表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/70

勤勉な変わり者①

こんにちは、皆さん。

俺の名前はレイブン。本名は烏丸衣世玖。所謂、異世界転移者だ。

召喚されたのは3年前の夏だった。此方の世界に来て、知ったのは人がいて、魔物がいて、魔族がいる。勿論、植物も、動物もいるし、昆虫も。俺の世界より、幾分多い種族がいるだけだが、危険は格段に上がる。そして、この世界に有るものは、何らかの粒子を纏っている。色、量も様々だが、これが見えるのはどうやら俺だけのようだ。魔力に溢れたこの世界は、俺のいた所と違って科学は発展していなかった。その代わりに魔法が在り、その力がすべてと言っていい。魔法をうまく使えない人は、魔力を結晶化して魔方陣を附属した魔石を使っていた。俺は文字は読めないものの、聞き取ることは何故か出来て魔法も使うことが出来た。魔法に至っては、目に見える粒子に少し手を加えるだけだ。そして、召喚されたは良いが、説明のないまま魂に刻まれた使命を果たすべく放浪し続けた。そのうち、文字も読めるようになり、旅に困らなくなっていった。さ迷い続け、魔物、魔族はたまた魔王を倒しいつの間にか勇者になっていた。誰からの説明もなく、ただただ生きていく。いつか帰るその時のために。かっこ良くも、潔くも、ましてや正義なんかの為じゃない。

ある日、魔力の流れを追いかけて、それほど大きくも豊かでもない国にたどり着いた。そこの小さな町の小さな酒場兼宿のごった返した店のなかで、男と知り合った。彼、カイルは魔王を探していた。物好きだな。そう思っていたけれど、膨れっ面で嫌々なのに、真面目で人の良いカイルが心配になった。俺がニコニコ笑うと嫌な顔をする。視線を外すし、ぶつぶつとなにか呟く。王がどうとかこうとか…。何をいってるか今一理解できなかった。なんとなく、年も近いし、顔色の悪いカイルに着いていった。そして、魔王と出会いいつもの様に命のやり取りを開始。ところがカイルにうまーく太刀筋を変えられ、初激は不発に終わってしまった。魔王のターン。かと思ったのに反撃は来なかった。その代わり、カイルにめちゃくそ怒られた。スミマセン。

よくよく話を聴くと、王様の命令で魔王を探していたらしい。スライムのために。

…スライムのためにだ。

スライムってあれだ。俺が此処に飛ばされてから、初めて戦ったやつ。そこら辺に落ちてたよさげな棒でむにゃむにゃやって倒したやつ。此方の世界でいっちばん多く倒したやつだ。

なぜだか王はスライムにいたくご執心の様子。魔王に話を聞こうとするぐらいに。俺の魂には、敵敵と訴えかけてくるが、彼らには違うらしい。困ったことに。そして魔王にとっても、彼らの存在は珍しいみたいだ。幼い子供の姿なのに、ひどく年寄りじみた笑顔を向けて話に乗っていた。嗚呼…心配だな…。なので、あれこれ理由を付けてくっついていくことにする。

そこで、王様を見た。

それほど、背は高くないが、キラキラの白金の髪を後ろに一まとめにしている。エメラルドのような瞳。すげえ。これぞ王って感じだ。勇者と呼ばれるようになってから、何人かの王と謁見したが、高貴風貌はダントツの一位かもしれない。思わずみとれていたら、カイルに脇腹をつつかれた。我にかえって頭を下げた。

王は、魔王ザラと話したあと、俺に向かい頭を下げた。

「勇者レイブン様。良くおいでくださいました。あの、お時間があれば旅の話などお聴きしたいのですが、明日お時間いただけませんか?」

平民の俺に頭を下げた王もこれが初めてだった。

大抵の王は、困ってにっちもさっちもいかなくなって、やっと頭を下げるのだ。その他は、こちらが膝ま付くものだと信じて疑わない。変わった王だと思った。カイルの話では、スライムのこと以外はいい王だと言っていたが違う意味で心配になる。王の虚勢も威厳も政治の内の1つなのだから。侮られないか他人事ながら心配だな。

すると、上目使いで俺を見てきた。男の仕草としてはどうかと思うが、

「レイブンさんと呼ばせていただいてもいいですか?」

整った顔の破壊力半端ない。こくこくと頷くとキラキラの笑顔で嬉しそうに小さくやった、っと呟いて喜んでいた。やっぱり変わっている。

そして、カイルに向かい大きく腕を広げて、お帰りとハグしようとして避けられていた。この人そっち系?と心配になったら、

「カイル!」

そう叫んで現れたひとりの美少女。ブルーがかった銀髪にアイスブルーの瞳。恐ろしく整った顔は冷たい感じを受けるが、間違いなく美人だ。

「王妃様!」

カイルの嬉しそうな声にビックリした。王妃?じゃあ、王の嫁さん?

そう考えていると、王妃はカイルに抱きついた。え?ちょっと待てよ。それ不味くないか?王の嫁だぞ嫁。俺の方が硬直してしまう。思わずぎぎぎっとぎこちなく王様を見るとニコニコ笑っていた。なんなんだ?ここはそんなにオープンな所なのか?はてなマークが次々と飛び交う。

抱きつかれたカイルは、流石に王妃に腕を回すことはなかった。

「王妃様、お陰様で無事戻って参りました」

カイルはにっこり笑いながらいい、ザラと俺を紹介した。ザラを見た王妃はその場でぴょんぴょん跳びはね、可愛い可愛いを連発している。余程琴線に触れたらしい。ちょっと引く。ついでに俺を見てめを丸くした。随分表情豊かだな。そして俺の手を取り

「レイブン様、カイルを助けてくださってありがとうございます。ユリウスのわがままのせいで、ご迷惑をかけて申し訳ありません」

と、頭を下げた。随分腰の低い王族ばかりだ。大丈夫か?この国。

無言で王様の後ろに大男が立っている。きりっとした顔付きがやたらとカッコいい。目が合うと僅かに頭を下げた。そして、王様に耳打ちした。

「ん?おおそうか。そうだよな。」

何か納得したのか頷き大男に何やら指示を出している。

「レイブンさん。お疲れでしょう。今部屋の用意を至急させますので、夕食までの間ゆっくりなさってください」

どうやら、大男が気遣ってくれたらしい。やだ、凄く男前だ。

礼をのべる。


部屋の用意が整ったと言われて大男が俺を促した。彼は、俺を部屋まで案内すると、部屋に入る俺に頭を下げた。何事かと驚いていると

「俺は騎士団団長のアルフレッドです。部下のカイルが大変お世話になりました。」

ああ、そういうことか。カイルは随分愛されてるな~感心する。こっちに来てから、一番ほっとする。良いな、こう言う関係。暫く忘れていた気持ちだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ