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ルンルン気分

47


私はレジルに仕事を任せルンルン気分で部屋を出ると、私が出てくるのが分かっていたようにイレーヌが立っていた。何か言いたそうではあったがスルーしようと決め、目の前を通り過ぎることにした。


「お姉ちゃん、どこに行くつもりなのさ」

すると妹が無視はさせないとばかりに声を掛けてくる。


「とても重要な案件があって、急遽出掛けることになったのよ。あなたは、ここの守護があるでしょ。がんばりなさいな」

私は姉と責任者権限の両方を行使して妹をけん制する。イレーヌは不服そうな目で私を睨んでくるが、ここで相手をしているとボロが出てしまうので颯爽と通り過ぎようとすると再度話しかけてくる。話しかけるというか独り言を始めた・・・しかも大きな声で。


「あぁ~そういえば、あたしのレッド様がそろそろ帰ってくるころだから、お姉ちゃんを誘って一緒に抜け出そうと思ったけど仕事じゃしょうがないね。あたし一人でレッド様のところへ行ってくるのさ」

あなたのレッド様じゃないし・・・私のだし。ライバルは少ない方が良いと思い密かに行動しようと思っていたけど、わが妹ながら情報収集に余念がなかったようね。けれど私にはまだ奥の手があるのよ。


「あら、あなたはお母さまからアークを守る様に言われてなかったですか?勝手な事をすると怒られますよ」

これで、あなたはここから離れられないわよ、ふふふっと思っていたら。


「アークは守るわよ、ねぇアーク?」

するとイレーヌの影からすまなそうにアークが出てきた。


「セリ姉、ごめん。僕も一緒にレッドさんの所へ行きたいんだ。今の僕なら一瞬でナーガ国まで転移出来る位にスキルを操れるようになったんだ。だから護衛は必要ないよ。それに、ここにいるよりレッドさんの近くにいた方が安全だしね」

イレーヌの方が一枚上手だったようね。

「あなた達・・・しょうがないわね。3人でパパとママに怒られましょうか」

私がそう言うと、イレーヌとアークの顔がみるみる笑顔になってきた。

あなた達は顔に出すぎよ、本当に可愛い私の妹と弟だわ。


「そうと決まれば、パパママ対策用に国を空けた理由を作らなければね」

私がそう言うと、アークが無邪気に答えた。


「パパとママが心配だった、でどうかな?」

あなた、計算得意なんでしょ・・・・そういう計算はダメな様ね。まだまだ心は子供のままだわ。純粋と言えば聞こえはいいが、パパとママが甘やかしたせいね。


「アークはもう少し狡猾になりなさいな。そんな理由では無理に・・・いや、アークが言うならパパとママは騙せそうね・・・・パパとママはアークに激甘だから」

私がダメ出しをしようと思ったらイレーヌがアークに答えていた。イレーヌの言葉を聞き、私もアークなら何でもokになりそうだと思い返した。

私はイレーヌの方を見て、この作戦で行きましょう、何ならすべてアークの責任にして逃げようと合図を送ると、イレーヌも私の考えに賛同してくれた。こうして一番可愛がられている弟にすべてを被ってもらう作戦が決行されることになった。


「そうね、アークはいい子だわ。アークの作戦で行きましょう。私とイレーヌはアークの護衛についてきたと言うのよ」

私はアークの頭をなでながら作戦とは言えない作戦を伝えた。


「うん、僕頑張るよ!」

私とイレーヌは穢れの無いアークの笑顔が眩しすぎて少し心が痛んだが、私達の愛を貫くためにはしょうがなかった。

ひとまず部屋に戻り、忘れ物が無いか確認して再度集まることになった。今回私には秘策があった。あの鉄壁の女子組のバリケードを破る秘策が。

そして、LJ城の裏口に集まり、これからアークの転移を行うという時になって異変が起きた。


「何、この異常な魔力は!」

私が言うと、イレーヌもアークも魔力がどちらから来ているのか探った。


「セリ姉、イレ姉、ナーガ国の方だよ。パパとママに何か起きているのかもしれない。すぐに飛ぶから僕の手を握って」

そう言われ、私とイレーヌはアークの手を握った。久しぶりに握る弟の手は、以前とは違い覚醒のおかげで逞しい手に変わっていた。イレーヌも同じように思っていたようだ。小さい頃は泣きながら後をついてきた弟がこんなにも成長して、と考えていると周りの景色が一瞬でナーガ国の城下町の廃墟に変わった。先ほどとは違い、更に大きな魔力を感じた。地響きなど生易しいものではなく、地面が波打っていたのだ。


「何が起こっているというの・・・」

私は辺りを見渡すと同時にイレーヌとアークもある場所を見ていた。そこには、何事も無いかの様に仲間と談笑しているレッド様と旅団の方々がいた。その先には結界に覆われた中で、得体のしれない魔法が発動していた。見たことも無いすべてを無に帰すような魔法、私はその美しさに目を奪われた。イレーヌとアークも私と同じように美しい魔法に見とれていた。


「すごい、あんなにも凄い魔法があるんだ。やっぱりレッドさんは凄いや。この防具に内蔵されている魔力プールのおかげで空間転移をやった後も、魔力切れにならないで済んでいるんだ。あの人は一体・・・」

アークは独り言のようにつぶやく。


「アーク、あれはレッド様の魔法じゃないわよ。リーズさんの魔法のようだわ。もし同じ魔法をレッド様が使ったら、金色の魔力も加わるはずだから今よりも数倍の威力が出るはずよ」

イレーヌがアークに言った。イレーヌの言う通りで、リーズさんが使用した魔法の属性からは7属性しか感じない。しかしレッド様が持つ特殊属性の金色が加われば威力は計り知れないものになるだろうと推測はできた。


「イレ姉の言う通りだね・・・レッドさんの金色の属性が加わったら、どうなるのか想像もつかないよ・・・」


金色の属性、これがどのようなものなのか分からなかった。ママが言うには昔の冒険者はみんなが纏っていたというのだ。


あぁ、美しいレッド様、私は更にレッド様の泥沼に深く深くはまっていくのを感じた。

隣りを見るとイレーヌが体をくねらせて喘いでおり、アークはというと目を輝かせ見つめている。魔法システムの解析を行っているのであろう。


しばらく眺めていると、魔法が結界により打ち消された。するとレッド様が振り返り、私達に来るように手招きしてくれたのだ。私達は喜んでレッド様のもとへ走っていった。

私達は、こんなにも楽しくて素晴らしい人生を送って幸せだと感じた。これがママの言っていた金色の時代と同じものだと理解することも出来た。


そして、この時私がレッド様に死ぬまでついて行くと決めた時でもあった。


のんびり書いていきます。

土、日は投稿をお休みします。


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