これはあなたの物語よ
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「・・・・!、月花よ、まだ希望はあるようだ」
「私に何が出来るのよ!!!シズクさんを守れなかった私にぃぃぃ!!!!!」
泣き叫ぶ月花
「フェニがシズクの魂を繋ぎとめている。アクアと同調してフェニと連携が取れればもしかしたら・・・」
月花の瞳に力が戻る。
「今度こそ・・・アクアいくわよ」
(波長を合わせます)
(少しずつ見えて来た。ここは・・・・マグマと炎が荒れ狂っている。)
(ここは崩れかかったシズクの精神世界。主よ意識をしっかり持たねば、主が引き込まれます)
(分かったわ・・・大分慣れて来た。シズクさんはどこに・・・・まさかあれがシズクさんなの・・・それにあの鳥は・・・)
一ヶ所だけマグマに侵されていない場所に一羽の巨鳥、炎を纏った巨大な鳥が光の玉の上を飛んでいた。
(この光の集合体が主の魂です。神降しで巨大な力を使い自身がそれに耐えきれず粉々に・・・・何とか集めることが出来ましたが、完全覚醒していない私の力では主を呼び戻せません。月花殿力を貸してください)
(言われなくても貸すわ。どうしたら?)
(アクア、あなたの力も必要です)
(承知)
アクアが青い龍に姿を変え、頭と尾を重ね輪を作り生命の水で満たした。
(私が再生の炎でシズクさんの魂を燃やします。その灰を生命の泉に入れるのでセブンフルリカバリーで蘇生を行ってください。通常の蘇生魔法は効果がありませんので、シズクさんの深層へダイブして自身を遠隔コントロールしないといけません。失敗すればあなたもシズクさんと一緒に・・・)
(わかりました)
(一度しかできないので失敗は許されません。準備が出来たら教えてください)
(いつでもいいわ)
フェニが羽ばたくと青い炎がシズクさんの魂を燃やし、白い粉となったシズクさんの魂の灰が生命の泉に入れられた。
(お願いします)
(わかったわ。セブンフルリカバリー、ダイブ・リミットオフ!)
深く、深く何処までも深く潜っていく。戻れなくても良い、シズクさんを・・・・
見えてきた、あれね・・・・これがシズクさんの魂の欠片。これを繋ぎ合わせれば。
そこには真っ白なジグソーパズルが1万ピース以上あった。
(いくわよ・・・・フルコントロール!)
月花の体から無数の魔力の糸が伸びていきピースを組み上げ始める。
(シズクさん、今度こそ、今度こそ!)
――――――暗い、何も見えない・・・・
―――――感覚もない・・・・
――――そうか、子供を助けようとして死んだんだっけ・・・
―――あんな世界どうでも良かった・・・でも子供だけは・・・
―――子供には俺が見ることの出来ない世界を見てほしい。
―――矛盾しているか・・・どうでもいい世界の未来なんて見る価値も無いのに・・
――もういいんだ・・・考えるのをやめよう・・・
(・・・・レ・・・)
(・・・レ・・・ド・・)
――――・・・!
何か聞こえる。
(・・・レッ・・・ド・・・レッド・・・)
―レッド?誰を呼んでいるんだ・・・俺は村田だが・・・それはキャラネームだろ・・
(あぁ、レッド。やっと届きましたね)
―お前は誰だ。それにここは一体どこなんだよ?三途の川ってやつか。
(フフッ、この場所で自我を保てるのは凄い事よ。普通なら、ただ流れていくだけだもの)
―答えになっていない。
(フフッ答えね。私はあなたの世界で言う妖精、名は・・・そうね、妖精女王ティターニアと言うわ。この場所は魂の流れる場所、これもあなたの世界ではサンズの川って言うのね)
―で、俺はどっちに行くんだ?
(どっち、とは?)
―天国か地獄のことだよ。
(フフフッ、面白いわね。そんなものがあると思っているの?それはあなたの価値観での天国や地獄なのでしょ。働かないで笑って暮らせる場所が天国かしら?それとも死んでも死んでも生き返って殺し合いをする世界があるけど、これが地獄かしら?)
―そういうものなんだろ?悪い奴は地獄へ、良い奴は天国って感じだろ。
(あるわけないじゃない。神が何かするとでも?)
―俺の世界では、そういう考えが流行っているんだよ!
(じゃぁ聞くけど、神に祈ればあなたの大事なものが助かるの?)
―・・・・・・
(助けてくれるわけないわよ。絶対的な存在がこの世界に干渉したらどうなると思って?バランスが崩れ世界そのものが無くなるわよ。あなた達が神と呼んでいる存在は、ただ普通より力を持った上位者。不公平を作るだけの存在だわ。本当に神が存在するなら私達を見ているだけの存在よ)
―それもそうか、神が誰かを助ければ、善悪を問わず不公平になる。祈りを捧げるものだけを助けるのは神ではなく上位者だな。
(少しずつ分かってきたようね。あなたが悪い事と思っていることは、あなたの主観なのよ。相対するものが戦って勝った方が善なの?負けた方が悪?どちらにも主義主張がある。私に言わせれば善悪なんて存在しないわ。それにあなた達が仮にも神と呼ぶ者にでさえ上位者が居るわ。更にその上にも。無限の上位者の先に本当の神がいると思うけど誰も観測できないわ。観測できてしまったら、それはただの上位者になってしまうから)
―そういう君も上位者なのか?
(永遠を生きるっていうのと自分の世界では何でも出来るから上位者かもね。何でも出来る永遠って本当に退屈よ?)
―そうかもしれないね・・・宝くじも絶対に当たるし、欲しいものは何でも念じれば作ることが出来る。何かを作りたいから何かを頑張るという事さえ不要。念じればすべて手に入る・・・退屈だろうな・・・
(分かってくれたようね。私の楽しみは色々な魂の生き方を観ることよ。あなたの世界でエイガというものがあるでしょ?そんな感じよ)
―分かったよ。で、俺に何の用なんだ?
(それよ、あなた何も覚えていないの?)
―何が?
(レッドとしての記憶よ)
―ゲームだろ、そりゃ若い頃寝ずにやっていたよ。それを今どうして聞く必要が?
(あなた面白いわね。質問していいかしら?)
―何?
(魂ってなに?)
―そりゃ、意思を持っているかな?
(フフフ、そうなんだ)
―何がおかしいんだよ?
(いえ、じゃぁ質問を変えるわ。あなたの言うゲームのキャラに意思があったのなら、それは魂があるってこと?)
―それはゲームだから魂があるわけないだろ。
(もしあなたの世界の箱の機械が意思を持っても魂とは言わないのね?)
―箱の機械ってPCのことか。機械に魂があるわけないだろ。
(おかしいわね、あなたの世界には八百万の上位者が居るはずじゃない?鉄の上位者とか土の上位者とか他にも色々。太陽神なんてのもいるんでしょ)
―それはおとぎ話だろ。
(誰かが観測したから話が残っているのではなくて?初めは魂が無くても人々の思いで後から魂が出来るとしたら?)
―あぁ、もう分かったよ。何にでも魂は存在する、これでいいんだろ。
(別に信じなくてもいいわよ。話が逸れたわね、あなたレッドの記憶を覚えているかしら?)
―だから、死ぬ前の日までプレイしていたよって何回言わせんの。
(そう、すべて忘れてしまったか、記憶に封印が施されている・・・とすると誰が?)
―何を言っているんだ?
(いいわ、私が思い出させてあげる。それくらいは干渉出来るはずだから)
暗闇だったが少しずつ景色が見えた。最初の街ミズールが見えてきた。
―ゲームスタートのオープニングじゃないか。
(いいから見ていなさい)
公園が見えてくる、早朝だったのか人がいなかったが子供が一人倒れていた。
俺の子供の頃そっくりだった。
―なんで俺が居る・・・?
(これから見ることは、本当に起こった事よ。あなたはきちんとこれを見て観測しなさい。そうすれば道が開けるわ)
子供の俺がレッドを名乗り孤児院で生活を始めた・・・・・
(そう、これはあなたの物語よ・・・・)
やっと目標の100回に到達しました。
読んでいただいている皆様に感謝です。