表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/238

不機嫌

43


カインがとても不機嫌だった。新たな土地を開拓するという楽しみがあるのに、どういうことだ・・・・

「カイン、どうした、調子でも悪いのか?」

俺は心配している顔をしているつもりだったが、どうやら周りからはニヤニヤしている顔に見えるようだった。心外だな・・・・


「・・・・・いえ、別に調子は悪くありませんし、FTで行った方がついでに神樹をアンロック出来て、ナーガ王と会えて挨拶も出来て良いなと思っているだけで、決してウォーホースが嫌って事じゃありませんからね」

月花に治癒されながら、俺に恨み節を炸裂させてきた。


「あぁ~痛い、心が痛いよ。俺がリティスの兄にもしもの事が無い様に9番隊に頼んで護衛とウォーホースに慣れてもらうためにと考えたことが、カインにはどうしても伝わらないようだ。おぉリティスよ、俺はどうしたら良いんだ?」

大根役者丸出しで妹のリティスに振った。


「兄は最近部屋に籠って研究ばかりで体が鈍っているので丁度良かったと思いますから、レッドさんは気にしなくて大丈夫ですよ」

リティスの援護射撃を貰うことができた。


「あぁもう分かりましたよ。私が悪かったですよ」

カインも妹には弱いのだ。当然、本当に怒っているわけではない。こういうやり取りも楽しみの一つだった。


「じゃ、カインの機嫌も直ったことだし、始めますか!」

と、言ったは良いが、指定された場所には瓦礫の山があり、なおかつ一等地だったため瓦礫の下が舗装されて使いにくいったらありゃしない。更地ならやりやすいのにな・・・・!!!良い事を思いついた。


「リーズ、ナタリア、ケーテ、ロサ!範囲指定ですべて吹き飛ばして燃やせるか?」

こういう時の為の魔法ですよ。ウッドの妹リーズがウィンド隊のナタリア、ケーテとフリーダム隊のロサに指示を飛ばした。


「レッドさん、私も少し試したい魔法があるので、少し離れてもらって良いですか。ナタリア、ケーテ、ロサは範囲結界を張りなさい。どのくらいの威力になるか分からないから、最大魔力で結界を張ること!いいわね?」

3人が頷いたと同時にリーズが詠唱を始めた。その詠唱は特殊で俺も知らないものだったが、ヤバイ威力だというのは肌で感じた。

「光の契約、闇の契約、五属性により融和・・神話の時代より蘇らん!超古代魔法、完全崩壊:デストラクション」

魔法が発動すると同時に結界の中では、すべての属性の攻撃魔法が合わさった、とんでもない威力の魔法が炸裂し猛威を振るっていた。結界を張っていた3人も全力運転だった。30層以上の結界がリーズの魔法が発動すると同時に20枚以上が吹き飛ばされていた。今なお、結界を再構築して上書きしているが、リーズの魔法が収まる気配がなかった。物凄い衝撃で地震かと思われるほど地面が揺れていた・・・いや、揺れではなく波打っていたという方が正しい。

この魔法のおかげで俺達の脅威・・・じゃなく強さをナーガ国に示すことにも成功した。なぜなら、ナーガ城から城主本人とモッチョ氏達、またナーガ配下の者たち、ほぼすべてが俺達を見ていたといってもよかった。赤いアクマ以外にも規格外が居るということを十分に知らしめることが出来た。


「リズ、やりすぎっすよ!」

ウッドがあまりの威力に驚き、妹に叫んだ。当のリーズはケロッとしていた。


「テヘッ、ここまで凄いって思わなかったのよ」


「テヘッじゃないっす。結界が破れそうっすよ!」


「平気よ、あの娘たちが結界を張っていれば、たぶんね」


「たぶんね、じゃないっす!」

リーズのモノマネまじりにウッドが吠えたが、リーズの言葉を聞いた3人は、リーズの言葉の意味に気が付いたようだった。リーズは魔法使いであれば、魔法の属性を感じ取ることに長けているはずだから、対処法は自分で編み出しなさいと言っているのだ。結界であればシズクたちヒーラーに頼めば、問題なく防ぐことが出来たであろう。あえて魔法使いに結界を張らせるのはそういうことがあったのだ。

ナタリア、ケーテ、ロサは多重結界を再構築しながら、目を瞑り魔力の流れを探ることに集中した。3分経過しても魔法の威力は一向に低下しなかったが、3人は何かを感じ取ったようだった。目を開き3人が目配せする。すると結界に変化が起こった。今までは透明な結界だったが色を帯びてきたのだ。イメージとしては、シャボン玉に見える7色のマーブル模様のようなものが現れたのだ。すると結界が割れる度に、魔法の威力が弱まってきた。リーズの魔法と結界が対消滅していったのだ。


「よくやったね、これであなた達も、あの魔法が使えると思うわよ」

リーズがナタリア、ケーテ、ロサに優しく言った。


「いやいやいや、そんな魔法打たれたら、近接のおいらがやばいっすよ!」

ウッドがリズに物申した。

「もう、そんなに頻繁には使わないわよ。詠唱に時間かかるし、戦闘向きじゃないわよ。魔法使いの大変さが、お兄ちゃんには分からないのよ」


「リズは近接の大変さが分かってないっすよ」


「それは、お互い様でしょ!小さいくせに小さいこと言わないでよ!」

あ、言っちゃったよ。リズさんそれは、兄妹喧嘩のゴングですよ。

ファイッ!


「ぬぐぐ、言ったっすね。蒙古斑が残ってるお子ちゃまには言われたくないっす」

これにはリズも顔を真っ赤にして怒り出した。

出るか、リズの必殺無詠唱サンダー。

ウッドもすでに身構えている。

ひとまず、やる事があったので、間に入って仲裁することにした。


「ウッドも言い過ぎだぞ。何か危なそうならシズクたちが結界を張るから安心しろ。リーズは少しウッドに対して言葉足らずなところがあるな。お互い血を分けた兄妹なんだから仲良くするようにね」

とりあえず納めてくれたようなので、気になったことをリーズに尋ねた。


「リーズさっきの魔法だけど、全属性魔法だろ?」


「はい、私も色々と研究して新しい魔法が出来ないかと考えていたんです。で、ヒントは月花さんから頂きました」

それを聞いた月花はキョトンとしていた。

俺には大体の予想がついていた。


「レッドさんを救う為にシズクさんが体を張った時に月花さんが使った魔法がヒントになったんです」

やはり、月花のセブンフルリカバリーか、あれは全属性を使った治癒魔法だからな。


「光と闇の対消滅を防ぐために、5属性を緩衝材として混ぜ合わせた、か?」

簡単に言ってみたが、色の違う水を原色を保ったままに混ぜ合わせるのだ。赤と青であれば紫になるが、紫色が少しでも出来たら失敗だった。すべてが混ざり合わずに混ぜ合わせてと少し意味不明だが、発動と同時に仕切りを外すことによって互いが反発しあい相乗効果によって使用した魔力以上の威力を出すことが出来るというイメージの、低燃費、極大威力魔法なのだ。しかし、集中しないと発動すら出来ない、超上級者向け自己満魔法である。


「やっぱりレッドさんは凄いです。一目見ただけで分かってしまうなんて。私ももっと頑張らないと!」

俺は面倒だから、使えても使わないし。それに、その魔法はクエスト報酬だったから、自分で考えたリーズの才能は凄いと思った。

そうこうしているうちに、結界が解除されたので見てみると、綺麗さっぱりと・・・・えぇ地下10mほどまで跡形もなく吹き飛んでいた。


(待て待てまてぇーい。あれってそんなに威力あったっけ・・・・。全属性魔法だから属性が一極に偏ったものにはそこまで威力が無かったはずなんだけど・・・・それに、クエコンプに莫大なお金のかかる、貧乏冒険者には習得不可のステータスとしての自己満魔法だったような・・・)

と、考えているとカインが嬉しそうにしている。何か画期的な考えがあるのだろう、魔法の事は後程カインに相談し、今は建築に関してカインから説明を聞くことにした。


のんびり書いていきます。

土、日曜日は投稿をお休みします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ