ちしておりました」


「は?なんとかデース!じゃないのかよ」

 と突っ込むが反応なし・・・。やった俺が恥ずかしいじゃん・・・。よく見ると旅団員に負傷者が結構いることが分かった。重傷者はおらず擦り傷程度ではあったが、装備にも傷が沢山確認出来る。


「これは、どういうことだデッドライン!お前たちがやったのか!!」

 俺は瞬間湯沸かし器の様に激高した。そして意に反し力が溢れだす。


「レッ君・・・きつい・・少し抑えて・・・」

 シズクが苦しそうに言うのを見て急いで力を抑える。


「すまないシズク。みんなも大丈夫か」

 辺りをみると倒れこむ仲間はいなかったが片膝をついて肩で息をしている者が多数いた。ちょっとした力の開放が仲間を威圧してしまった。


「私の記録をロードへ転送します」

 状況把握をしなければと思いレディに視線を移す前に、レディから俺の頭に瞑想を始めてからの記録が転送された。時間にして0.00001秒にも満たない中で俺は状況を把握することが出来た。


 驚いたことに瞑想を始めてから約一か月が経過していたのだ。俺の感覚では5日も経過していなかったはずだ。


のんびり書いていきます。

いつも誤字脱字報告有難うございます。

とても助かっています。

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