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休息

P


 クランハウス最上階の鐘が鳴り響き、沢山の人から祝福されている二人がいた。身長は人間でいうところの小学生程であるが雰囲気は大人だ。二人の名は、ウッドとミンク、ホビット族である。その二人が揃って俺の方へ歩いてくる。


「結婚おめでとう、ウッド、ミンクちゃん。ミンクちゃんには先に謝っておこうかな」

 俺がそう言うとミンクちゃんはどういうこと、といった顔をする。


「まだまだ、俺達の冒険は終わらない。だから、ウッドが家に帰ることが出来ない場合も多いと思うから許してくれ」


「レッドさん、それなら大丈夫です。仮に私も冒険者の端くれ。それくらい理解しているつもりよ、ね、ウッドさん」

 ミンクちゃんがウッドを見ながらそう言うと


「そっすよ兄貴。ミンクちゃんも新人を育てる中で冒険者の事を理解してくれたっす。ね、ミンクちゃん」

 ウッドもミンクちゃんを見ながらそう言う。


 はたから見るとキモイカップルのようだが今日だけは良いのかと思う。一生に一度?の結婚式なのだから。それに妹のリーズも嬉しそうにしていた。普段であればお兄ちゃんキモイとか言ってそうだが・・・・。


「それなら安心だ。今回は少し時間がかかりそうだからな」


 今回は<深淵の地下迷宮>を踏破し魔界へと行かなければならない。ダンジョンの最下層が何階まであるのかも分からない状況で進み、魔界に到達しても右も左も分からない為、いつ帰ることが出来るかも不明だ。


「ウッドさん、浮気は駄目よ。それに変なお店に行っても駄目だからね!」

 ミンクちゃんがウッドに言うと。


「いや、お店って・・あれは兄貴が行こうっていうから・・・。そっすよね兄貴?」


 は?・・・俺に振るか・・・。ウッドが誘ってもいないのに勝手についてきたんだろが・・・・。それに、そのおかげでミンクちゃんに会えたんじゃん。


「ハハハ・・・そうだったね・・・。気を付けますよミンクちゃん」

(兄貴、ありがとっす)

(えぇ、良いですよ・・・今日はめでたい日なんだし・・・)

(この借りは必ずどこかで返すっす!)

(はぁ、期待しないで待ってますよ・・・)


「レッドさんが約束してくれたのなら安心ね。そうだ!レッドさんもそろそろ身を固めたら?ね、ウッドさん」


「ミンクちゃん・・・それは難しいと思うっすよ・・・。周りを見れば分かるっす・・・」


 ミンクちゃんの発言に結婚式参加者の女子組が一斉に振り向いた。どうやらこちらの会話に聞き耳を立てていたらしい。その視線に一瞬たじろぐも、ミンクちゃんが続ける。


「レ、レッドさんなら、みんなを幸せに出来るでしょ?全員と結婚しちゃいなさいよ。誰も文句は言わないわよ」

 どうやらミンクちゃんは女子組と、このセリフを言うように打ち合わせ済みだったようだ。知らないのは俺とウッドのみだったのね。


「ミンクちゃん、それとみんなも聞いてくれ。すでに婚約指輪は渡してあると思う。これから行く魔界では何が起こるか分からない。だから無事に帰ってくることが出来たら結婚してもいいかなって思ってる」

 言った後に後悔したが、これ以上引き延ばすことは彼女たちに失礼かと思い自分を納得させた。でも結婚って何だろう・・・・、いつも一緒に居るから同じようなものなのに・・・。

 そんな俺の心の声をよそに、俺の言葉を聞いた女子組の盛り上がりは想像を絶するもので、今回主役であるウッドとミンクちゃんが可哀想になるほどであった。


「本当にレッドさんは慕われているのね。みんなを幸せにしてあげてね」


 そう言ってミンクちゃんがブーケトスを行った。そのブーケトスの争奪戦が、これまた想像を絶するのもであったのは言うまでも無かった。

 女子組は色付きのドレスを着ていたが下着が見えるのも気にせず目にも止まらぬ速度でブーケを奪い合う。ドレスの裾を破り動きやすくする強者までいたのだ。魔法使いは障壁を張って防ぎ、回復陣はバインドや眠りの魔法で妨害するという小規模の戦闘が行われていた。結果、最後に誰がゲットしたかというと、クランメイドのレディだった。ブーケ争奪戦をモニターし計算の結果、労せずゲットするという・・・。


 神やん・・・・。


「クランロード争奪戦、勝利者は私です。これで女子組序列1位は私で良いのでしょうか?」

 レディがさらっと物凄い発言をすると女子組から猛反発の嵐が。


「良いわけない。ポイント制であなたは登録もしていない。だから駄目」

 シズクが。


「シズクの言う通り。今回はノーカンだから、それを私に渡しなさい」

 とサーラが言うと。


「サーラさん、どさくさに紛れるのはよくありませんわ」

 リティスが言うと、女子組も賛同した。


「そういうことだから、もう一度投げてくれるかしらレディさん。今度はあなたも入れての再勝負ですからね」

 ミリアが言うと、レディがブーケを空高く投げた。それを合図に争奪戦第2ラウンド開始となった。第2ラウンドもレディが労せずゲットする事となった。

 それもそのはず、みんなの装飾品及び装備はすべてレディとリンクするように作られているので、レディにはみんなの行動すべてが分かるのだ。それに付け加えて未来予測の演算能力を加味すれば勝てるわけがなかった。


「という事ですので、私にも指輪をお願いしますね、クランロード」

 有無を言わさないレディの言葉に俺は頷くしかなかった。何を言ってもレディには勝てる気がしなかったのだ。それにレディがへそを曲げてクランハウス維持機能が停止でもしてしまったら大変ですし・・・。


 盛り上がっている裏でティアとサキュちゃんが料理を頬張りつつ会話していた。


「なぁなぁティア、みんな騒いでいるけど何やっているんだ?」


「あれはねぇ、マスターと結婚するためのポイント稼ぎだと思うのよねぇ」


「何だ、その、結婚って?」


「サキュちゃんの世界では結婚ってないのぉ?そういえば、あたしの所も無かったわねぇ」


「無いな、それ旨いのか?」


「説明するのは難しいわねぇ・・・・、結婚って人間だけなのよねぇ・・・簡単にいうなら・・・交尾・・・そう交尾よ!人間は結婚しないと子供を作らないのよ」


「そうなのか、結婚って交尾の事だったのか!だったら俺も参加しないとね!」


「えぇ~やめた方が良いと思うのよねぇ・・・」


「なんで?」


「だって、女子組って言われてるけどぉ、化け物女子って方がしっくりくるのよねぇ。サキュちゃんも強いけどぉ、うちの女子たちが本気出すと化け物になるからねぇ・・・なかなかポイントなんて取れないわよぅ」


「言われてみれば納得かも。でもロードの子供が欲しいんだよな」


「だったら簡単よぅ。サキュちゃんはクランハウス防衛を任されているんでしょ?防衛に関して話があるって言ってマスターを呼べばいいのよぉ。そこからサキュちゃんの得意分野である誘惑を使えばイチコロよぅ」


「そうか!頭良いなティアは。その作戦でいくよ!」


「それにしても、いつの間にか周りが静かに・・・」


「何がイチコロだって?」


「ギクッ!・・・マ、マスター、これには事情がですねぇ・・・」


「化け物女子って誰の事かしら?」


「ヒィィ、サーラさん、そ、それはですねぇ・・・パタリ」

 ティアが気を失うフリをする。

(あとは任せるわよぅ)


「ちょっ・・・と・・・。誰かと思ったらマイロードじゃないか。私はティアを治療室に運ばないといけないので、これで失礼するよ」

 サキュちゃんがティアを抱えて治療室に逃げていった。

(ふぅ、あぶねぇ。ティアの言う通り化け物だったな。一旦仕切り直すぜ)

(そうねぇ、ほとぼり冷めるまで大人しくするわよぅ)

(あぁ、それがいいな)


 とまぁ賑やかな結婚式が1週間ほどお祭りの様に行われた。


 あとはウッド達がハネムーンから帰ってきたら<深淵の地下迷宮>か・・・。魔界とはどんな世界なのだろう・・・色々と気にはなるが行けば分かる事だ。今はこの幸せを楽しもう。














久しぶりに投稿します。

環境の変化に伴い毎日投稿する事が難しくなってしまいました。

申し訳ありませんが不定期更新となります。

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