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魔界

84


 翌早朝、俺は一人散歩していた。考えてみれば一人になることは滅多になかったな。ウッドとリーズ、リティス、ルルと月花と故郷がある者は里帰りし、サーラとシズクはまだ寝ていた。


 池のほとりに腰かけ眺めていると突然周囲の時間が止まった。飛んでいる鳥や魚が静止していたのだ。こんなことが出来るのは知っている中では一人しかいない。


「寂しいのかい?」


「ルシフェルさんか・・・寂しくはないよ。ただ・・・」


「ただ?」


「ただ、あっという間だったなって思って」


「そうだね、僕よりも早い成長を遂げたものね。君の成長速度は凄かったよ」


「ってことは、ルシフェルさんも元は普通の冒険者だったのか?」


「ルシで良いよ。僕たちの世界には冒険者という設定は無いからどうだろうね。昔話を聞く気はあるかい?」

俺は頷いた。


「ある時、僕たちの上位者であったものが旅立ちに際して選別を行ったのさ。僕にはどうしてもそれが許せなくてね。仲間と共にここに残ることにしたんだよ。案の定、選ばれた僕たちが残ると言い出したものだから、上位者の怒りを買ってしまい地上には居られなくなった。そこで僕たちは地下深くに潜ることにした。君も知っているはずだよ」


「<深淵の地下迷宮>と海底神殿都市アトランティスか・・・・」


「そう、その迷宮は僕が作ったのさ。どういうわけか君たちの言うフィフスへ出入口が移ってしまったけどね。それで最深部には何があると思う?」


「魔界か?」


「ご明察。しかし僕が繋げた世界は人間には過酷すぎた。瘴気渦巻く世界にほとんどの者が耐えることが出来なかった。耐えることが出来た者も徐々に体を適応するため変貌していったのさ」


「という事は、魔族というのは・・・」


「そう、人間の進化した姿だね。意思を保つことが出来なくなった者もいるから退化かもしれないが肉体は劇的に強靭になったよ」


「アトランティス人はどうなったんだ?」


「アトランティスは完全に制御された都市だった。すべてが自動化され働かなくても大丈夫な世界を目指した。都市内に居れば好きな物は何でも手に入る、理想郷さ。でも考えてみれば分かるけど、食事をしたいと思えば好きな物が出てくる世界だよ。お金が欲しいと思っても、買いたいものは自動で出てくるのだからお金の意味がない。やがて人間の活力がなくなっていくのは明らかだったよ。出生率も下がり緩やかに衰退するのみとなっていった。でもね、このままじゃいけないと都市を出る者が現れたのさ」


「地上には出ることが出来なかったんじゃ?」


「そうだね、でもその時には既に上位者は旅立った後だったのさ。そして時を同じにして上位者に取り残された天空人とアトランティスの末裔の海底人が地上でばったり会うのさ。どうなったと思う?」


「戦争?」


「ブッブー、不正解。意気投合して国を作っていったんだよ。人間って面白いよね。その後はみんなの知る世界になっていくんだけどね」


「<深淵の地下迷宮>が魔界と繋がっているという事は、今後新たな魔族の侵攻があるのか?」


「それは君次第じゃないかな?魔族も元は人間だからね。話が通じるかもよ?」


「魔族は力こそ正義だろ。脆弱な人間と友好関係を築くとは思えないけど」


「だから言ったろ、君次第って。既に君にはその力があると思うよ」


「俺が魔界を平定するのか?それじゃルシと一緒じゃん」


「プッ、僕は魔界を平定なんかしていないさ。仲間と一緒に、そこに居ただけだもん。人間が何をしようとも、僕は不干渉だったよ。君がどうするのか気にはなるけど、そろそろ僕も旅立つ時が来たようだ」


「いや、待てし!まだ聞きたいこといっぱいあるんだよ」


「僕はこの世界を離れて新たな世界に旅立つ。この世界の上位者は君だ。好きにすると良いさ。次なる世界で君が来るのを待っているよ・・・」


「ちょっおま、ルシ、待ってくれ」

 ルシの気配が、存在が完全に消えるのを感じたと同時に周囲が動き出した。


「イミフだわ。次なる世界の行き方分からんし・・・。好きにしろってどうしたら良いっちゅーねん。あぁ、クソ!」


「「レッ君、レッド!」」

 背後からシズクとサーラが駆け寄ってきた。二人とも心配そうに俺の顔をのぞき込んでくる。二人に心配されるようじゃ俺もまだまだって事だな。ルシに好きにしろって言われたときからどうするか決めていたんだ。突き進むのみだな。


「シズク、サーラ。宇宙へ旅立つ前に一仕事済ませるぞ」


「「うん」」


1ヶ月後、<深淵の地下迷宮>の入り口に雲の旅団の全員が集まった。


「じゃぁ行くか!」


「「「「「「「おう」」」」」」」


読んでいただきありがとうございます。

ここでアストレムル編は終わり、魔界編へ続くのですが少しお休みさせていただきます。

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