大剣使いの熱き戦い
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通路では2人の男女が互いの得物について話していた。
「あなたもマッシュと同じで大剣なのね」
「色々と試したが、これがしっくり来たからな」
練武場で稽古を行う予定であったが、観客が膨れ上がったため急遽、モッチョ商会の所有する競技会場へ場所が移された。内容も大剣使いの熱き戦いと題して、モッチョ商会が宣伝を行った結果、観客席は満員御礼の7万人が集まった。モッチョ商会の従業員が競技会場内に作られている飲食店を急遽開店させ大忙しだった。
競技会場は、以前行われた冒険者応援大会の収益の良さから、モッチョ氏の命で全国の主要な街に続々と建設されていった。
闘技場に一人の女性が上がってきた。
「では、観客の皆さん宜しいですか!」
ライラさんが急遽司会を務めることになりアナウンスが始まった。ライラさんが闘技場に上がるあたりから、客席からは大きな歓声があがりはじめた。
「本日、急遽行われることになった、エキシビジョンマッチ。西側には超絶美麗大剣使いのユーさんです。皆さん拍手を!」
大きな歓声が起こり、ユリアが入場してきた。
「対する東側には、剛の大剣使いのマロさんです。合わせて拍手をお願いします!」
こちらも大きな歓声が起こり、マーベアが入場してくる。
今回は身分を公には出来なかったため、仮名でのエントリーにしたようだ。
「では、ユーさんとマロさんの模擬戦を行いたいと思います。両者中央へ!」
会場からは大歓声が起こっていた。
「では、お互い構えて!」
会場が静まり返る。
「開始!」
一気に会場が沸き上がった。女性の観客はユーを応援し、男性はマロを応援していた。しかし、ユーの美貌にやられた者も多く、どちらかと言えば歓声に関してはユー優勢だった。
「私が子供の頃にマッシュに教えてもらったことを、あなたに教えてあげるわ」
「それはありがたいね。で、睨み合ってても始まらないんだが?レディーファーストで初撃は譲るぜ」
「あら、それはありがとう。ではいくわよ!」
大剣を上段に振りかぶり距離を詰め打ち込む。マロもいなさず、これを大剣で受け止めた。
火花が飛び両者が押し合う。
「その体で、その威力、口だけじゃないな」
華奢なユリアからは想像できないくらいの、強い打ち込みだった。数度打ち合っただけでマーベアはユリアの実力を感じ取った。
「あら、見た目で判断すると痛い目をみるわよ」
ユーが剛の剣で何度も打ち込んでいく。撃ち込む度に綺麗な火花が散っていく。
受けに回っていたマロも、ユーの打ち込みに合わせて同時に打ち込み始めた。互いに一歩も引かず打ち合う。互いの力量が同じなのか、同じ角度、同じ剣筋で打ち合う。まるで鏡に映る自分と戦っているような感覚だった。
「これじゃ、勝負がつかないぜ?」
「では、これならどうかしら」
ユリアがマーベアの剣を受け流し、その力を利用して回転し斬りこむが、マロも回転斬りを受け流し、その力を利用して回転斬りを行った。互いに剛から柔の剣に切り替える。
両者全く譲らず、大剣使いの見本のような模擬戦が行われていた。
「あら、かなり頑張るわね」
「そうさ、レッドに鍛えられたからな!」
「そうなの?それでその程度なの。レッドさんが悲しむわよ」
「何だとぉ!」
「彼は今、あなたが思いもよらないくらい高みにいるわ。今の彼が、あなたを見たら失望するわよ」
「うるせぇ、それは俺に勝ってから言えっての!」
マーベアが受け流しできない角度で、剛の剣を叩き込むと、ユリアは大剣で受け止めつつ後ろへ飛んで威力を散らし距離を取った。飛んだことにより、体勢を整えるのに一瞬のスキが生まれマーベアがすかさず大技を繰り出した。
「螺旋突!」
大剣をドリルの様に回転させ一直線にユーに飛び掛かる。
「私がワザとスキを作ったと思わなくて?」
「なにっ!」
技が発動してしまったらキャンセルが効かない。マーベアはそのまま行くしかなかった。
ユリアが大剣を右斜め下から斬り上げる。
「昇剣!」
マーベアの体に美しいお手本の様に流れるように技を入れる。
「鉄山流撃掌」
ユリアがマーベアの大剣を打ち上げたと同時に背中でマーベアの正面に体当たりして、大剣を放した右手でリバーブローを叩き込んだ。
マーベアが両膝をつき地面にうずくまる。
「グッフゥ・・・。俺ってこんなんばっかりだな・・・」
「勝負あり!勝者ユー選手!」
ライラさんが間に入りユリアの勝利を伝えた。
会場からは大歓声がとどろく。
「皆様、如何でしたでしょうか。強くなりたい方や、冒険者になりたいけど、どうしたら良いのか分からない方など興味のある方はモッチョ商会までお問い合わせください。皆様本日は御来場いただき有難うございました」
ライラが場内アナウンスをしている間に、マーベアは担架で控室に運ばれていった。ユリアはというと、観客に両手を挙げ、手を振りながら笑顔で退場していった。
のんびり書いていきます。




