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世界を救う為

38


夜になると、雲の旅団員がチラホラ帰ってきた。中には9番隊のメンバーにバーベキューを自慢されて、後方支援部隊の最後尾からまくって到着した猛者もいた。


「そろそろ始めるぞ!準備はいいか?」

レッドさんが確認すると、皆がジョッキを掲げた。中にはキンキンに冷えたビールが入っていた。これはカイン製冷え冷えビールジョッキだった。冷えていないビールを入れても、冷え冷えになるという優れものだ。夫とアークは、中がどのようなシステムなのか興味津々みたい。

レッドさんの周りには、女の子が沢山集まっていた。その中にちゃっかりと、私の娘たちも紛れ込んでいた。我が娘ながら、レッド親衛隊のバリケードを突破するとは見事だわ。


「明日も楽しく生きていこーぜ!かんぱーい」

レッドさんの掛け声で、夕食バーベキューが始まった。浄化整地された中庭には芝が植えてあり綺麗な緑色だった。その中央にはレッドさん自身が焼き番として皆が食べる串を焼いてサービスしていた。乾杯の後、レッドさんの前には焼きあがった串を貰う列が出来ており、隣にはウッドさんとカインさんが鉄板焼きで色々な料理を作っていた。うちの娘たちは、親衛隊に混ざりレッドさんの焼く串の準備やら食材を切ったりと動き回っていた。


「あの子達ったら、家ではそんなことしたことなかったのに・・・」

今までは、生き残るために必死で料理すらまともに教えられなかった。そんな我が子が一生懸命料理を手伝っている姿を見て、とても嬉しかった。

暫くすると、みんなに料理が行き届いたのか、列が短くなってくる。時間がたつほどに、レッドさん達にも余裕が出てきた。今も料理を取りに来るのは、大食漢か遅れて到着した旅団の皆さんだった。


「人間は良いデスネ。相互協力が出来るからネ」

娘を見ていた私に夫が話しかけてきた。


「えぇ、魔族を否定する気はないけれど、あの子達には普通に暮らしてもらいたいわ」


「魔族は、服従か死か、どちらかしか選べない世界デス。私も死にたくなかったから、同族を沢山殺しましたネ。今考えると別の道もあったネ。あのころは・・・・」

夫が、また何かを考えこんでしまった。こうなると暫く黙ったままになるので放っておくことにする。


娘たちを見ると、食事を摂りながらレッドさんを質問攻めにしていたようだ。私も気になったので集中して聞き耳を立てた。


「レッド様、私達のママの事ですが、昔はどんな感じだったのですか?」

セリーヌがレッドさんに質問していた。我が娘ながら良い質問ね、私の王女としての素晴らしい話をしてくれるのだろうと思い、レッドさんの回答を待つ。


「ユリア姫の昔の話?・・・うーん、そうだなぁ、一言で言うと、めんどくさい、かな」

ちょ、ちょっと何言ってるのよレッドさん!


「それは、どのように、面倒だったのでしょうか?」

セリーヌが、更に突っ込んで聞いた。


「ユリア姫に仕事依頼されてさぁ、終わって報告するでしょ?そしたらユリア姫が何て言ったと思う?」

周りの女の子すべてが、次の言葉を待っていた。


「ご苦労、隣の大臣にも報告を頼むって言ったんだよ。いや、隣で大臣聞いてたでしょ!なんで目の前にいる大臣にもう一度同じこと言わなきゃいかんの?って感じで、いつも偉そうだったんよ。それはまだよかった方で、仕事が終わって報告したら、サドン国の衛兵に報告しろって言われて行ったら、ご苦労、これをユリア姫にって渡されたものを持っていったら、ユリア姫なんて言ったと思う?ご苦労、それをエンド国の衛兵に渡してくれって言ったんだよ。酷くない?配下の配達屋さんにやらせろや!それで、面倒な仕事ばっかり寄こすから、他の効率のいい仕事やっているとさぁ、ちょっと来てくれるって呼びだすしさぁ・・・」

・・・・・言いたい放題ですわね・・・・

セリーヌとイレーヌは信じられないって顔をしていた。


「では、なぜレッド様はママの仕事を受けていたのですか?」

セリーヌよ良い質問だわ。


「うーん、クランの装飾品が欲しくてしょうがなく?いや違うかな、新しい装備が欲しくて?いや違う・・・」


「レッド様・・・・その・・後ろ・・・」

セリーヌが指を指すので、そちらを見ると・・・・


「レッドさん、すこし宜しくて・・・」

背景にゴゴゴゴと見える位の気迫でユリア姫が立っていた。

俺はすぐさま機転を働かせた。


「あ!思い出した。ユリア姫と一緒に世界を救う為に頑張っていたんだった」

ちらりとユリア姫を見ると、いつものユリア姫に戻っていた。九死に一生を得るとはこの事か。


「そうよ、私と、レッドさんは世界を救う為に、一生懸命頑張っていたのよ」

すこし姑息でしたが、我が子達に私の威厳を保つことには成功したようね。それにしてもレッドさんもひどいですわ。あの時の私には、あのようにしか答えられなかったのですもの。

その後も、レッドさんが訳の分からない事を言わない様に目を光らせながら、楽しくバーベキューを楽しみました。


のんびり書いていきます。

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