意外な出費
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フィフスへ来るのは久しぶりだったので、みんなで秘密基地へ行くことにした。今はスカウト組に続く部隊の育成場所として使われているはずだった。また、才能のある子供を早期にスカウトし、より実戦に近い訓練を行う場所でもあった。
現状、世界情勢は安定しているため戦争や魔族の侵攻などの心配は無くなっていた。だがモッチョ氏の提案というか世界の提案で、旅立つ俺達に代わり世界警察を担う者達の育成を行っていた。
「久しぶりに来たけど、以前と変わりなく綺麗に使ってくれているな」
「そっすね。兄貴の部屋は誰が使っているんすかね?」
そう言うウッドに答える声が聞こえてきた。
「レッドさん、ウッドさん!お久しぶりです」
「ウッド、知り合い?」
「いや、知らないっす」
そこには笑顔で駆け寄る15~6歳の若者がいた。
「コラァ!そこの坊主、訓練中だぞ!」
大声で叫ぶ人物がいた。俺達のよく知る人物だった。
「ガイさんが子供たちの教官をやっていたんですね」
そう、モッチョ氏のボディガードだった人で鍛冶職人ボッシの弟である。今は子供たちの訓練教官として働いているらしい。
「レッドさん、お久しぶりです。兄の件ではお世話になりました」
「あれはボッシの実力で俺は道を教えただけだから。それよりここの責任者って誰なの?」
「知らないんですか?だったら、カイ!教えて差し上げろ」
「はいぃ?カイってあのカイなのか!」
以前会った時よりも大人になっていて気が付かなかった。
「ここの所長は、僕の・・私の父であるギブソンが務めています」
カイが説明すると秘密基地からギブソンさんが出てきた。
「お久しぶりです、レッドさん、それと旅団の皆さん」
ギブソンの説明だと、成人までの訓練はガイが、成人以降の訓練はスカウト組のメンバーが指導に来ていたとの事だ。どおりで夕方以降訓練を終えたPTが帰ってくるなりスカウト組を囲んでいたわけだ・・・決して嫉妬ではありませんからね。でもまぁ、俺の戦いを見ているのは旅団員だけだからな、仕方がないと言えば仕方ない。
「シリカと離れ離れになっちゃってるけど大丈夫?」
シリカは海底神殿都市を拠点にしているので夫婦の危機かと思い心配するも
「彼女と離れるのは辛いですが、カイを一人前にしないといけませんからね。それからでも十分時間はあるので大丈夫ですよ」
「そっか、じゃ心配は要らないね。ここも綺麗に使ってくれているようだし後は任せるわ。ということで俺達は帰るね」
そう言って帰りの準備を始めると、
「レッドさん、一つお願いがあるのです。この秘密基地で訓練している者に、あなたの真の実力を見せて欲しいのです。スカウト組の方の実力も物凄いものですが、真に恐ろしい実力者の力を見せて欲しいのです。誰もが憧れる強さ。上には上がいる世界。今の実力で満足しない様に活を入れてくれませんか?」
と、ギブソンさんからお願いされた。
「いや、それは良いけど・・・全開でやると崩れると思うし、まだ全力出したことないんだよね。だから力をセーブしてなら良いよ」
「それで構いません。早速全員を集めますので少しお待ちください」
そう言ってギブソンさんが館内放送で全員を秘密基地前に集合させた。
「皆に集まってもらったのは他でもない。今日、雲の旅団の団長であるレッドさんがこちらに来て下さった。皆はスカウト組の面々の実力は知っていると思うが、それを束ねる団長の実力は知らないだろう。そこで今日は、その実力の片鱗を皆に感じてほしい」
ギブソンさんが俺にマイクを渡してきた。
「あ、どうも。団長のレッドです。ほとんどの方が初対面だと思います。今日は皆さんに実力を見せて欲しいとお願いされたので、これから皆さんに覇気、オーラとも言うのかな。それを放射します。見事耐えてみて下さい」
俺はシズクたちヒーラー部隊に視線を移すと、全員が理解してくれた。やりすぎると殺してしまう場合があったのだ。力を完全に制御しているわけでは無かったので安全の為だ。
「では行きます。これが通常運転」
そう言って戦闘状態のオーラを放出する。これくらいであればスカウト組と変わりない。真の実力を見せなければいけなかった。
(レディ、力を開放するから制御のサポートを頼む)
(イエス、マイロード)
レディは早くも制御モードに入り機械的な対応に変わっていた。カインとレディの研究のおかげでOB機能の演算能力が飛躍的に上がって、以前より思考速度が速くなっていた。
「やばくなったら手を挙げろよ。0.01%開放!」
手を挙げる暇もなく全員が硬直して動けなくなっていた。それを見たシズクと月花が指示を出して防御結界を張っていた。結界が張られたことで、動けるようになった者から次々と手を挙げた。意地を張る者もなく見事全滅であった。
「ギブソンさん、これくらいで良いかな?」
充分ですと頷いてくれた。
「皆さんも、これで分かったと思いますが上には上がいます。レッドさんは実力のほとんどを出していません。スカウト組が稽古する場合でも、0.1%開放状態のレッドさんでと聞いています。でも気にすることはありません。皆さんは冒険者なのだから。これから伸びしろがいくらでもあります。冒険者にとって上限などありません。スカウト組の面々が憧れ、肩を並べたいと思い頑張ったように、皆さんも、スカウト組に追いつけるように頑張りましょう」
「「「「「はい!」」」」」
育成組全員に気合が入ったようで何よりだ。
「じゃギブソンさん、俺達はこれで帰りますね。旅団員はここで解散して自由行動で良いぞ。船で帰る者は明日朝、揚陸艦に集合してくれ。以上解散」
解散後も俺達の周りには育成組が集まって賑やかだった。やはりスカウト組はいつも来ているせいか気軽に話しかけてくる育成組の者が多かった。だが、俺には話しかけにくいようで一人を除いては遠巻きに見ているだけだった。
「レッドさん・・・凄いです。僕もレッドさんの様に強くなりたいです!」
カイが目を輝かせて俺に話しかける。それを見たカイと同じクラスの仲間も恐る恐る近寄ってきて総勢50名程の子供が集まってきた。子供と言ってもカイと同年代位の子供たちだ。
「こつこつ頑張ってLv上げればカイだけじゃなくみんなも強くなれるから途中で投げ出さないように。そうだな・・・鞭ばっかりじゃつまらないよな、ウッド?」
「そっすね。俺達から何かプレゼントはどうっすか?」
「じゃ、サバイバルナイフなんかどうかな?獲物を捌けるし、護身用にも使えるからな。出来れば一生物にしてもらいたいから素材はヒヒイロカネがいいかもな」
「そっすね、それなら余程のことが無い限り刃こぼれしないし劣化もしないっす」
俺達は簡易製作ブースを用意して人数分のサバイバルナイフを作っていった。それを見ていた育成大人組も集まって来て、大人のくせに、ずるいだの喚きだしたので全員分を作ることにした。総数250本・・・意外な出費だな。すべてのナイフに名前を刻み、出来上がった物から洞窟の壁に突き立てていった。
「カイ、みんな聞いてくれ。君たちの今の実力では俺達の作るサバイバルナイフでさえ持つことすら出来ないだろう。このナイフを抜くことが出来る時がここの卒業だと思ってくれ」
試しにカイに渡したが持ち上げる事すら出来なかった。それは育成大人組の者たちもそうであった。創世級で作ったのだから当たり前だろう。シリカやボッシですら創世級の装備の製作成功率は3割にも満たない。だが俺には始原級装備があり、ウッドにはKanaBonさんの製作装備があるため成功率は100%だ。
「「「「分かりました。これを持つことが出来るように頑張ります!」」」」
カイが、みんなが答えてくれた。
のんびり書いていきます。




