人とは?魔王とは?
廊下の左手2番目の扉をゆっくりとザラが開けると、綺麗な光に満ちた魔力の波が廊下へと広がった。微かな土と苔むした様な匂いが鼻腔を擽る。
そこは普通に庭園だった。ハーブや、見たことのない花が咲き、小鳥が囀ずっている。仄かに暖かく空気は清んでいて過ごしやすい。出てすぐに滑車付きの井戸がある。側には2つ桶があり少し離れたところに、如雨露があった。桶には柄杓が入っている。
どこをどうみても唯の庭園だった。思わず俺は 、
「フツウ…。」
と声が漏れた。何を期待していたと聞かれれば、やはりダンジョン的な物。繋がってると言われた、ザラの住居は、変哲が無さすぎる。ちょっとガッカリしたこの気持ちは隠せなかった。
「おい。何妄想してたんだよ?」
そう言いながら、カイルに肩を小突かれた。思わず、笑いが漏れる。
「いやぁ~今まで出向いたダンジョンのイメージがあったからさあ~」
そう言うと、ああと、カイルにクリスティア様まで頷いた。
「そうですね。レイブンさんは他の魔王様の所には行った事があるんですものね?…。」
そう言いながらも、どんなところを想像しているのか…。
「…やっぱり気になります。他のところはどんな感じでした?」
瞳を輝かせクリスティアは前のめりで聞いてきた。カイルにドウドウと押さえられている。王妃の扱いが酷い。
「大抵は、洞窟の様なところを抜けて、王城に出る。魔王によって色々だけど、城の造りはその魔王の本性とか、核の気性によって違うかな。」
俺がそう言うと、ふーんと気の抜けた返事が返って来た。興味無いのかよ!突っ込みたいのだが?
「じゃあ、ザラちゃんの核はずいぶん穏やかな性質ですね?」
そう、ザラに話を振っている。けれど、ザラはふるふると首を横に振った。
「これは、友の趣味だな。奴の過去の実家を元にしているそうだ。」
ああ、そうか。人の住みかって、そうだなと、思った。城の庭みたいだ。
「ザラちゃんのお友達は優しそうな方の様な気がします。」
そう、クリスティアがニコニコしながら言ったが、首を捻りながら、ザラは答えた。
「うーん、いや、違うな。あれは、魔法の為なら悪魔に魂を売るやつだ。実際初めて会った時、取引を持ち掛けられたしな。」
そういい、自分で納得したように、深く頷き、はっとする。
「ああ!ユリウス!そうか、ユリウスに似てるかも知れない。自分の欲望が片寄っていて、それに抗えないところがそっくりだな。」
納得したように頷いている。それに合わせて、クリスティアと、カイルは遠い眼で「そうですね…。」と答えた。思わず、にひにひと笑ってしまった。
壊れた人形の様に、こちらを見る二人はとても恐ろしい。
「…いやだって、そのお陰で今があるからさぁ。いいかな?って思って。」
そう言えば、ザラも頷いた。
「興味深いな、人間の性と言うのは…。」
歩みを進めながら、ザラは呟いている。
進んだ先には、ガラス張りの温室があり、その中に入りザラはクリスティアに、
「クリスティアは料理が出来るだろう?ここにある野菜やハーブは自由に使っていい。私は食事を必要としなかったから、ここではクリスティアが料理長だ。」
そう言われているクリスティアを見れば、瞳がキラキラと輝いていて…。大きく頷き、
「任せてください!カイルも、レイブンさんも楽しみにしててくださいね!」
力強く俄然やる気のクリスティアに軽く引きながら、よろしくお願いしますと頭を下げておく。




