力の開放
1
「ウッド、今何階だっけ?」
「えーっとっすね・・・300階の大広間を超えて・・1、2、・・・」
ウッドが数えていると、レディが間に入って答えた。
「現在326階を踏破中です」
「そっかぁ・・・今日はどこまでいけるかねぇ・・・」
遠くを見つめながら誰に言うともなく呟く。
「この速度であれば500階へ到達出来ます」
レディが事務的に答える。
「そっかぁ・・先は長そうだな・・・・。一体、何階まであるのやら・・・」
先頭の俺は愛馬レオを駆って魔物を薙ぎ払いつつ進む。俺達の進撃速度を遅らせることが出来る魔物などいなかった。
ここは<深淵の地下迷宮>。ウッドが新婚旅行から戻った3日後に攻略を開始した。新婚旅行には、ウッドの両親と妹、ミンクちゃんの親代わりのモッチョ氏とライラさん、それとクランメイドが付き添ったようだ。
「レッ君、千里眼で見ているけど1000階以上ある。その先もまだありそう」
シズクが後ろから答える。
「そっか、サンキュー」
1000階以上って・・・先は長いな・・・。色々と考えながら無意識に剣を振りつつ進んでいると後ろが何やら騒がしい。
「団長ぉ~、このままだとあっしら眠っちゃいそうですぜ。団長は後ろでのんびり構えてもらえるとありがたいんですがねぇ」
スカウト組1番隊カルロが騒ぎ出した。それもそのはず。ダンジョンに入ってからこれまでずっと俺一人ですべてなぎ倒してきたのだ。隊員に怪我をさせない為の親心ってやつ?
「ほら、お前たちが怪我するとあれかなぁーって思ってさ」
「俺達スカウト組も前とは違うので任せてほしいですぜ。なぁみんな?」
カルロがスカウト組に問いかけると
「そうですね、このままだと戦闘の勘が鈍ってしまいそうです。団長達は後ろに下がって、我々スカウト組に任せてくれるのが良いと思います」
2番隊隊長のベイロンが答えると、各隊の隊長もこれに続いた。結果、先陣はスカウト組が3隊ずつ10フロア交代で務めることになった。これによりレッド隊、フリーダム隊、ウィンド隊は後ろに下がりクルーズモードに入る事となる。
(何もしないとなると・・・とても暇だな・・・・)
「シズク、どの位まで見えた?」
「今、2567階まで見えた、まだまだ先があるから待ってて」
「俺も手伝おうか?力開放すれば見えそうだし、なぁレディ?」
レディが何か言いかけようとしたがシズクが遮るように答えた。
「ダメ、レッ君は大人しくしてて」
そう言ってシズクは再び目を閉じ千里眼を発動させた。
「あぁ、そぅ・・」
暇だ・・・迷宮内は景色の変化はなく、行けども行けども綺麗に整えられた岩肌ばかり。その岩肌が発光しており松明なども必要なく迷宮を進むことが出来た。明るさは白夜の感じと言えば分かるだろうか。
(レディ、例の件は進めてくれているな?)
(はい、ロードの指示通りに動いています)
(それなら良いんだ。よろしく頼むな!)
(承知しました)
その後、俺は目を閉じて自分の中の力の制御をするため瞑想することにした。そして数刻が過ぎ、大きな広間に到着した。
「地下500階に到着したわよレッド」
サーラが振り返り報告してくれた。今では目を閉じても周りの景色が目で見るよりも鮮明に見えるほど、力の制御が出来るようになっていた。それでも力の1%も出していない。まだまだ鍛える余地が有り余っていた。
「みたいだね。今日はここで休むことにしようか」
俺は目を開けサーラに答える。
「みんな、今日はここでキャンプよ」
サーラが言うと各隊はコテージの用意を始めた。俺達も準備をしようと空いている場所を探したが、どうやら場所は決まっていたようだ。俺達が中心に来るように既に周りにコテージが張られていた。みんなが俺の為に、必要以上に気を使ってくれた。その行為に答える為にも、俺はこの迷宮を抜けるまでにレディの制御無しで30%以上の力を開放できるようにするつもりだった。現状、暴走しないで開放できる力は3%ほどだ。レディの制御入りで30%が限界だ。これをレディの制御入りで60%を目指し、最終的には自分自身で100%開放状態を制御しなければいけないんだけどね。
目を閉じ、力をほんの少しずつ開放して外に放出しない様に抑え込む。力は無限に沸いてくるので放出しても問題ないのだが、周りの仲間がそれに耐えることが出来ない。だから少しずつ少しずつ体に馴染ませるように力を開放する。じれったいがそれが一番の近道だと思う。
3日目の夜には1500階に到達した。この時点で5%の力を常時開放できるようになっていた。仲間と話すとき以外は、ずっと目を閉じ力の制御に集中した。
1%開放状態のときにはステータスの数値が既にバグって確認出来ない状態になっていた。str、int等すべての数値が9999を超えて文字化けしていたのだ。これはあくまで普通の冒険者というか、このMMOの話だが、通常Lv100に到達するとジョブにもよるが大抵のステが3000~4000の範囲内に収まる。そこでレディがLvでの強さが不明なためステで戦闘力を判断した方が良いと提案してきた。通常のLv100のステで一番高いものが3000ならば戦闘力3000ということだ。したがって旅団のみんなのステの平均は6000~8000ほどなので戦闘力6000~8000となる。Lv100のステの上限を超えている時点でLvってものが意味をなさない。理由は分からないがMMOの仕様が適用されていないという事で、枠が無くなった、もしくは突破したことになるのだろう。
ちなみにレッド隊の戦闘力が12000ほど、フリーダム、ウィンド隊や3姉弟が10000だ。レディは10000、俺は現状の力開放で100万程度、レディのサポート付では計測不可で今後の開放でどれだけ伸びるかも予測不可能だってさ。
そして俺が力の解放を始めてから周りに影響が出始めてきていた。それは悪い意味ではなくいい意味である。少しずつであるが旅団の仲間、厳密に言うと俺と同じように真龍の鱗を貰った団員に俺の力の一部が分け与えられ始めたのだ。初めは力が抜けていくような違和感だった。息を止めていても何処からか抜けていく感じと言えば分かりやすいかもしれない。どこから抜けて行っているのか意識を集中していくと、次第に背中の鱗へ力が流れていくのが分かった。それが実感できるほどの力の解放が出来るようになると旅団員の力が急激に上がっていくのが分かった。そのころには旅団員たちも気が付き始め、続々と報告が上がってきた。
「これは総戦力アップしてラッキーってことかな?」
「ですが懸念点もあると思います。これには検証が必要ですが・・・」
レディが神妙な顔つきで答えた。
「なんかまずい事でもあるのか?・・・あぁ・・・やっぱあるか」
問題ないだろと答えかけて気付いた。
「ですね、検証してみないと確かなことは言えませんが、現在旅団員の戦闘力は1000以上上昇しています。ですがロードの力が暴走した場合、旅団員にどのようなことが起きるのか不明です」
レディが押し黙ったままになる。こういう時は何か計算しているので黙って待つことにしている。クランハウスの本体とリンクして色々とやっているのだ。
「ロード、いくつか不明な部分があるので真龍の鱗のサンプルが欲しいのですが」
「背中の鱗削ってみる?」
俺は服を脱いでレディに背中を向けた。するとレディが小さな一片の鱗に手を添えた。するとレディの手から体の中に何かが入ってくる感じがした。
「削らなくても解析は出来ますので少々お待ちください。いや、待ってください・・・これには時間が掛かりそうです」
そういうとレディは自分の指先を切り数滴鱗へ血を垂らした。
のんびり書いていきます。




