歓待
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「というわけで、アスタロト国とアンラ・マンユ国へ測量に行ってくれ。9番隊には声を掛けておいたから」
俺はカインを呼び出し、そう告げると意外な返答が
「嫌です」
カインが即答した。
「はい?」
聞き直す。
「だから、9番隊は嫌です。行くなら自分の足で行きますのでご心配なく」
9番隊も嫌われたもんだ・・・可哀想に。
「分かったよ、神樹開放に行かなくちゃいけないから、俺が乗せていくよ」
神樹を開放しないとFTできないからな。ついでにカインとの2人旅も悪くはないかな。
「それならお願いします。これから建設ラッシュですね。ワクワクしますよ」
カインは知らないだろうが、うちのレオ君はもっと速いのだよ、フフフ。
会談は翌日には終わり、二人の魔王は国へ帰っていった。アンラ・マンユ女王には1週間後に神樹開放と測量に向かう旨を伝え、出発当日の朝を迎えた。
そこには出発を待つ旅団員130名程が待機していた。1番隊を除く2番隊から96名とレッド隊、ウィンド隊、フリーダム隊、ジジィ及びLJ3姉弟が整列していた。
「・・・・・何でこうなる。カインどういうことなんだ?」
「どうもこうも無いですよ。測量と合わせ建設開始ですからね。それにみんなで行けば安全ですし、防衛部隊として旅団員を150名残していますので」
これにはカインに一本取られたようだ。これだけ人数が居ればスピードを出せないだろうと考えたようだ。ビャクエンのジジィが儂はルーテシア様の執事であるからなんとかほざいていたが聞かないことにした。残りの50名はLJ国の防衛にあたっているようだった。
人間は怠ける生き物だと誰かが言ったような気がする。こんな大人数で行くならリムジンバスとか寝台列車、豪華客船が欲しいと思ってしまう自分がいた。決してレオ君の乗り心地が悪いというわけではない。行き先を伝えれば勝手に行ってくれるし便利なんだけどね。アークの空間転移でも良いのだけれど旅行したい気分だったのだ。こんな時クランの戦艦があれば、空を飛びながらみんなでトランプしたりできるのにと思ったが、戦艦で行っても一瞬で到着するので一緒か・・・。
「じゃぁ行きますか」
レオ君に跨るとカインではなくアークが後ろに乗ってきた。それを見たセリーヌとイレーヌが更に乗ろうとしてくるが女子組に阻止されたようだ。カインはリティスの後ろの安置に収まった。
「お前たちにも馬を用意しようか?レオ君に頼めば契約できるぞ」
俺が3姉弟に聞くとお願いしますと即答されたのでレオにお願いした。そして無事契約を終え全員が馬に乗るのを確認し出発する。
レオの自動運転で4時間ほどかけアンラ・マンユ国に到着した。事前にアンラ・マンユには連絡を入れていたので問題なく城へ入ることが出来た。ベイロンの言っていた通り防御を完全無視した作りに驚きつつ、女王が待つ部屋へと案内された。
「よく来た、レッドよ。今日はそなたのために宴を用意してある。存分に楽しむがよい」
女王は以前とは違い、硬い雰囲気ではなかった。
俺達はかなりの人数で押し掛けたので、寝る場所さえ確保できれば良いと思っていたのだが予想外の歓待に驚きつつも甘えることにした。
この国に来て気付いたが、どうやら女性上位の国というか男女役割が入れ替わっているようだった。男が家の仕事を行い、女性が社会で活躍する国のようだ。ほとんどの男が家から外に出ることは無いというか禁じられており、食料の買い出しは、女性が購入し家に持って帰るようだった。外に出ることが許されている男はごく少数で、外出時には鉄仮面を付けることが義務付けられているようだ。そんな理由もあり城に着くと俺達男子は奇異の目で見られていた。
「なんか・・・びみょーだな、ここ」
俺は一人ごとを言っていた。別に男尊女卑とか女尊男卑とかじゃなく普通に出来ないものかと思ってしまった。男だから、女だからじゃなく、やりたいことを普通に選べる国が良いなと。
「団長もそう思いますか。私も最初に来た時思いましたよ。最初と言ってもついこの間ですがね」
ベイロンが俺の独り言に回答してくれた。そんな会話をしている俺達に話しかけてくる女性がいた。
「ベイロンさん、先日は庭園を守って下さり有難うございます」
「えぇと・・フォーミさん?・・・でしたよね」
ベイロンが自信なさそうに言うと
「そうです庭園係のフォーミです。覚えていて下さり光栄です。今日は宴の用意がありますので後ほどゆっくりとお話しましょうね」
この庭園係のフォーミさんは他の女性と違い俺達を普通に見てくれる女性であった。以前よりも肌の露出が多い服装になっていたため、ベイロンは目のやり場に困っていた。ベイロンというか2番隊は特に歓迎されていた。それ以外と言えば、旅団の女子組の人気たるや、飛ぶ鳥を落とす勢いであった。特にガープ戦で新しい戦闘方法を行ったサーラやルル、ミリアやクラリスといった面々は行く先々で女性からの歓声が起こっていた。
俺達が案内された場所はベルサイユ宮殿の庭園よりも豪華な庭園だった。そこには豪華な庭園にそぐわないテーブルや椅子が用意されており女王の計らいで一番大事にしている庭園で俺達を持て成そうと最大限の心遣いであった。庭園で食事するなどもっての外だったのであろう。庭園に合うテーブルや椅子などは無く、城の中にあったものを急遽引っ張り出したものであることがわかった。
「何か悪いね、俺達のために」
女王へ言うと
「何を言うか、そなたらは庭園を守ってくれたからな。当たり前であろう」
アンラ・マンユが答えたが何か含みがありそうな言い方だった。
「はぁ、じゃぁ遠慮なく楽しませてもらうよ」
「そうしてくれ。お主の為にこちらも最上級のもてなしをしようではないか」
・・・ん、最上級のもてなしとは・・・・
そう言って、女王が手を挙げると見た顔がこちらに歩いてくる。
「レッド様、親衛隊長のミーシャです。宜しくお願いします」
以前会った時とは違い、更に肌の露出が多い服で俺の隣に座り酌をしてくれた。俺以外の男子のもとにも親衛隊の女性隊員が付いたようだ。これには女子組も不意を突かれたようで防ぐことは出来なかった。
「あ、どうも」
酌をしてもらう経験などあまりなかったので緊張しているとミーシャが更に寄り添い体を密着させてくる。ミーシャからは甘い石鹸の香りがして、上目使いで酒を注いでくる。いやいやいや、いかんでしょ。可愛い子が、こんな事したら破壊力3倍マシでしょ!
「私も国へ帰ってからレッド様の活躍を聞いて、もう止められません」
いや、止められないって何がよ!それは俺のセリフじゃないのかい!
周りを見ると、親衛隊の女性と暗闇に消えていく旅団の男子もいるではないか。
良いの?外で良いのかい?などと俺の頭の中はパニックだった。何とかこの危機を脱すべく女子組に助けを求めることにした。
いや、良いんですよ、俺だって成人男性だからね。でもねまだ俺の心には割り切れない何かが残っていた。もしまた子供を失うようなことがあったら・・・・俺は耐えられない。
そして俺の危機を察して女子組が俺を囲んでの宴会になった。何とか危機を回避することに成功したが女王は舌打ちしていたようだ。後ほどミーシャに聞くと女王からの命令で旅団の強い遺伝子を奪取しろと指示があったようだ。
「いや、大変だったねミーシャも。好きでもない男と関係持たないで済んでよかったな」
と、ミーシャに言うと
「私はレッド様の子供が欲しいと本心で思っていたので残念でした。また機会があれば夜這いに伺います。それに他の親衛隊員も自分の好みの男性についていたので問題ないでしょう」
と積極的な言葉を頂きましたよ。
この宴でめでたく合体した男子組の面々がどのような夫婦生活を送るのか不安になったが、この際幸せなら良いよねって事で。
何かあったらモッチョ氏に丸投げしよう。
あ、そういえばベイロンはフォーミさんとどうなったのだろう・・・気になる・・・。
のんびり書いていきます。




