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東の町にて隣村の黒い霧の怪を聞く

街道を抜け無事町に着いたニニギとカラス

町では入口に門があり見張りの兵士が何人か番をしていた

「おい、君!この街道を来たのか!運がよかったな!ここは今すごく危険なんだ、巨大なサイクロプスがうろついていてね、よかった、もし出くわしていたら命はなかったぞ」

兵士の一人が驚いた顔をして話しかけてきた


「さいくろ?あぁ途中の一つ目巨人のことかなぁ?確かにめちゃくちゃ強かったねぇ」

兵士がさらに驚いた顔をしていた

「鳥が、しゃ、しゃべ、喋った!」

回りの兵士も騒ぎを聞きつけ集まってくる

「皆さん落ち着いて下さい、この子はカラス、人の言葉がわかる珍しい鳥なのです、それにその、さいく…一つ目の巨人は私たちが退治してきました、安心してください」

兵士たちはみな驚きを隠せないようだったがしばらくのどよめきの後に歓声が上がった

ニニギたちはこうして英雄さながら町に迎え入れられた



町ではサイクロプスが倒された話しが瞬く間に広がりなかばお祭り騒ぎになっていた

町のものはみな英雄を一目見ようと回りに集まってくる


ニニギ様、今日は私の宿に泊まって下さい!

英雄様、どうか私の店で食事を!

そんな声かあちらこちらから聞こえてくる

ニニギが呆気にとられていると一人の男性が歩みよってきた

「みな静かに!」

男が言うと今までの騒ぎも少し落ち着いたようだ

「私はこの町を治める領主のダーヤマと申します、このところ一つ目の巨人が街道に現れるようになり困り果てていました王都にはあの道を通るしかなく騎士団に助けを求めることもかなわなかった、英雄ニニギ殿改めて礼を!ありがとう、本当に、心から、ありがとうございます!」

町民からも口々にお礼が聞こえてくる

「今日はもう遅いです、我が屋敷にてもてなしをさせてください」

ダーヤマは深々と頭を下げていた

「顔を上げて下さい領主様、今日は確かに疲れました、お言葉に甘えさせてもらいますよ」

ダーヤマは大きな風呂と出来るだけ贅沢な食事でもてなしてくれた

「すいません、こんなものしかお出し出来なくて、ご存知の通りあの巨人が現れてから隣の村とも行き来できなくなってしまい物流も止まってしまいました」

町のものたちも今は苦しいのです

「そうだったのですね、いえ、こんな贅沢な食事感謝します」


なるほど、とニニギは思った

自分たちをもてなすには町の負担が大きくなる、それで町民の声を遮ってここに招いて下さったのだと

しかし、この領主も町民もお人好しだらけだ



夜が明け目が覚めるころ、屋敷の前では領主と町民が騒がしくしていた


「おはようございます皆さん、こんな早くにどうなさいましたか?」

「ニニギ殿!いやしかし」

町のものの何人かはニニギにすがるような眼差しをむけていた

「何かお困りのようだねぇニニギぃ、領主様話をきこうじゃないかぁ」

しばしの沈黙のあとダーヤマは静かにに言った

「今朝早く隣村にむかった者が黒い霧に覆われて村に行けなかったのです。」

ニニギは表情を変えず聞いていた

「この辺りは神聖な湖があり強い信仰を持ったエルフたちのお陰であのような強い怪物は今までいなかったのです」

今度はニニギも難しい顔をしていた

「なるほどです、私たちは湖のエルフを訪ねてきたのですよ、何か悪い者の力が働いた可能性が強いですね」

ダーヤマは表情をゆるめて静かに微笑んでみせた

「ニニギ殿、エルフの訪問は少し先伸ばしにされよ、馬を走らせて王都に助けを求めています、2~3日もすれば王都から騎士団が派遣されましょう」

今度はニニギが満面の笑みをみせる

「相手は用意周到です、目的は分かりませんが王都に助けを求めることは失敗する可能性が高いですね」

ニニギにはダーヤマの笑みの意味がわかっていた

強がりだ、弱さをみせると自分たちに迷惑をかけることになるだろう、負担をかけたくなかったのだ。

「それにそういう事ならば私たちは余計に急がねばなりませんよ、もはやこれはこの町と村の問題ではないのです。私たち自身の問題なのです!」

今度は困った顔をして引き止めようとするダーヤマに一晩の礼を言って屋敷をあとにするニニギとカラス、向かうは隣の村の黒い霧だった



隣の村との物流がとまったがため町はあんなにも苦しんでいるのに強がってみせたダーヤマの微笑みを思い出していた

「オジサンの微笑みは気持ち悪いものですね」

ニニギは独り言を呟いた

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