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待たせたな

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「皆さん、下手に近接で攻撃しても反撃でダメージを受けるだけなので、距離を取って防御に専念して下さい」

ベイロンが言うと全員がそれに合わせ防御陣形を取りつつ距離を取る。悪魔の方はただ立っているだけで光弾以外の攻撃はしてこなかった。

(あの悪魔の最大の攻撃が光弾であれば隙をついて近接攻撃が出来るかもしれない。しかし隠された何かがあった場合、仲間が死ぬことになる。それに賭けるわけにはいかないですね)


「マリルさん、防御に集中しつつ私に魔力を流すことは可能ですか?」


「まだ、魔力に余力はあるから大丈夫だけど何をするつもり?」


「あの悪魔の放つ光弾にはリキャストがあるのは気付いてますよね?その合間を狙って奴の防御壁を突き破る魔法を使おうと思っているのですよ。こちらの通常攻撃が通らないのなら上級奥義クラスの技を叩き込むだけです。現状防御に徹していて、可能性があるのはそれぐらいなので」


「分かったわ。ベイロンに賭けるわよ」

マリルはそう言うとベイロンに魔力を流し始めた。マリルはベイロンのこの表情を見るのは2度目だ。初めはチーム結成当初に全滅を覚悟した時だった。今回もベイロンは何とかしてくれると信じた。


「マリルさん、ありがとう。では詠唱に時間がかかりますので防御を頼みますね」

そういうとベリアルは詠唱を始めた。防御壁を突き破ることが出来る可能性のあるのは、範囲魔法デストラクション並みの威力で単体攻撃魔法:イルナスだった。これ以上の単体攻撃魔法をベイロンは修得していない。この聖属性魔法は、込める魔力によって威力が変わる魔法で通常でも単体であればデストラクションを超える威力があった。ベイロンはそこにマリルの魔力とOBPを使用して威力を上げるつもりであった。しかし高威力の為、装備している大賢者の杖が破損する可能性もあった。しかし、今はそんなことを考えている場合では無かった。

(団長の作ってくれた装備が壊れてしまいます。団長に謝らなければなりませんね)


「左手にアルテミスの弓を、右手にすべてを燃やすインドラの矢、OBP発動、貫け!秘奥義魔法イルナス」

ベイロンは弓を構える仕草をするが実際に構えているのは杖である。青白く燃え盛る杖を弓代わりにして右手に現れた燃え盛る矢をつがえ射る。

燃え盛る炎の矢を青白い聖なる炎が包み込み一直線に悪魔へ襲い掛かり辺りを爆炎が包む。


ベイロンは隊員に防御の指示を出し爆炎が収まるのを待った。


しかし、爆炎が収まった後には何事も無かった様に悪魔が立っていた。多少王冠が斜めになっただけでダメージらしきものは見られなかった。だが悪魔にしてみればそれだけで充分だった。


「ゴミの分際で・・・・」

悪魔が初めて言葉を発し、錫杖を掲げると天に大きな穴が開いた。そこから無数の大きな岩がベイロン達に襲い掛かった。


「マリル、あなたと私で出来る限り砕きますよ!」

ベイロンはそう言って、魔法を唱え岩を砕いていった。しかし、すべてを防ぐことは出来ず2番隊と9番隊に深刻なダメージを受けてしまった。

(これほどとは・・・ここまでですね。仕方ありません、あれを使うしかないでしょう。団長も同じ思いだったのでしょうか・・・)

そう、ベイロンが使おうとしているのは、かつてレッドが使った自己犠牲魔法ホーリーフレアバースト。それで仲間を逃がすことにしたようだ。ダメージを与えられなくとも仲間を逃がすことは出来るだろう。


「皆さん、私がとっておきの魔法を使うので、その間にアンラ・マンユ城へ逃げて下さい。城の内部には高Lvの魔族がいると思いますので時間稼ぎは出来るでしょう。団長が助けに来てくれるはずなので、それまで持ちこたえて下さいね」

ベイロンは城に逃げ込んでも、この悪魔に対して時間稼ぎにならない事は分かっていた。しかし、すこしでも生き残る可能性があるとしたら、それに賭けるしかなかった。


「そんな魔法があるの・・・?」

同じ大賢者のマリルには分かっていた。ベイロンにとっておきなんて無いことが。


「えぇありますとも、とっておきがね」

ベイロンは笑顔でマリルに答えた。そして隊員が動けるようになったのを確認して逃げるように合図を送り詠唱を始めようとした、その時


「ゴミが・・・・」

悪魔がベイロンに風魔法ウインドブレードを唱えた。何の変哲もない、ただの魔法であったが威力が段違いだった。ベイロンは体を切り刻まれ致命傷を受けた。


「ガフッ・・・・っどうやら私はここまでの様です・・・皆さんは城へ・・逃げて・・・下さい・・一人でも多く・・・逃げて・・・」

そういうのが精一杯だった。

(団長・・・私はあなたに近付けたのでしょうか・・・。私もいつかあなたと肩を並べて戦いたかったです・・・)

意識が深い闇へと落ちていく・・・


「待たせたな、ベイロン!遅くなってすまん。ゆっくり休んでいろ」

薄れゆく意識の中で確かに聞こえた。ベイロンが待ち望んだ声が。

(シズクと月花は2番隊9番隊の治癒、絶対死なせるなよ。タンク隊は俺の背後で防御、サーラ、ウッド、ルル、ミリア、クラリスは俺について来い。但し俺の前には出るなよ。ゴッド級だとダメが入るからな。それ以外は状況に応じて動け!)

(((((((了解)))))))

コイツは見たことがある。ソロモンの悪魔72体の中で王と同じ爵位のガープだ。厄介な相手でスカウト組には荷が重かった。男爵位であればベイロン達で何とかなったかもしれないが、王となると話は別だ。


「大分やってくれたようだなガープ!仲間にやってくれたことをすべてお前に返してやるよ。クソゴミが!」

俺はすぐさまガープへ切り込んだ。ガープも錫杖に仕込んである剣で受け止める。厄介なというのは、ガープは近接も魔法も治癒もすべてこなすチートキャラなのだ。しかし、俺も、いやレッド隊のみんなもカンストしたジョブの能力を使えるようになっているので問題なかった。


「ゴミが・・・・」

ガープが忌々しく言うが、俺は気にせず打ち込んでいく。こいつが実装されたのはゴッド級実装と同じ時期だ。俺の装備は創世級なので一人で抑え込むことが可能である。


抑え込んでいる間にもサーラ達がダメージを入れていってくれた。俺以外にターゲットが飛ばない様に連撃を叩き込み相手に攻撃をする時間を与えなかった。


(お前は絶対に許さないぞ・・・・俺の家族に傷をつけたことを後悔させてやる!)

俺の中に負のオーラが発生してくる。

(レッ君、駄目。それに飲まれたら駄目)

シズクが暴走しかけた俺を引き戻してくれた。以前も一度同じことがあった。ルルが連れ去られた時だ。その時は死んじゃったんだけどね。今回も、シズクが心配して止めてくれたようだ。

(シズク、ありがとうな。でも心配しなくて大丈夫だ。俺はもういなくなったりしないから!)

俺は再度、暴走モードへ徐々に移行していった。通常のオーラと暴走モードの負のオーラを合わせることによって相乗効果によって身体能力の向上が見られることが分かった。今回はそれを試そうとしていた。

(うん、わかった。無理しないで)

(了解だ)


のんびり書いていきます。

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