赤い閃光
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各国首脳の演説が終わり、パレードが始まった。
先頭は俺達とフリーダム・ウィンド隊、中ほどにモッチョ氏一行と護衛、殿にスカウト組で大通りを進んでいく。中心街を抜けたあたりで大通りを塞ぐ集団が現れた。
「我々は障壁の解除に反対する!市民を危険に晒すな!」
反対デモですか・・・・賛成派の市民と口論も始まってるよ・・・・
(モッチョ氏、反対デモ来てるけど、どうすんのこれ?)
(少々お待ちください。そちらへ向かいます)
暫くするとモッチョ氏がガブラさんと一緒に馬に乗ってきた。
「皆さん冷静になってください!まず障壁の解除は致しません。一時的に道を作るだけです。私達が通過した後は元に戻します!」
「そんなの信じられるか!そこの冒険者がやられたら、魔族がやってくるだろ!今まで何もなかったのだから、今まで通りにするが一番の安全策だ!」
「お前たちは自分たちが良ければいいのか!あちらでは同胞が戦っているかもしれないだろ!」
「可能性でものを言うな!行って誰も居なかったらどうするんだ!何もしないのが一番安全だろうが!」
市民同士が争い始めた。
「皆さん!皆さん冷静になってください!どちらの言い分も正しいと思います。しかし反対の方はデモの申請をしましたか?私は法に則って正しい手続きをしました。自分たちの身を守るという気持ちも大切です。グラスは法治国家ですので反対するなら、明確な理由を提示して下さい。何度も言いますが気持ちも大事ですが、それだけで反対するというのは少し違うと思います」
モッチョ氏が間に入って争いを止めようとしていた。
「レッ君、地震が来る。気を付けて」
シズクが警告を言うのと同時に地震が起こった。地震が収まると、第二ラウンド開始みたいな雰囲気になっていたのでカインを前に来るよう指示を出した。
「モッチョ氏、良いかな?」
「はい、なるべく力での対応は控えて頂けると・・・」
「分かっているよ。みんな聞いてくれ。俺は雲の旅団の団長レッドだ。今の地震が何か分かるか?」
誰も明確な答えが言えないでいた。
「あれは中央の砂丘に設置された障壁のクリスタルを内部から破壊しようとして発生したものだ。現に、ある地区では砂丘から飛ばされたクリスタルの破片が見つかっている」
「そんなの嘘に決まっている!証拠はあるのか!」
「証拠はある。カイン!」
カインが頷き説明を始めた。
「皆さん!最近の地震の震源地はご存知ですか?」
静まり返ったままだった。
「障壁の中心が震源となっているのです。これが意味するところは、中心で何かが起こっているということです。その何かと言うのは、これを見て下さい」
カインがクリスタルの破片を取り出した。
「これは障壁を作り出しているクリスタルの破片です。これが発見された場所は何処だと思いますか?」
皆が真剣に耳を傾けだした。
「メルム国にある、私の住んでいる片田舎の近くで発見されました。この破片がクリスタルの制御を行っていたのですが、本体から外れてしまい制御不能になり瘴気たまりが出来、40年周期で魔物が発生する事態となり、メルム国の軍に討伐を依頼していました。私は過去の資料を調べ、何時から魔物が発生したのかを調べました。すると一番古いものが185年前だと分かりました」
カインが一呼吸置き周りを見渡した。
「ここにいるレッドさんから依頼を受け、地震の調査を開始しました。調べているうちに分かったことがあります。障壁の中心を震源とする地震も185年前からと分かったのです」
勘が鋭いものは青ざめていた。
「これでお分かりと思いますが、魔族の侵攻は185年前から始まっていたのです。まだ発見されたクリスタルは1つですが、今後増えていけば、障壁のバリア効果が薄れ一気に瓦解することは目に見えて明らかです。障壁が壊れるか、その前に突入するかの2択しかないのです!」
市民から動揺が広がっていった。
「もし、障壁が壊れることがあれば、全方位に魔族が散らばり防衛どころではなくなるでしょう。制御できる今なら道を作り迎え撃つことが出来、こちら主導での戦闘が可能となります。皆さんはどちらを選びますか?障壁は、あと100年は大丈夫でしょう。しかし100年後のいつか分かりませんが、皆さんや又はその子供や孫が魔族に蹂躙されるのは間違いないはずです」
一気に静まり返った。
暫くするとぽつりぽつりと声があがり始めた。
「俺は赤毛の兄ちゃんに賭けるぜ!なんたって村を救ってくれたしな」
「赤毛だって・・・?まさかあれが噂の赤い閃光なのか・・・」
「噂だと、城を真っ二つに出来ると聞いたぞ!」
「僕はレッド兄ちゃんを信じるよ!」
振り向くとカイが、隣にはシリカとギブソンさんもいた。少しずつ赤毛コールが大きくなっていき、隣のウッドと会話が出来なくなるくらいに大歓声になっていった。
するとモッチョ氏が前に進み、話を聞くように手を挙げた。
声が届くくらいに収まるとモッチョ氏が話し始めた。
「皆さんには雲の旅団と言うより、赤い閃光と言った方が馴染みがあると思いますが、この方が赤い閃光のレッドさんです。私はこの方が、言伝えの金色の英雄だと思っています。私が1年間レッドさんと旅をして思ったことは、我々の常識が通用しない事でした。それに今現在、レッドさんが装着している武具をご覧になって下さい。等級はゴッド級を超えた夢物語の神話級ミソロジーをさらに超えた創世級ジェネシスの武具となっています。我々の武器では傷一つ付かないでしょう」
モッチョ氏が一呼吸置いた。
「反対派の方も今一度考えなおしてくれませんか?我々が通る間だけで構わないのです。一切こちらに魔族を入れないと約束します」
すると反対デモの一団が二手に分かれ道を開けてくれた。
「皆さん、ありがとうございます。私達はこのまま進み2日後には障壁内部へ突入します。大統領として、市民の安全の為2日後の突入から5日間外出禁止令を出します。どうかよろしくお願いします」
そう言うとモッチョ氏はガブラさんと列の中ほどに戻っていった。
そして大歓声の中、アストレムル殴り込み一行はバンチへ向かった。
のんびり書いていきます。
明日はお休みするので次回投稿は月曜日になります。




