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解呪解錠

70


ほぼすべての戦闘が終了していた。残すはベリアルとその取り巻きのみだ。

戦闘が終わった隊から俺の元へ集まってきた。負傷者はいないようで安心した。


「ベイロン、お前はあの程度の悪魔にコテンパンにやられたのか?」

カルロがベイロンをからかう。

「あの当時のあなたでしたら、あなたもコテンパンでしたよ」


「二人ともおしゃべりはやめなさいな。団長が動くようですから」

グレースが二人を窘めた。


俺はベリアルに対峙し言葉をかける。

「あとはお前だけだ。出来れば一騎打ちで決めたいんだけど」

ベリアルの取り巻きはリヒャルダさんの同僚ですからね。殲滅する方が楽なんだけど、なんか悪い気がするからね。呪縛に捕らわれているベリアルに届くか分からないけど、一応言ってみた。

すると、ベリアルが剣と盾を構えて、取り巻きに下がるよう指示を出した。


「おっと、言ってみるもんだね。ならば一騎打ちといきましょうか。みんなは手を出すなよ」

俺も剣と盾を構えた。

(シズク、解呪頼めるか?)

(うん、やってみる)


ベリアルは堕天使で、同じ堕天使のルシフェルに次ぐ実力の持ち主とされている。元天使と言っても強いのかと聞かれると、わからんと言うのが正直なところ。だが前に立つこの男には隙が無い。鍛錬を積んだのだろう、以前戦った時よりも動きに規則性が無い。そうタイムラインが無いのだ。

―やりづらいな・・・・

そう思っていると、急に風が流れた。俺は瞬時に後ろへ飛ぶ。眼前をベリアルの切っ先が横切った。気配が無かった・・・・。格下であれば魔力と気配を感じることで動きが読めるので目を瞑っていても戦闘は可能だったのだが、こいつはヤバイな・・・すこし本気になるしかない。

俺は魔力糸を戻し、半径100mほどを魔力で覆う。セーレから吸い取った潤沢な魔力を惜しげもなく使う。

さてぶっつけ本番で使ってみますか。ベリアルとの距離10mの場所で剣を振り上げて振り下ろす瞬間、ベリアルの左側面に瞬間移動する。

ベリアルは左側に突如現れた俺の剣を、辛うじて盾で受け流した。表情には出さないがベリアル自身何が起こったのか困惑したことだろう。


一方、シズクは。

「みんな解呪を手伝って。私と月花で再契約用の陣を描く。その間に円盤の蓋を開けて契約書を出してほしいの」

レッド隊の皆が集まる。

「ちょっとお兄ちゃんは触らないで!」

「何すかリズ。蓋を開けろって言うから、それらしいところ開けようとしただけっすよ」

「もう、よく見てよ!どうみても蓋なんかないでしょ。まずはこの円盤を展開しなきゃいけないのよ。お兄ちゃんの出番はそれからよ」

「むむむ・・・分かったっす」

ウッドは大人しく引き下がったようだ。

リーズが円盤に魔力を流すと特殊な紋様が・・・古代語だろう。それで描かれた魔法陣らしきものが浮かび上がった。

「うん、分かったわ。この回路とここを繋ぐとあっちに繋がって・・・すると流れがこちらになって・・・」

しばらく解析していたが理解できたのだろう。魔法陣の中央に両手を入れて何やら動かしていた。すると小さな円盤だったものが、どんどん広がっていき大きなタンスサイズになった。タンス?の外周は時計の歯車のようなもので出来ていた。

「私はここまでね。あとはお兄ちゃんに任せるね」

「よし、おいらの出番っすね」

ウッドがタンスの外周を隈なく調べる。歯車の繋がり罠など細部にわたり調べた。

「大体分かったっすよ。まずはこの歯車を2回転、そしてこちらのカムが回るから、次にこいつを回すと・・・・」

ウッドが罠を解除しつつタンスの扉を開け始める。

「ルルさん、こいつをあそこに撃ち込めるっすか?」

ウッドが解錠している時に出てきた物をルルに渡した。

ほんの数ミリ開いた扉の中は、広い別次元だった。その中に小さな金属の筒があった。距離にして3km先、筒の直径3mm、撃ち込む物は長さ30cm、直径1mmの長い針だった。

「任してにゃ。私にかかれば余裕にゃ」


「失敗すると、この辺が吹き飛ぶから頼むっすよ」

ウッドがプレッシャーを与える。

ウッドは知っていた。ルルはプレッシャーを力に変えることが出来ることを。


「も、もちろんにゃ。ルルの弓は百発百中にゃ!」

ルルが弓を構えた。みんなが固唾を飲んで見守る。

弓の矢の先端部分の揺れが徐々に収まっていく・・・そしてすべての時間が止まったようにルルが静止した瞬間

ヒュン

針が飛んでいく・・・・そして筒に針が吸い込まれるように入った。

ガチャ、ギリギリ、カリッ

内部から機械音が聞こえてくる。

気のせいかウッドの解錠が進むにつれタンスが小さくなっていった。


「ウッドちゃん、私にも何かやる事無いのかしら?」

「私も何かないの?」

リティスとサーラがウッドに詰め寄る。


「ん、あるっすよ。少し待ってほしいっす」

そう言って更に解錠を進めた。すると4本の棒が飛び出る。

「リティ姉、サーラさん。この4本の棒を同時に押し込んでくれるっすか。タイミングがずれたら爆発っす!それとかなりの強さで押し込まないとダメっすね」


「あら、そんなことで良いの?簡単よねぇサーラさん」

「そうね、リティスさん」

二人は距離を取り構える。どうやらリティスに合わせるようだ。

「ウッドちゃん、やる前に聞いておきますけど、どの程度なら壊れないかしら?」


「そっすね・・・、普通の奥義技程度なら大丈夫っす。でも控えめにお願いするっす」


「聞いたわねサーラさん。いくわ、ダブルトマホークブーメラン×2!」

リティスが4本の斧を投げるとそれに合わせるようにサーラも技を出した。

「双龍流星覇×2!」

サーラの覇気によって生み出された4体の龍がリティスの斧を飲み込み天に上り、一筋の光の龍になって降りてきた。

タンスの直上5mで4つに分かれ棒を同時に押し込んだ。

ギリギリッ、カタッ、カリカリ

すると先程よりもはやい速度で形を変えていった。しばらく待っているとA3サイズの小さな箱になった。

恐る恐るウッドが近寄り細部を確認した。


のんびり書いていきます。

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