不死五人衆
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「レジル!」
私は部下の一人を呼び出した。名はレジル、実力はハイブリッドの中でも私達姉弟を除いて5本の指に入る者だった。
私はセリーヌ、母ユリアと不死王デッドラインとの間に出来た子。私にはこれからとても重要な案件があったので忠臣であるレジルに仕事を任せることにした。
「ハッ、こちらに」
レジルと呼ばれた者がセリーヌに跪いた。金髪を短く整えた精悍な顔つきで筋骨隆々、全盛期のシュワちゃんそっくりであった。腰にはバグナウをかけておりモンクだということがわかる。
「少し出掛けるから、留守の間お願いね」
レジルにはセリーヌの行き先の見当はついていたので余計な詮索をすることをやめた。女王であるユリア様へ報告をするだけで良かったのだ。
「かしこまりました。セリーヌ様の護衛は如何いたしましょう」
自分より強い者を護衛するのはおかしなことであったが、弾避け位には役に立つかと思い一応聞いてみることにした。
「いらないわ。私に人員を割くくらいなら街の再建計画に人を割きなさいな」
LJ国は復興の真っただ中にいた。中央の領主の館は、増築しLJ城と名を変えLJ国迎賓館と並び街のシンボルとなった。この二つを中心に放射状に拡大中であった。現在、アークの計画したLJ大都市計画は全体の20%の進捗率であった。明確な工期は国家100年の計でエンドレスなのだが遅れれば遅れるほど他の国に差を付けられてしまう為、急ピッチで進められていた。他国と言っても現在交流があるのはナーガ国のみであるが、国土の広さを考えると、今のうちに発展させておく方が有利と考えたのだ。いずれ国土の広いナーガ国には生産能力で劣勢に立たされるが、LJ国にはフィフスとの交易中継地としての役割は大きく、将来の観光客を見越した国作りがされていた。
「仰せのままに」
レジルの言葉を聞くとセリーヌは部屋を出ていった。
(女王ユリア様、聞こえますか)
(聞こえるわよレジル。どうしたの?)
(セリーヌ様が先程、お出かけになりました)
(そう、行き先は・・・レッドさんの所ね。イレーヌとアークはどうしているのかしら)
(気配から、セリーヌ様とご一緒かと)
(そう、分かったわ。あなたは復興計画の指揮に集中して下さいね)
(承知しました)
レジルはユリアに報告すると仲間を呼び集めた。
会議室にはレジルを含め5人集まっていた。彼らはLJ国では不死五人衆と呼ばれ、女王ユリア直属の部隊で、まとめ役をレジルが担っており、戦隊モノの赤のポジションであった。これまで、ユリアやデッドラインと共にLJの民を守ってきており民からの信望も厚かった。不死五人衆と言われているが、たまたま生き残っていたからに過ぎない。デッドラインの様に消滅しても復活するようなチート機能はなかった。
「急な呼び出しに応じてくれて助かる。今回呼び出したのは、セリーヌ様、イレーヌ様、アーク様が揃って外遊に出てしまったので、その穴埋めを皆に頼みたい」
4人が頷いた。
「まず、北部地区の指揮をブルームに頼む。北部は外敵が最初に来る場所であるため計画通り頑強に作る様にしてくれ」
ブルームと呼ばれた面長の男は言葉を発さずただ頷いた。レジルと違い細身でありながらバランスの取れた体格だった。体に似合わず重厚な甲冑を装備しており装備は片手剣と盾だったので聖騎士であることが分かった。
「次に東部地区だが、ここはレッド様の建てた迎賓館があるため、景観を損なうことなく拡張を進めるように。これは・・・イロリに頼む」
「かしこまりました。レッド様の迎賓館の美観を損ねることなく遂行いたします」
イロリと呼ばれた女性が答えた。白く透き通った肌にブラウンナチュラルボブの髪で切れ長の目が特徴だった。纏っている装備はローブなので魔法が得意なのかもしれない。
「次は南部地区と西部地区だが、アーク様の計画ではLJ国の食糧庫となっている。食料問題は切実なので、ここはグラハムとピリリに頼む」
グラハムはキムタ〇に似てイケメンでウェーブマッシュヘア、軽装な装備から弓使いかシーフだろう。ピリリはイロリの妹で姉とは対照的でショートボブ、小麦色の健康的な肌で背丈は姉より高く165cmほどで、軽いチェーンメイルとモーニングスターを装備していることからヒーラー職と思われた。2人が並ぶと誰もが羨む美男美女の出来上がりだった。実はこの2人は恋人同士なのだが2000年ほど長い春を送っていた。今まで戦いに明け暮れそれどころではなかったのである。だが今回、LJ国が認められその後ろ盾に旅団が付くことになり、そろそろ良いでしょうということで結婚することを決めたのだ。もちろん平和になるという前提だが。
「「承知しました」」
二人は揃って返事を返す。
「ではみんな頼むぞ。俺は、ここから監視し進捗の遅れている地区へサポートに入る。これで以上だ、何もなければ、直ちに取り掛かってくれ」
レジムがそう言うと、4人は持ち場へ飛んだ。
各地区2000人ほどで作業を行っていた。南西部は合わせて4000人が農地開拓に従事していた。しかし長年有毒な湿地帯となってしまった土地を元に戻すのは大変な作業であった。
「グラハムぅ、どうするのよ。シズク様や月花様はいとも簡単に浄化してみせたけど、私はまだそこまでの力が無いわ」
ピリリにそう言われたグラハムも困り顔であった。
「レジム殿に期待されて請け負ったのは良いが・・・どうしたら・・・」
二人が悩んでいる間も、4000人の開拓者は有毒物質を取り除く薬品を撒きながら少しずつ開拓していった。
すると迎賓館から50名ほどの旅団員がこちらに向かってくるのが見えた。
「旅団の人達がこっちに来るよ。フィフスへ行くのかな?」
ピリリがグラハムに尋ねると
「うーん、フィフスで何かあったのかもしれないな。彼らの邪魔にならないよう道を開けるように指示を出しておこう」
グラハムが念話で作業をしている者たちに伝えると、旅団員が通りやすい様に道が出来た。
グラハムとピリリも旅団員の為に道を開け通り過ぎるのを待った。すると旅団の方たちが自分たちの前でウォーホースから降りて話しかけてきたのだ。
「レッドさんから浄化を手伝ってやってくれと連絡が来ました。私達スカウト組ヒール担当50名も手伝いますので一緒に頑張りましょう」
スカウト組筆頭カルロ隊のリアーヌがグラハムとピリリに伝えた。
そして、旅団員の助けもあり一番遅れていた南西部の開拓が軌道に乗ることになった。これによりグラハムとピリリの結婚も近付いたのは言うまでもなかった。
のんびり書いていきます。




