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それもそうっすね

62


俺達総勢336名はアスタロト国に集結し地下洞窟に入っていった。ベリアル国の神樹を開放していないので空を飛んで侵入することが出来なかったためだ。

地下洞窟は未だベリアル軍に知られることは無くベリアル国の東海岸に出ることが出来た。

ベリアル国、旧ジューダス国は魔法と錬金に長けており、近代的な建物が多い国であった。他の3国とは違い錬金によって腐食しない金属での建築物が沢山あった。一番東に位置する集落にすら朽ちることが無い家が残っていた。

「これはどんな素材なのでしょうか。家が朽ちるどころか風化さえ見られない」

アークが興味津々で調べていた。


「それは、ネオタイトの合金だな。希少金属と鉄鋼を混ぜたものだよ。ネオタイトは、この地方で産出されるからな」

ベリアル国は希少金属の宝庫だった。しかし、加工するには癖があり触媒として他の国の素材が必要になる。プレイヤー時代は、ここで素材を集め、他国で触媒を集めと、移動に時間がかかりイライラしていたのを思い出した。


「今日はここで宿営するぞ。見張りは各隊で輪番してくれ。夕食後にブリーフィングを行うから忘れないようにな!」

俺がそう言うと、各隊がコテージの設置を始めた。俺達レッド隊もコテージを設置した。夕食まで時間があったので、俺は一人、集落の付近を見回ることにした。案の定だがレッド隊の全員とウィンド、フリーダムの面々が付いてきた。いつもの事なので気にせず辺りを散策した。

「兄貴、ベリアル軍は動くんすかね?」


「それは動くんじゃないかな。あれだったら聞いてみれば良いじゃん」

俺がウッドに答えると、


「それもそうっすね」

と言い、ウッドの姿が消えると同時に人の倒れる音がした。音のする方を見るとウッドがベリアル軍と思われる黒ずくめの人型を捕らえた。


「手足の腱は切断したので逃げられないっすよ」

ウッド、えげつな!と思ったが、これ戦争なのよね。もしこいつを逃がして、味方に被害が出たら笑えないし。


「お前は、何者で何をしていたんだ?返答によっては容赦しない」

俺はその人型に話しかけた。言葉通じなかったら問答無用でさようならだな。


「待て、私はベリアル王直属の隠密隊隊長のリヒャルダだ。話がしたい」

ウッドが頭巾をはぎ取ると、髪を結い上げた女性が懇願してきた。


「ベリアルの仕向けた悪魔に、うちの若いのが怪我させられたんだよね。かなり頭にきてて、この国綺麗に吹き飛ばそうと思ってるんだけど何かな話って?」

俺はリヒャルダと名乗る者に答えた。当のリヒャルダは手足の腱が切られているので地面に突っ伏したままで俺の問いに答え始める。


「まず、姿を隠し尾行していたことは謝る。そなたらの正体を知るためだったのだ」


「で、俺達が何者か分かったのかい?」


「えぇ、ベリアル様の言う通り金色の英雄殿なのだろう?隠密隊の私をいとも容易く捕らえる者などアストレムルは居ない」

いやいや、お前の戦闘力が低すぎるからだろと思ったが言わない。お前程度ならマーベアでもなんとかできるはずだ・・・


「俺達が、その英雄だったとしたらどうするんだ?」


「こんな無礼を承知でお願いしたい。ベリアル様を救ってくれ」


「それを信じろと?」

これで裏切られたらたまったもんじゃないなと思っていると、シズクが俺の手を握り彼女は嘘を言っていないと言ってきた。シズクが言うのであれば信じるしかないだろう。

俺はリヒャルダにヒールをかけ自由に動けるようにした。


「別に逃げても良いけど、その時はこの国が焦土となるからな」

脅しでも何でもなかった。本当にすべてを粉砕して更地にするつもりだった。


「逃げません。まずは話を聞いて下さい」


「分かったよ、これから夕食なんだ。一緒にどうだ?」

俺は夕食に誘うことにした。仲良くなるには一緒に美味しいものを食べるに限るからな。そこに酒も加われば尚更だ。


「ですが、我々は・・・」

言いかけるのを遮った


「あっちでもみんな捕まってる頃じゃないかな」

そう言ってキャンプ地の集落に戻った。そこには捕らえられた者が横になっていた。すべて手足の腱が切られ身動きできない状態だった。その総数200人。


「みんなお疲れ、怪我をしたものはいないな。この人たちは敵ではないらしいから治癒してやってくれ。その後は食事をしながら話を聞こうと思う」

ヒール部隊に治癒され親衛隊と思われる者たちがリヒャルダの付近に集まってきた。そしてリヒャルダを先頭に整列し、片膝をついて今回の件を謝罪してきた。


「この度は、英雄殿たちに無礼を働き申し訳ありません。しかし我々にも事情が・・」

長そうなので遮る


「そんなの良いから、食事の用意を手伝えよ、お前たちの分も用意するんだから。事情はその後でゆっくり聞くから」

多分だが、ベリアル国で何かあったのだろう。身なりも汚れていたし、食事すらまともに取れていなかったのではないかと思う。


「ですが、私どもには、そこまでしてもらう・・・」

リヒャルダが言いかけると、匂いにつられてリヒャルダ達から盛大な腹の虫の合唱が始まった。

グルル・・・・


「もう、めんどくさい奴だな。体に正直になれよ。次は言わないぞ、て・つ・だ・え!」

俺の言葉を聞き、リヒャルダ達が慌てて食事の用意を手伝い始めた。


その後、ベリアル隠密隊員は旅団員が驚くほどの勢いで食事をとっていった。食い溜めはきかないのに、これでもかというくらいに食べてくれましたよ。いやぁ作ったものをこれだけ食べてくれると嬉しいもんですよ。半年を想定した遠征の食料のうち半分を消費してくれたが、その分の補給を受けるという概念が俺達には無かった。なぜなら足りなくなったらアーク様が一瞬で取りに行ってくれるからだ。逆にアークが狙われるとめんどくさいことになるので、常に一緒に行動することにしている。

お腹も膨れて一休みすると、隠密隊が改めて整列しこれまでのいきさつを話し始めた。


のんびり書いていきます。

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