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幸せになりたい

辻褄が合わないところが有るかも。

ごめんなさい。

嗚呼!とうとうオリビアが結婚してしまう!

分かってる分かってるの!大切な人と愛し愛される、その喜びをオリビアにも知って欲しい!私だってそうだった。苦しくても悲しくても、レナードと出逢えて結ばれた事に一遍の悔いも後悔も無い。

本来私はこの出来事を心から、祝ってあげなければいけない。でも、でも出来ないの。オリビアを失いたくない。頭の中がごちゃごちゃして、心の中がざわざわして、子供の様に泣いてしまった。

私の鳴き声に驚いたユーリが執務室から、恐る恐る顔を出した。そして私の顔を見た途端びっくりして駆け寄ってきた。

「ヴィヴィどうしたの?何があった!?」

ユーリは私を抱きしめながら聞いてきた。

「っひっくっ…オ、っひっオリビアがあぁ…げっ…げっこん、結婚しちゃうよ〜」

私は、抑えられなくて、ユーリに縋って泣き続けてしまった。ユーリが優しく背中を擦ってくれた。

「ああ、そうか…ごめんね…。ヴィヴィ寂しくなったんだね。」

ユーリの声があの人そっくりで、余計に泣けてきた。泣くだけ泣き続け、やっと落ち着いたら、側でオリビアとライリーが心配そうに見ていた。オリビアが走り寄ろうとしたら、ユーリがそれを止めて、

「ヴィヴィと二人で話が有るから…。」

と私の肩を支えて歩き出した。向かう所は、後宮。私には余りいい思い出の無い所に、連れて行かれた。後宮の一番奥、本来メイド達が使う部屋に通され、休憩に使う様な椅子に座らされた。

「僕はね、クリスティアだけと決めてるから、ここは殆ど人が居なくて、居ると言えば執事のヨミ位で…。彼は眠る事に命を掛けてるから、人が来ない様にここに結界が有るらしいよ。知らないけど…。」

自分も質素な椅子に腰掛けてユーリは私をじっと見た。

「王様が亡くなってもう5年経ったね。…誰ももう王様の事を覚えてる人はこの城には居なくなったんだ…。」

余計に悲しい話だった。

「ねえ、ヴィヴィは王様の何処が好きだったの?顔?それとも、性格?」

そう言われ、何処かしら?思い出そうとする。けれど、どうしてか顔を思い出せない。性格は優柔不断よね?縁談断われ無い人だったし…そう…。顔を思い出せない。どんな人かは分かるのに!私は薄情な人間なのね!?

「ヴィヴィそんなに悩まなくて良いよ。顔が思い出せないのはヴィヴィのせいじゃ無いから。」

ユーリが断言するが、そんなはず無い。あんなに好きだったのだもの。分からない何て、どう考えても私がもうあの人を過去だと思ってるからだ。思わずぎゅっと手を握り占めると、優しく私の手を包んでくれるユーリがいた。

「本当に、心苦しいのだけど…」

ユーリがそう言い、ちらりと私の後ろを見た。誰か居るのかと私は振り向いてしまう。そこには、執事の服を着た男が立っていた。

「ヨミ仕事してよ。」

ユーリがヨミと呼ばれた男に声を掛け、立上り部屋を出ていった。初めて会う男と残された私が狼狽えて居ると、男が手袋を脱いで左手を差し出した薬指には、金と黒いダイヤが散りばめられた指輪が嵌められていた。

ひゅっと思わず息を飲んでしまう。それは私とあの人の大切な…。

「何故…何故貴方がそれをしているの…だってそれは…あの人と一緒に…埋葬された…そうよ!何故それを持ってるの!返しなさい!それは私とあの人の物よ!」

そう私が叫び、男に飛び掛かろうとした。感情が抑えきれなくて、炎が私から漏れ出てきた。けれど私の炎は男に近づくが躊躇う様に揺れている。

「ヴィクトリア…ふっ…君は相変わらずだね…。その強さ、優しさも、美しさも…私は何時もそんな君に惹かれてばかりだ。」

男がそう告げ、手を不意に上げた。上げた手が下に下がると、除々に影の様な煙が霧散して男の顔が顕になる。

「何故…何故なの…。今まで貴方の顔を忘れていたのに…何故…。何故ここに居るの?」

現れた顔は、レナードだった。死んだ筈の彼が何故生きているのか?ユーリは知っていた…?本物なの?私の中の謎は深まり今にも破裂してしまいそう。誰か助けて…。

「驚かせたよね…ごめんよ。僕はご覧の通り、生きている。ユリウスがこの国を治めるとき僕は邪魔になる。だから死んだ事にしたんだ。魔法を掛け、自分の姿を変え続けた。けれど思ったよりも、魔力を喰ってしまって、寝続けないと体が持たなかった…。ユリウスに役立たずと言われながらも、君と生きて行ける道を探していたんだ。…それとも、もう好きな人でも出来てしまっただろうか?」

一気に言われたが分かった。そうこの人レナードはヤッパリ自分勝手な人だった…。

「…貴方が亡くなったと…聞いた時の私の気持ちが分かる?どんなに逢いたくても…逢えなかった私の苦しみが分かる?」

私の怨み言に、ただ黙って耳を傾けるレナードだった。

1時間弱私の気持ちを伝え終わると、レナードは素直に謝ってくれたが、ちょっと納得がいかない。だって、オリビアとライリーは何だかんだ言っても素敵だったからだ。

「僕はね、死んだ事に成ってるから、この城から出れないし、地位も金もない。嫌、ユリウスがお給料くれてて、使い道が無いから貯まってはいるけど…昔ほどの生活は保証できない。で、君の国に行くことも考えた。でも、身分が無いから、君と一緒には成れないだろう?」

俯いたまま、レナードは言う。

「特に君の国はそう言うのに五月蝿いし…。他所の国に行くことも考えた。でもそうなると君を連れて行けない可能性の方が大きくなる。ユリウスに迷惑は掛けれない。」

一度言葉を止めたレナードは、私の前に跪いて、

「ヴィクトリア。僕は何も持たない人間と成った。そして名前もヨミと変わったんだ。もしそれでも君が構わないなら、どうか何も持たない僕ともう一度一緒に成って欲しい。僕の最後の我儘に付き合ってくれないか?」

そう懇願してきた。

「君は嫌かも知れないが、この後宮で唯の執事のヨミの妻となって欲しい。どうか僕と結婚してください。」

レナードはグズグズ言っていたが、最後は、はっきりと言い切った。嘘みたいだが嬉しい。跳び上がりたい気持ちを抑えて私は鷹揚に頷き、

「いいわ。結婚しましょう。そして今度こそ私を幸せにしてください。」

そういうと、と溶ける様に笑ったが、その瞬間私は、叫んだ。

「この後宮を改造して、オリビア夫婦と、我が家とで一緒に暮らすのよ!それが駄目なら、合同の結婚式を挙げましょ!オリビアとお揃いのウェディングドレスを着てユーリに見せ付けてやるわ!ついでにクリスティアにもウェディングドレス着せるなんてどうかしら?ユーリ卒倒しちゃうかも!」

ええぇ〜、と言うレナードだったが、楽しそうに笑っている。ああ、凄く落ち込んだのが嘘みたい!こんな素敵な事が有るなんて!神様ありがとうございます。私絶対オリビアに素敵なウェディングドレスを着せてみせます。



お姉さま方を早く幸せにしたくて急いでしまいました。すみません。

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