久しぶり
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二つの人影が俺達の前まで来ると跪いた。
「おかえりなさいませ、クランロード」
「よく帰って来たなマイロード、待っていたぞ」
二人が俺に挨拶をする。
「久しぶりだね、レディ、サキュちゃん。元気にしてた?」
「はい、クランの皆さんがいなくなり、自己機能を強化しつつお待ちしており、1年ほど前にクランロードの魔力を感知し、すべての機能を使えるようにしておきました」
そう言うのは、クラン設備維持のための自動人形レディだ。戦闘力は勿論のこと見た目にもこだわった優れもの。普通の人が見れば綺麗なメイドさんだが中身は機械である。彼女がメインでその他にもメイド人形が数えきれないほどいる。とにかく広いので色々と細かいことをすべてメイド人形に任せている。
そういや、1年ほど前と言えば俺がこの世界で一度死んで戻ってきたあたりかな。
「レディって計算得意でしょ?あとでカインと一緒に話があるから宜しくね」
「承知しました」
「それで、サキュちゃんは何してたの?」
「え、防衛だけど?」
「ですよね・・・でも誰も来なかったでしょ?」
「暇だったよ。話相手のレディも自己改造の為にカプセルに籠っちゃうし、動いているものといえばレディの端末の掃除ロボだけだったからね」
サキュちゃんとは最難関のレイドボスのサキュバスクイーンを倒すと稀に入手可能な小型サキュバスクイーンだ。逆に言えば限りなく入手不可能なのだ。俺が居た時点で運営の発表ではドロップは2体しか確認されていなかった。見た目が小さい女の子と言っても強さはLv120で舐めてかかると返り討ちにあうのは必至だ。
「えーっと、ずっと一人で何やってたの?」
「昼寝とか?」
長い昼寝だな・・・
「まぁいいや。仲間を連れて戻って来たから二人とも宜しくな。それとレディ、船は使えるか?」
「旗艦1、小・中・大型艦30、小型艇120すべて整備完了しており、いつでも出撃可能です」
すべて使えるか。いつでも艦隊戦出来るな・・・相手がいないけどな。
「さすがレディ、サンキュ。それとレディって昔からそんな感じだっけ?昔はもっとこう・・・機械的というか人間ぽく無かったよね?でも今は肌も人間ぽいって言うか・・機械ぽくないよね」
そう言ってレディの頬を触ると明らかに人の肌のようだった。
「以前と比べ情報の処理速度が1000万倍になり感情を理解することに成功。現在も基幹プログラムの再構成を随時行いさらなる向上を図っております。あらゆる情報を集めることにより魔族、人間の遺伝情報を解析、クローンを作る事にも成功し、現在の体も機械ではなくクローン体となっております。本体はクランハウス中枢にある生体量子コンピューターになります」
は?俺のいた世界ではまだ研究が始まったばかりの量子コンピューターですか・・・そらまた凄いことで。生体って事は魔族の細胞でも使っているのだろうか。
「ご察しの通り魔族の細胞を使っております。細胞の提供者はサキュさんです。魔族の細胞を使うことにより半永久的に成長します」
このまま成長したら俺なんかよりも凄い存在になるんじゃないのかしら・・・・。ターミ〇ータの世界みたいに人間を排除しなければ良いけど。
「大丈夫ですよ。私はクランロードの命令しか聞きませんから。あなたが居なくなれば私も機能を停止させますので」
さっきから心が読まれているようなんだけど。どういうこと?
「クランロードの考えていることを計算し割り出した答えを言っているだけです」
「ははは・・・すごいね・・・ほんともう・・」
計算して考えていることが分かるん?普通無理っしょ。もうあんた神でいいやん・・・、と思っているとカインが目を輝かせてこちらを見ているのが分かった。
「はい、カインさんどうぞ」
俺はカインが何か言いたそうな顔をしていたので促した。
「レッドさん、これでOBの改良に目途がつきますよ!レディさんに頼んで情報処理について協力してもらえれば問題点がすべてクリアになります。一刻も早く取り掛かりたいです!」
OBで速度を上げると、どうしても肉体というか動きが速度に合わなかった。速度に対して脳が追い付かないので肉体に信号を送るのが遅れ、何もないところに攻撃したりなどしてしまうためだ。レディの演算能力を借りることが出来れば速度を上げることが出来るだろう。限界が通常の5倍位なので、レディの力を借りればその数倍、いや数十倍上を行くことが出来るはずだ。俺の中近距離での瞬間移動でも、レディの力を借りれば更に早く移動できるはずだ。
「先程の話というのは、そのOBという物の事ですね。クランロードの体、装備などをスキャンします・・・・スキャンデータをアップデート。では、対応策について3例ほどピックアップします。30秒ほどお待ちください」
いや、30秒って・・・、そんなすぐに分かるものですか?
「いや、待ってくれ。ひとまずクランハウスに入ろうか?それとみんなをクランに登録してくれ」
「承知しました。では、皆さんこちらへどうぞ」
俺達はレディに案内されクランハウスへ入っていった。
のんびり書いていきます。




