転生?転移?どっちなのよぉ
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俺は自分が冒険している映画を見ていた。
それを見て、観測することによって実体験として記憶が蘇り、すべてを思いだした。
―なんで今まで忘れていたんだ・・・・・
(何か意味があるのかもね?)
―どうしたら戻れる?
(どちらに戻りたいの?)
―決まっている。今を生きている、あいつらのもとへ。
(彼らには魂は無かったんじゃないの?ゲームでしょ?)
―今ならわかる。俺が生きていた世界も、こちらの世界も変わらない。だったら魂ってなんだって考えると、俺が観測したことがすべてなんじゃないかってね。子供には会いたいよ。でもあっちの世界じゃそれは叶わない。だったら、今を生きているあいつらのもとへ俺は帰りたい。
(合格よ。元の世界を選んでいたらこのまま帰ろうと思ってたのよ。それに、肉体も無くなったし、あちらの世界はつまらないわ)
―元の世界を選んでいたら・・・・いや聞くのはやめる。
(賢明よ。あなたが今どんな状況か、あの子達が何をしているのか見せてあげる)
モノケロスの神樹がある洞窟が見えてくる。
―あの繭が俺なのか?
(そうかもしれないし、そうではないかもしれない。あなた次第よ)
―意味が分からない
(あの繭には核が無いわ、魂という核がね。あの繭の中にはあなたが20年以上共にした肉体が眠っている。あなたが核になることであの世界に転生?なのかしら・・・でも、もともと肉体があったわけだから転移?・・・もう、どっちでもいいわよぉ。とにかく戻れるわよぉ)
―どうすればいいのか教えてくれ!
(私が妖精を媒介にしてゲートを開くから、そこから繭に移りなさい。簡単ではないわよ、何しろ私の力じゃこの世界に干渉しても小さな穴しか開けられないわ。きっと私よりも上位者がいるのね)
―早く!
(急がないの、準備が必要なのよ。ほら見てみなさい)
誰も居ない洞窟にウッドたちがやって来た。何やら準備をしている。
(終わったようね。ではいくわよ)
小さな、とても小さな穴が開いたのが分かった。
(ここからあなた自身を流し込みなさい。あちらに行きたいと念じなさい。強く強く・・)
言われた通りにすると、感覚的に体の一部が無くなっていく感じに襲われた。
―これは、大丈夫なのか?
(さぁ、あなたは誰を信じるの?あの子達頑張っているわねぇ)
シズクが舞っている。月花がサポートか・・・何をするんだ・・・?
(あら、のんびりしていて良いの?あの娘達の儀式が終わるまでに間に合わなければ、あの娘達どうなるのかしら。愉しみよぉ)
―あぁ、分かっているよ、ティア!絶対に間に合わせるさ。
(あら、気が付いたの。でもティアは私の一部分であって私ではないわ。ティアを通して世界を見ているだけ。単なる暇つぶしよ)
―それでもだ。ありがとうな。
俺は意識を集中させる。
―――フフフッ面白い人ね。これからも見させていただくわ・・・・
ティターニアの気配が消えていく。
「これで最後だわ、お願い戻ってきて」
シズクの魂の最後の1ピースがはまった。
真っ白な1枚のパズルが輝きながら人の形に変わっていった。
「月花ちゃん、ありがとう」
「シズクさん!・・・・私・・・あっ!」
急に意識が引き戻され自分の体に戻ってきた。
「月花どうだったすか?」
みんなが私を見ている。
「シズクさんは戻ってきます!」
シズクさんと私を歓声が包み目覚めを待つ。
シズクさんの胸が呼吸で上下し始めた。その間も回復魔法は絶やさない。出来ることはすべてやるんだ。
「・・・う・・うん・・」
シズクさんが目を覚ます。
「月花ちゃん、ありがとう。それにみんなも」
みんながシズクさんを囲み抱きつき泣いていた。
「シズク!!!あんた何やってんのよ!」
サーラさんだった。泣きながら凄い表情で怒っていた。
「私、レッ君を連れ戻したくて・・・」
「レッドが死んで・・・ルルも居なくなって・・・あんたまで居なくなったら私はどうしたら・・・・・」
「うん・・・ごめんね・・・」
フラフラと躓きながらサーラの方へ歩いていく。
「シズクさん、無理しないで下さい」
「大丈夫よ、月花。あなたのおかげでもう平気」
「シズク・・・あなたまさか・・目が・・・」
サーラさんが最初に気が付いた。
「・・・うん・・そうみたい。だけどみんなの魂や魔力がぼんやりだけど見えるから大丈夫。そのうち慣れるわ・・・」
「馬鹿!なんて無茶するのよ!!!」
サーラさんがシズクさんを抱きしめた。
「ふふ、無茶しちゃったみたいね。今日のサーラは怒ってばっかり」
「ゴメン。怒ってばっかりで・・・」
「いいの。怒られても嬉しいから」
突然、衝撃と地響きが洞窟を襲った。
「今度はなんすか!」
まわりを確認すると繭を覆っていた金の翼が開いていく。
「まずいっす。みんなシズクさんを守りながら戦闘準備っすよ!」
「「「りょうかい!」」」
金の翼が開き根元の部分から、漆黒の甲冑が姿を現した。
「「「・・・・・」」」
片翼の騎士だった。兜で顔が確認出来ない。
少しずつ降りてきて、地面に着地すると静かに、ただ静かに立っていた。
のんびり書いていきます。