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少女の闇とトカゲの一族

大通りから外れた路地裏に少女とトカゲ族の男がいた


「娘、何故オレを助けた?」

男は仮面を外して言った


「あなたが困っていたからです」

少女は笑顔で答えた


「お前があの者たちに向けた目には殺意が宿っていた。憎悪、怒り、復讐、呪いの感情がな」

しかし、今の少女には、そういう感情は欠片もみあたらなかった。

「あのルーと呼ばれていた男、彼を私は知っている」

少女の目にまた怖い光が宿る

「トカゲ族のあなたにはお話しします。」

少女は自分の過去を語る

「私は光の司祭の家系に産まれました。」



少女の父親は光の神を崇める信仰の司祭だった。

少女は生まれながらに陰の属性を宿していた。

もちろん、それは信仰者からは異端扱いされる。

陽の信仰者たちには過激派も多くいて陰の属性を悪いものと決めつけているものも少なくなかった。

当然のように司祭の立場の親からは疎まれ、3歳になる頃に少女は捨てられた。


少女には年の離れた兄がいた。

兄は親の言い付けで少女を川に流した。

「せめてこの子が生き延びて幸せな未来がありますように」

そう言うと小さな石のお守りを添えた

石には小さな穴が空いていてそこに紐がとおしてあった。


やがて少女は川のほとりに暮らすトカゲの姿の亜人に拾われた。

そして少女はトカゲ族の暮らす隠れ里で育てられた。

少なくとも少女は彼らと暮らせて幸せだった

村の者全てが大事にしてくれたし皆優しかった。

彼らの先祖たちは竜の信仰者とされ人間の世界から追放され、隠れ里を作って暮らしていた

神への信仰を捨て、登り来る太陽と夜を照らす月を大事にしていた。



ある日少女が目を覚ますと外が騒がしかった。

少女が外に出ると村のあちこちに火が放たれていた。

よく見ると剣を持った人間達が村の者を襲っていた。

そして少女に気付いた者が刃を向ける


村の者が少女を抱きかかえて村の外に走った

なんとか難を逃れたように思えたが、追ってが直ぐ迫っていた。

少女を抱えていたトカゲ族の者は切りつけられていてそう遠くには行けなかったのだ。


少女の目の前でトカゲ族の者は首を切られた。


少女はどうしてよいかわからなかった、何が起きたのか、何故目の前で村の者が襲われたのか、状況が理解出来ずにいた。


そうしてただ祈った。別れ際に兄に持たされた御守りを握っていた。

ただただ祈った。

どうか、助けて下さい!


少女に斬りかかっていた男がその場に倒れる


少女が目を開けて顔をあげると、辺りは夜のはずなのにまるで昼間のように明るく見えた。


少女が眩しくて目を細めているとそこに一匹の獣が現れる。

四本足で歩き、尾の先にはフサフサの毛と、頭には雄々しきたてがみがはえていた。

大きさは約2メートル位だろうか。

「我は太陽の獣である、古よりこの世界に生きるものだ」

太陽の獣は少女の持っている御守りを渡すように促した


「あの人達は何ですか?どうして皆殺されなければならないのですか?」

少女は怖いのか悲しいのか、自分の今抱いている感情がわからなかった。状況についていけないのだ。

ただただ目からは涙が溢れてくる。

「あの者たちは陽の神を信仰するもの、この石を探してここまで来たのだ」

少女は絶望した。


じゃあ、自分のせいではないか!

村が襲われたのも、皆が殺されたのも自分が全部悪いんじゃないか!

「私の、私が!私が皆を殺したと言うのか」

やっと声を絞り出したその声はやっと発音されるほどに、少女は絶叫していた。

御守りとして渡されていたその元凶の石を獣に投げつけていた。


そして少女の目には怖い光が宿っていた

絶望、失望、悲しみ、憎しみ、殺意


憎かった、己を捨てた親が、亜人を追いやった人間が、石を渡した兄が、自分の運命を知らずにこの村であほ面して育てられた自分が!

「憎い、憎い!憎い憎い憎い憎い憎い憎い‼️」

少女は自分の作り出した暗闇に飲み込まれていた。

元々光の司祭の家系の少女

光が強ければ、産まれる闇も暗く深いものになる。

少女の持って生まれた陰のマナは強大なものだったのだ。


体が深く沈んでいく感覚があった

目を開けているはずなのにそこは完全な黒の世界

ひたすら沈んでいた。


「フーリン」


声が聞こえた、少女の名前であった。

トカゲの姿をした彼らがつけてくれた名だった。

「フーリン」

少女は声のする方を見た

この暗闇の世界で光が見えた。

月の光であった

光に手を伸ばす

気がつけば元の場所に戻っていた。

太陽の獣はいなくなっていた。


フーリンは村に戻った。

村にはまだ火が着いていて村人の死体が転がっていた。

襲ってきた連中はいないようだ。


隠れていて助かったもの達がまだ息のあるものを探して歩いていた。


自分が招いたこと、彼らにどんな顔をして会えばよいか、フーリンはその場から逃げ出そうとした。

「フーリン」

また呼ぶ声がした。

フーリンは声の主を見た。

「良かった、無事だったんだな」

声の主はフーリンを拾い育てた者だった


「私、私は、私のせいで村が襲われたの!皆が殺されたのは私のせいなの!私さえいなければ!」

彼女はその場にうずくまるようにして叫ぶ


「ならば、あの日お前を拾った私に責任があると思うか?私は思わない、あの日お前を拾い今日のこの日までお前を育てたことを誇りに思っている!例え誰にうらまれようと、例え誰に憎まれようと、もしその行いが村を壊そうと私はあの日の私を誇りに思っている!」


村人達が続ける

「俺たちはこの姿を憎んだことはない、俺たちは自分達の境遇を恨みはしない!自分の姿がトカゲであること、例え疎外されようが誇りに思っている!」


少女は泣き崩れていた


「私は、お前を誇りに思っている、もし、自分に失望したなら私のつけた名前を思い出せ、もしお前が自分を恨むのなら私を思い出せ。私の誇りよ。この村の誇りよ。お前を育てたことは私の誇りだ、その名前は私の名誉だ!」


朝日が登り彼女を照らす

気がつけば倒れたはずの村人達が全員起き上がり彼女の方を向いていた。


「月は太陽の光を受けて光る、今のお前のように、だから私達は迷わず行ける、お前が我々の進むべき道を照らして暮れるからだ」


フーリンには何の事かわからなかった


「近くの川を下りなさい、気のいい人間達が暮らしている、その名前を言えばきっと良くしてくれるだろう」



今までフーリンを見て立っていた村人達の姿はどこにもなくなっていた。


自分は一体何を見ていたのだろうか?

しかし、少女は歩きだした。

川を下り丸一日歩くと、そこには村があった


村の者がかけよってくる、彼女は自分の名前を告げた。

そして、村に起こったことを話した。


村の者たちは優しかった、以前からトカゲ族とも交流があったようでフーリンのこともよく知っていた


そして、あの日の光景を皆に話した。

自分が何を見たのか知りたくなったのだ。

あの日のあの朝の光景を。


「それはマナが強く宿していた思い、記憶等が見えたのだろう、昔この辺を訪ねてきたソウリョの言うところには魂らしい」


それらの者達が信仰している神様の元に導かれるという


「ならばお前は彼らにとっての信仰の対象だったのかもな、さしあたっては月の女神様と言ったところか」


そして少女はこの村で歴史や信仰、竜の事などを学び、成長していった


そうして彼女は新たな信仰を作る

何の神を信仰していようと自由に信仰して良い事にし、自らを月の女神と名乗った


確かに彼女は真っ暗闇のなかにいてもその姿を見失う事なくハッキリと見える


彼女の陰の魔法は特殊で村の者達も彼女を信仰していた。


そうして彼女はおよそ16才になったころ村をでて旅をする、自身の信仰を集めるために。


しかし、16になっても身長は伸び悩み未だに130センチ位である。

年よりだいぶん幼く見られた





なるほど、と話しを聞いてトカゲ族の男また仮面を着けて言った

「残念だがオレはトカゲ族ではないんだよ。

元々人間でね」

男はランスと名乗った、


彼は神様に呪われていた



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