プレゼント
17
モッチョ商会を後にした俺はレンタル工房へ向かった。
「なんか久しぶりに来た感じがするよな」
独り言をつぶやきながら、部屋の片づけや準備をする。今日のメインはプレゼントと新しい装備だから金策は明日以降の予定。
「まずはプレゼントだね」
誰も居ないのだが、ついつい独り言をつぶやいてしまう。決して寂しがりやなどではない。言葉にすることで明確な目標をたて集中するためだと言い訳してみる。
さて素材を何で作るか悩むな。試作なので良い素材は勿体ないが、あいつらの喜ぶ顔が見たいからな。
「無難にこれで行くか。」
プラチナとエメラルドを選んだ。あとは魔晶石と組み合わせれば出来るはず。色々と試行錯誤の末、ようやく試作1号が出来た。俺が作るのだからただのアクセではないのだ。
「まぁ、こんなもんだな」
一個作れば後は簡単だ。続いて全員分作った。
「次は、装備だな。ファングで作っているから簡単だな」
ということで以下
レッド 剣士 Lv20 チェーンメイル+、スクトゥム+、ロングソード+
サーラ モンク Lv20 武闘着+、トンファー+
シズク 巫女 Lv20 巫女装束+、鉄扇+
ルル 弓使い Lv20 チェーンブレスト+、ロングボウ+
リティス 戦士 Lv20 チェーンメイル+、フランキスカ+
ウッド シーフ Lv20 チェーンブレスト+、ククリ+
リーズ 呪術士 Lv20 シルクローブ+、マジシャンロッド+
月花 僧侶 Lv20 シルクローブ+、スタッフ+
「こんなもんだな。すべて高品質でそろえたからLv23までは行けるはず」
あとは、この装備にひと手間加えれば完成だ。
すべての作業を終えて時計を見ると17時を回っていた。10時から作業初めて試作品だけで4時間位かかったからね。トータル7時間程だろうか。それにしても腹減った。ずっと飲まず食わず作っていたからな。そろそろみんなも待っている事だろうし、宿屋まで戻ろうかと急ぎ片付けをしていると、サーラからPT会話がきた。
(レッド、宿屋に着いたけどどこにいるの?)
(おお、ごめん作業に集中していて時計を見ていなかったよ。今から向かうから待っててくれ)
(わかった。どのくらいで合流できる?)
(15分後で頼むわ)
(はーい)
急いで宿屋まで走っていくと、みんなが宿屋前で待っていてくれた。
「今日の夕飯は何食べたい?」
と聞いてみたが、今の俺は〇郎系ラーメンが無性に食べたかった。この世界にもあればいいのにな。
「レッドは何食べたい?」
サーラが聞いてくる。
「俺は食にうるさい方じゃないから、栄養バランスが良ければ何でもいいよ」
「なによそれ、つまらないじゃない」
お、ツンか?しょうがないな・・・
「キターーーッ!降りてきた。鍋にしよう。鳥鍋がおいしいお店はどうだ?コラーゲンで美肌効果もあるし」
女子組には高評価もらえると思うがどうだ・・・
「「「「さんせーーーい」」」」
頂きました、高評価。早速宿屋主人に穴場の名店を教えてもらい皆で向かうことにした。
教えてもらった場所が意外と遠くにあるため、途中タクシー(馬車)に乗った。乗車定員4名だったので、誰が俺と一緒に乗るかでもめていたが、その話はまた今度。
ヨルダの街は地方都市で人口120万人くらいだ。意外と広いではなく、ほんとに広い。これが首都グラスだったらどのくらいか、ランドに行く時に立ち寄っていこう。ヨルダの中心部から馬車に乗って30分ほど南に向かった区域にその店はあった。
「ここかぁ」
鶏の絵が描かれた看板があった。
「すみません。宿屋のおじさんに勧められてきたのですが、予約なしでも大丈夫ですか?」
扉を開け、おかみさんらしき人に聞いてみた。
「いらっしゃいませ。予約なんていらないわよ。何人かしら?」
「8人です。出来れば円卓があるとみんなの顔が見られて良いのですが、ありますか?」
「あるわよ~、個室で値が張るけど良い?」
「個室の方が助かります。お金は心配しないでください。」
「あら、かっこいいわね。うちのメニューはすべてコースで松竹梅しかないけど、どれにする?」
「松の上はありますか?」
「特があるけど、ちょっと待っててくれる?食材の確認してくるから。とりあえず個室に案内するので、そこで寛いでちょうだい」
案内されと円卓の掘りコタツ式だった。こういうの好きだな。
「食材あるから大丈夫よぉ。特で良いのかしら?」
「それで、頼みます」
「飲み物はどうする?」
「じゃぁウーロン茶を1つと、」
「「「「「ビール」」」」」
おまえら・・・。俺が酒を飲まないのは現在未成年という事と、元の世界で健康診断の結果肝機能判定Eをもらったので酒を控えていたというのもある。酒が嫌いなのではなく、むしろ大好きなのだ。
「ウーロン1にビール7ね。すぐにお持ちしますね」
すぐにお通しと飲み物が来た。
「みんなお疲れ。今日もいっぱい食べよう。乾杯」
俺がウーロン茶を掲げ乾杯の音頭を取る。
「かんぱーーーい」
ほどなく、鳥鍋と鳥を使った多種多様な料理や特上とろける牛しゃぶが来た。女子組には鳥鍋が人気で、俺とウッドはとろける牛しゃぶに舌鼓をうった。
木〇路の料金そのままで量が3倍位のイメージだな。値段は一人15000Gで会計120000Gだった。かなり飲み食いしたのだが、この値段は安いな。
皆、お腹いっぱい、ほろ酔い状態なので馬車に乗るとウトウトしていた。俺は素面なので馬車から見える街並みを楽しんでいた。そして宿屋へ戻り一息ついたところでみんなを集めた。
「では、これからみんなにプレゼントを渡したいと思います。」
ざわついている。
「はい、静かに。順番に渡していくので並んでくださいな。あと古い装備は俺の脇に置いて行ってくれ。分解して再利用するから。」
並びは決まったようだ。
ウッド、サーラ、シズク、ルル、リティス、リーズ、月花の順だった。
「渡すものは、装備以外同じものなので心配しないように。まずウッドからね。」
ポーション10個・MPポーション10個・装備一式・試作品を渡す。みんなに渡し終えたところで
「何すか、このアクセサリー?がいっぱいあるっすけど」
よく聞いてくれた。
「そのアクセには特殊機能が2つ付いているんだ」
一呼吸置くと皆が静かになる。
「まず1つ目、自分の総MP90%消費することで5分間ステータスupする」
ざわめきが起きた。そのような装備など聞いたことが無いからだ。
「しかし、上昇率はLv1程度上がるものだと思ってくれ。お守り程度で留めて過信はしないように」
それでも飛びぬけたアクセである事は変わらない。
「もう一つが、一瞬で装備を装着できる機能だ。今はまだ試作品なのでネックレス、ブレスレット×2、アンクレット×2と数が多いが将来的には指輪1つで出来るように考えている」
みんなの目がキラキラと輝きだす。
「初期設定が必要なので、みんなアクセと装備一式を装着してくれ」
俺の言葉途中に直ぐに装備を装着し、言い終えるころには準備が終わったようだ。
「少しコツが必要だが、5つのアクセに魔力を流してくれ」
「きちんとできれば、アクセから装備すべてに何となく自分の魔力が流れるのが確認できるはずだ」
みんな優秀だ。もう少し説明に時間を要するかと思ったが、すんなり終了した。
「みんな、すごいな。一応聞いておくけど、アイテムボックスに空きは十分にあるか?」
みんな頷く。
「では、アイテムボックスに装備を収納するイメージで魔力をアクセに流してみて」
「「「「「!!!!」」」」」
「よくできました」
装着していた装備が一瞬でアイテムボックスへ入ったのだ。
「今度は、装備を装着しているイメージで魔力をアクセに流して」
「「「「「!!!!!」」」」」
「すごいっす、兄貴すごいっス」
「レッドすごいわ」
「レッ君スゴイ」
「すごいですわ」
「すごいにゃ」
「ほんと、すごい」
「すばらしいです」
控えめにいっても大絶賛だった。
「これの良いところは、一瞬で戦闘状態に入れるところだ」
「不意に襲われるとかあるかもしれないし、今後何があるのかわからないからな」
「あと、これを作れるのは今のところ俺だけだ。それと他人との互換性がないので俺のアクセはサーラには使えないし、サーラのアクセは俺には使えない。初期設定した本人しか使えないし、俺の作った特殊加工装備しか登録できない欠点がある。理解できるか?」
ウッドが手を挙げる。
「このアクセの名前なんて言うんすか?」
考えてなかった・・・・プロト1号で良いんじゃね・・・と思ったが。・・・・・・・戦闘に一瞬で・・・バトルフォームアクセか。それでいいや。う~ん、長いな・・・でも良いか。
「えーっと、バトルフォームアクセ(BFA)と命名しよう」
指輪に小型化できればバトルフォームリング(BFR)ですかね。
「そっすか、長い名前っすね」
お ま えって奴は!痛いところを突いて来るが大人な俺は堪えることに成功した。
「みんな、BFAの練習しといてくれよ。あと人前であまり使わないようにするのと、常にアクセは装備しててくれ。そのために材質はプラチナにしたのでアレルギーは出にくいだろう」
「「「「「はい」」」」」
「俺は少し作りたいものがあるから外に出る。お前たちは先に寝ててくれ。明日は休みとするのでゆっくり休んでくれ。今後の予定は明日話す」
「「「「はい」」」」
良い返事。子供って玩具買ってあげると一瞬だけど良い子になるよね。
「じゃ、行ってくる」
扉を開けて行こうとするが大事な事を言い忘れていた。
「あ、あと大事なことだ。明日は俺もゆっくりと寝ていたいので起こさないでくれ」
と言い残し、俺は夜の街へ向かった。ほら、もし良い雰囲気になったら朝まで頑張るかもしれないでしょ?
足取り軽くモッチョ指定の待ち合わせ場所へ。
のんびり書いていきます。