スピード狂
13
この島は始まりの島と始まりの街ミズールとして、すべてのプレイヤーが通る場所だった。4大陸から切り離され戦乱とは程遠いのどかな場所であった。だが今は違っていた。緑豊かな豊饒な土地は見る影もなく、湿地帯と化しアンデッドが徘徊する場所となってしまった。
「こりゃ酷いな。逃げ場所が無いから、生き残りは居ないかもしれないな・・・」
一縷の望みをかけてシズクを見るが
「だめ、この島にはいないみたい。大陸の方は霧がかかっていて上手く見えない」
「やっぱりね、そう上手くは行かないか。ミズール北部のアウゲの街も壊滅だったし。あそこはスカウト組に任せて俺達はミズールを落とすぞ」
「「「「りょ」」」」
「このミズールは地方都市で大きいが、外敵が少なかったため城壁などがなく突破するのは容易い。シズクの千里眼では中央に位置する領主の館にレイスロードが居るらしい。ここは戦力の分散を避け短期決戦で正面から一気に攻めるぞ。通常なら夜の襲撃が良いのだろうけど敵はアンデッドだからこの日中がチャンスだからすぐに動くぞ」
全員が騎乗し、すぐさまミズールに突撃した。日中と言っても霧が濃く多少日差しが入る程度であった。街の至る所にゾンビが徘徊していたが俺達の敵ではなかった。
「見えた。あそこだ。結界を張って出られない様にしてくれ!」
「私と月花で結界を張ります」
リーズがそう言い物理結界を、月花が聖属性の魔力結界を張った。これでアンデッドは外に出ることも、外から中に入ることも出来なくなった。生気を感じ取ったアンデッドがわらわらと集まってくるが聖属性の結界に触れると消滅していった。元は街の住人だったのだろうがアンデッドでいるよりかはマシだろう。成仏して生まれ変わることを祈ろう。
「中に突入するぞ。レイスロードが居るらしいが格下なので問題ないが油断はしないでくれ」
「「「「りょ」」」」
俺達が乗り込もうとした時、扉をすり抜けるようにレイスロードが姿を現した。
「お前たちは何者だ。ここは私が治める土地。一体どうやってこの島に辿り着いたのだ」
「あんたの親分は吸血王デッドラインだろ?」
「・・・・・」
沈黙が答えだろう。
「ここって緑豊かな大地だったよな?どうやって湿地帯に変えたんだ?」
「・・・・・・」
「だんまりかよ。まぁいいや、こっちで調べるから。で、戦う気はあるのかい?」
「お前は優位に立っているつもりだろうが、ここは我らの支配地域。そう上手くいくかな」
そう言いレイスロードが両手を掲げると地面から多数のグールが這い出てきた。数にして30体、決して少なくない・・・・が所詮格下。
「ダガーストーム!」
「付与魔法ホーリー」
ウッドのダガーにリーズが聖属性の付与魔法をかける。無数の聖属性のダガーがグールを浄化する。
「な!・・・・・」
何かを言いかけたレイスロードがサーラの秘奥義“絶”で消滅させられた。
「よし、館の内部を調べるぞ。生き残りが居るという手掛かりなど何でもいいから探してくれ」
「「「「りょ」」」」
各隊が館に入っていく。俺は館に設置されているFTポイントの神樹へ向かった。
「やっぱりか。これが原因で湿地帯になっていたんだな」
そこには禍々しい宝珠が神樹に埋め込まれていた。大地の地脈に根差している神樹に宝珠が作用し、この島一帯を湿地帯に変えていたようだ。
「シズク、これ何とかできないか?」
「無理に剥がすと神樹に影響が出る。時間がかかるけど何とかしてみる」
「リーズと月花は結界の維持を頼む。FTポイントから魔族の増援が来た場合外に出すわけにはいかないからな」
「「はい」」
(ウィンド、フリーダム、スカウト隊は周囲の警戒をしつつ手掛かりの捜索を頼む!)
((((りょ))))
(ミズールを奪取した。6番隊以降は南下しながら魔物を殲滅しつつこちらへ向かってくれ!アウゲの街は6~8番隊で対応してくれ)
((((了解))))
(カイン聞こえるか?)
(はい)
(神樹に作用している宝珠の解析を頼みたい。すぐに来てくれるか?)
(了解です)
(9番隊に護衛してもらうから一緒に来てくれ)
(え、あの・・はい・・分かりました・・・9番隊ですか・・・)
カインの声のトーンが落ちた。
(バット聞こえたな?カインを至急連れてきてくれ)
(了解です!スピード狂の9番隊の名に懸けて!)
(頼んだぞ!)
(はい!)
9番隊にはスピード狂が揃っていた。速度重視のシーフ4、忍者4で回復は薬品を使い、タンクは居なかった。隊の方針が敵の攻撃が当たらなければ良いというものだった。まぁ今まで問題なかったから大丈夫であろう。
あとはカインが到着するのを待ち、シズクのサポートに回ってもらおう。
のんびり書いていきます。




