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ご褒美

35


デッドラインとユリアの素性はごく少数の上層部にのみ伝えられ、晩餐会は問題なく行われた。もし魔族デースなんて紹介されたらパニックを起こすかもしれなかった為だ。


「モッチョさん、今日は招待していただき有難うございました。おかげで、この壁画を見ることが出来ました。それに、ロッドを取得する際の父の遺言も聞かせて頂き、重ね重ね有難うございます」

晩餐会の会場の壁画には、3人の王と皇帝、そしてユリアが描かれていた。晩餐会に来ていた者がユリアが壁画の女性にあまりにも似ていたため、ユリアが入場した際には大きなざわめきが起こった。しかし、騒ぎにならなかったのは、参加者のほとんどが王族に連なる者たちばかりだったからだろう。


「いえいえ、私もレッド殿から聞いただけで現場には行っておりませんが、旅団の全員がそれを見たのです。私もそれを聞いた時、涙が止まりませんでした。ですが、こうしてユリア姫が生きている事が分かって天国のお父様も安心している事でしょう」


「はい、私を蘇生してくれた夫には感謝しております」


「私も、今ならユリアの父親の気持ちが分かるデース。私にも子供がいますからネ」


「おっと、それは初耳ですね。その前に、おめでとうございますdeathかね」


「モッチョさん、アリガトネ。私とユリアの間には3人の子供がいますデース。長女、次女、長男の順デース。ユリアと同じくハイブリッド種で2人の姉は完全覚醒型ですネ」


「完全覚醒型とは?」


「初めから魔族の限界を突破している者を完全覚醒型と言いますネ。突覚型もいますが、これは全体の1%にも満たないデス。しかし完全覚醒型よりは突覚型の方が特殊スキルを覚えていることが多いと言われています」

ハイブリッド種には4種類いるようだった。魔族の性質を受け継ぎ、尚且つその限界を超えた完全覚醒型、魔族の性質を受け継いだ覚醒型。完全覚醒型及び覚醒型は受け継いだ魔族や悪魔に準ずる寿命が与えられる。次に時限覚醒型があるが、これは覚醒型で寿命が人間と変わらない。最後に突覚型があるが、これはすべての良いとこ取りで、完全覚醒に特殊スキルを覚える可能性が高いタイプだった。しかし、特殊スキルを覚えるまで、途中で成長が止まるデメリットがあった。近接戦闘に於いてリーチは重要な部分で、同じ戦闘力であればリーチがある方が有利だからだ。


「2人の姉はと言いましたが、ご長男は?」


「彼は、いまだ覚醒していませんネ。内に秘めた力を感じるので突覚型だと思うのですが、覚醒に至るトリガーが分からないのdeath」


「左様ですか・・・・レッド殿には?」


「oh、言っていませんでした。帰ったら聞いてみましょうネ」


「ですね。レッド殿であれば何か知っているかもしれませんから、帰ったら聞いてみましょう。それでは、遅くなってしまったのでお部屋を用意しました。今日は、そちらでお休みになってください」


「何から何までありがとう。では明日朝出発という事で宜しいですか?」


「はい、朝迎えに参ります」

私達は案内された部屋で休むことにした。


「あなた、顔には出さないけど、何を考えているの?もしかして深淵の地下迷宮の事かしら」


「oh、ユリアはいつも鋭いネ。その通りデス」


「でも、普通のダンジョンでしょう?」


「・・・・特殊スキルの千里眼で最下層が見えないというのが引っかかりますネ」


「それも合わせて、レッドさんに相談しましょう?」


「okデース。せっかくですから、横になりましょうネ」

魔族に休息は必要のない行為だったが、私に合わせて休んでくれる。夫の頭の中では横になっていても色々な事を考えているのだろう。難しいことは夫に任せて私は眠ることにした。


ドアをノックする音が聞こえたので、起き上がろうとすると夫が対応してくれた。フレサンジュさんが朝食を運んでくれたようだった。

こんなに深く眠ったのは、いつぶりだろうか?夫と生活を始めてから6000年弱ぶりだ。アストレムルでは、いつ襲われるか分からない状況だったので深く眠ることが出来なかった。


「ゆっくり眠れたようデスネ、ユリア」

夫がベッドに朝食を運んでくれた。


「朝食まで運んでくれてありがとう」


「ご褒美は貰っていますからネ」


「え、何か差し上げたかしら・・・?」


「えぇ、もちろんデスネ。あんなに穏やかに眠るユリアの寝顔が見られたのですから充分death」


「もう!あなたったら。恥ずかしいじゃない・・・」


「ハハハ。真っ赤になった顔も素敵ですネ」


「もう、知らない!」

そう言って私は朝食を食べ始めた。アストレムルへ出発する時間が迫って来ていたので、急ぎ朝食を摂り、着替えを済ませた。


再びドアをノックする音がする。

「ユリアさん、デッドラインさん、準備のほどは如何ですか?」

今度はモッチョさんが来てくれたようだ。私は扉を開け部屋に通した。


「わざわざ迎えに来てくれてありがとうございます。私達の準備は終わっています」


「そうですか。では9番隊に連絡を入れて、出発しましょう」

モッチョさんが9番隊に連絡を入れると、すぐに迎えが来た。本当にどんだけ速いのよ、と思ったが寿命がある人間にとって時間は有限ですからね。この人たちを起用したレッドさんは優秀だなと思ったりもした。


レッドさんは、永遠を生きる金色の英雄は今後どうするのだろう・・・・彼について行く者たちは有限の時しか生きていけない。彼の事だから何か考えているのでしょう、私が心配してもしょうがないわね。それよりも、講和条約を結んでからのことを考えなければいけないし、ミズールがLJの首都になった場合は、皆をミズールに移住させなければいけない。やることは山積みだった。


のんびり書いていきます。

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