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不変

36


「9番隊の皆様、有難うございます」


「いえ礼など要りません。むしろ、ユリア姫を乗せることが出来て光栄でした」

隊長のバットがユリア姫に答えた。


モッチョ氏とユリア姫、デッドライン、ライラ、フレサンジュ達は一足先に9番隊によってグラスを出発して3時間もかからずにミズールに戻ってきた。

ミズールを出立して12日しか経過していなかったが、ミズールの街並みが以前と様変わりしていた。5万人の避難民がいた時同様、街に人があふれ、更に露店などが出店されていた。


「おやおや、賑やかで良いですね。レッド殿が何かしたのでしょうね」

モッチョさんが街を見るなり、ワクワクした感じで誰にでもなく話していた。私も街を見渡すと、知っている顔がチラホラ・・・どころではなく、そのほとんどが知っている顔だった。


「あれ、どういう事でしょうか・・・・ロストジューダスの民が何故かここに居ますね・・・」


「ユリア姫、これはきっとレッド殿が何かしたのでしょう。ささ、急ぎレッド殿の所へ行きましょう」

私は、モッチョさんに言われるまま、中央の領主の館まで急ぎ向かった。途中、知った顔から挨拶が飛んできたが頭が混乱して、まともに挨拶も返せなかった。館の前に到着すると、2Fバルコニーからレッドさんが顔をのぞかせ声を掛けてきた。


「いよぉ、ユリア姫お疲れさん。どうだったフィフスは?」


「はい、それはとても素晴らし・・・ではなく、一体これはどういうことですか?」

レッドさんが何もなかったかのように話しかけてくるので普通に返してしまい、慌てて現状の説明を求めた。しかし、レッドさんが何のこと?みたいな顔をしていたので再度説明を求めた。


「あの、ミズールの街に、ロストジューダス(以降LJ)の民が大挙しているのですが、どういうことですか?」

再度問いかけると、ようやく気付いたようだった。


「あぁ、それね。だってもうLJの首都になったんだよな?だったら国民が居ても問題ないだろ?」


「それは、事前の話ではそうなのですが・・・まだナーガとの調印が終わっていませんし・・・移住計画も立てなければなりませんし・・・」

街を立て直して、区画整理などしなければならない等、決めなくてはいけないことが山盛りだった。


「え、そうなの?あれ、俺余計なことしちゃった!?」

レッドさんがそう言って誰かと話をしている。私達は、急いで2Fバルコニーへ向かった。そこにはレッドさんと談笑している3人組がいた。私は頭を抱えた。何故かって?そこには私のよく知っている人物が居たからだ。


「あなた達!ここで何をしているの!」


「あ、ダディ、ママ、おかえり」


「答えになっていません!何をしているんですか!」


「うーん、レッドさんとお茶?」


「そういうことでは無くて、街にLJの人達もいるでしょ。それも合わせて時系列で説明なさい!」


「まぁまぁ、ユリアさん、そんなに問い詰めなくても。初めまして、私はフィフスの代表でモッチョと言います。まずは自己紹介をお願いしたいのですが宜しいですか?」

私を落ち着かせながら、モッチョさんが子供たちに自己紹介を求めた。子供と言っても見た目は一人を除き20代の大人だ。


「初めまして、長女のセリーヌです。年齢はママより少し若い5950歳位かな。長すぎて正確な年齢は分かりません。以後宜しくお願いします」

顔はユリア姫によく似て美しく、色白で長い黒髪をポニーテールにしていた。


「次は、あたしだな。次女のイレーヌだぜ。歳は分かんないや。今後ともよろしく!」

ユリア姫が睨むと、丁寧な口調に変わった。どこの世界も母親強しというのは不変のようだ。

「今後も宜しくお願いします・・・」

次女のイレーヌはどちらかと言えば、父親似でイケメン女子だった。ショートカットで日に焼けた小麦色の肌で活発なイメージだ。


「僕が長男のアークです。今はまだ力が出せませんが、一応ハイブリッド種です。今後ともよろしくお願いします」

長男だけはウッドと同じく背が低く、成長が途中で止まった感じだったが年齢は1000歳を超えているだろう。見た目はユリア似の美少年。


「セリーヌさん、イレーヌさん、アークさん、これからも宜しくお願いします。それで、どのような経緯でこちらにいらしたのかお聞きしても?」

モッチョさんが問いかけると、長女のセリーヌがユリアの顔を見て、頷くのを確認すると


「では、私からご説明させていただきます。まず父と母が出掛けて3日ほど経った頃から連絡がつかなくなりました。たぶんですがこれは、フィフス領内に入ったためかと思います。私達はそのことを聞かされていなかったので、何かあったのかと思い、この街へ急いで来ました」

レッドさんは経緯を知っているので、われ関せずで、お茶をしている。


「そして街へ入ろうとすると、結界が張っており入ることが出来なかったのです。私達の体の半分は魔族の血が流れているので当然でした」


「僕は外で待っていようよって言ったんだけど・・・イレ姉が・・・」


「そっからは、あたしが説明するよ。あたしはパパとママに何かあったと思って、力任せに結界を破ろうとしたのさ。そしたら、これが意外と頑丈でさ、なかなか壊れてくれなかったのさ。もうほんっと頭にきて最大魔力を打ち込んでやろうと魔力を練っていたら、中から人間が集まって来たのさ。その先頭には、あたしのダーリンがいたってわけさ」

次女のイレーヌが勢いよく話し出した。


「oh、レッドさん、私の子供をたぶらかすのはやめてクダサイdeath!」

ダーリンという単語に反応したのはデッドラインだった。世の父親は娘を溺愛するというのも不変ですね。デッドラインからレッドに殺気が飛んでいくがユリアに尻を叩かれ殺気が消えた。


「はいはい、それで、その後どうされたので?」

モッチョ氏が目を輝かせながらイレーヌへ問いかけた。モッチョ氏もユリアと同じく普通では起こらないイレギュラーが大好きだったようだ。


「おう、続けるよ。それとパパは黙っててよ。結界の中に人間が集まったから、パパとママの事を聞いたのさ。するとフィフスに行ってるから、そのうち帰ってくるから大人しく帰れって言われたのさ。私達はフィフスって世界の事を知らなかったから、嘘を付くな!結界を解除しないと街ごと吹き飛ばすって言っちゃったんだよね」

イレーヌがテヘッみたいな顔をすると、ユリアがしかめっ面になりロダンの考える人のポーズになってしまった。そんな母親を横目にイレーヌが続けた。


「そしたらさ、ダーリンが中から出てきて、街を吹き飛ばすのは困るから何とか帰ってくれないかって言うのさ」

先程からダーリンを連呼するから女子組からは不穏な空気、いや殺気が・・・・


「あたしも、ちょっとそれはまずいかなって思って、ダーリンに勝負を申し込んだのさ。勝ったら中に入れろってね。でもその時はパパとママが心配だったからしょうがなかったんだよね?」

イレーヌが姉と弟に同意を求めると、2人も頷いた。


「それで、結果は分かっているけど、一応聞いておくわよ」

ユリアが子供たちに確認する。


「それがさ、もうケチョンケチョンにやられちゃったのさ。もうさ、手も足も出ないってああいうこと言うんだって知ったのさ!だって武器とか使わずに体さばきだけで翻弄されるって考えられる?」

イレーヌが母親にも同意を求めるが、当のユリアは


「以前にも話したでしょう、金色の英雄の事を。レッドさんがその人なのよ。あなた達が束になっても敵いませんわ」

束になってもと聞いたイレーヌの顔色が変わると、ユリアが慌てて問いただした。

「まさか、3体1でもやったのですか!」


「僕はやめようって言ったんだ。でもセリ姉とイレ姉がキレてて、どうしようも無かったんだ・・・。だからしょうがなく・・・」

セリーヌとイレーヌがアークを睨むと、アークの語尾が小さくなっていった。


「アークはいい子ね。悪いのは脳筋のお姉ちゃんたちよね」

ユリアがアークを庇うと、2人の姉が声を揃えた。

「「ママはアークに甘すぎよ!!!」」

一番下の子が、一番可愛がられる・・・これも不変だな。


のんびり書いていきます。

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