花の咲いた家に行こう
今回、クリスティアのお出かけです。
凄い凄い信じられない。
大きな森の中にポツンとその家はありました。
ザラちゃんの魔法でひとっ飛び!吹き荒れる風の渦が収まると共に現れたのは、可愛らしいけれど立派な家です。
家の周りは開けていて、草原が広がっています。その草原を覆うように、木々が立ち囲っていました。静まり返っていて寂しいところ。鳥の囀りさえ聞こえないのです。
けれど、日差しが差し込むと暖かく、空気も澄んでいて居心地がいい。
程よい大きさの家の屋根には、見たことのない植物が花を咲かせていて、花の咲いた家…尊い。是非とも近くで見てみたい。
「ティア声が漏れてるよ?」
ザラちゃんの引き気味の声に我に返りました。ああ~漏れてましたか、申し訳ありません。これじゃ、ユーリの事を変態等と言えなくなってしまいますね?
「そうですね。」
カイルが頷きます。
あら、この声も漏れてるのね?私どうやら、テンションが爆上がりのようです。
「ちょっと帰って無いうちに、屋根にフキヤが生えたな…。」
ぼそりとザラちゃんの呟きが聞こえました。フキヤとは何ですか?知らない植物はまだまだ有るようです。
「そういえば、前に来たときはこんなの生えてなかったな?」
そう言えば、レイブンさんは前に来たこと在るんでしたね。ズルイです。
「中に入ろうか。」
ザラちゃんの招きで、お家にお邪魔しました。
扉を開けば、何かの魔法が発動したようですが、スッと流れ出て直ぐに分からなく成りました。一体なんなのでしょう。すると、ザラちゃんが教えてくれます。
「今、時縛りを解いたから、ここから、この部屋は時間が進む。人も生きていけるだろう。」
ええと、時間の魔法ですね?しかも人が生きていけない感じの?
「嫌、生きていけないとは、何て言うか、違うかな?そのまま氷漬けになる感じ?」
どうやら、またもや心の声は漏れていたようです。
家の中は、見た目に反して広いです。色々な薬草が干されていて、独特な薬の匂いがします。薬品に使うのか、実験用の備品もかなりありました。きちんと棚に並べてあり、大切に使われているよう。
そういえば、この辺に水場がないのに、どうしているの?
「魔法を使っているし、庭に井戸があるのだよ。」
私はもうだめかな…。思ったことがすべて筒抜け見たいです。
「庭?庭なんてないだろう?家の周りは草原だけじゃないか?」
レイブンさんが不思議そうに聞いています。確かに庭を見かけた記憶がありません。離れたところにでも在るのでしょうか?
「こっちだ。」
そういい部屋の奥の廊下に案内してくれる。両脇に扉が四つあり、突き当たりにも一つあるみたい。意外と広いお家だった様だわ。
「へー。空間を歪めてるのか…。」
レイブンさんが呟き、珍しそうに見ています。
「ダンジョン以外でも応用出来るんだな。これは便利だな。」
そういい、一人納得している様です。そんなレイブンさんの脇腹をカイルが突き説明を求めていて、ナイスですカイル。
「ん?ああー、魔力で本来の空間とは別に圧縮した空間がここにあるか、別の場所に繋がる様なってるかのどちらかだな。」
レイブンさんは自分の前で手を合わせ、ぎゅうぎゅう押す真似をしたり、手をずらして色々説明してくれました。
「別の場所に繋がってる。本来の居場所だったところに繋がってる。」
ザラちゃんはそう言い、左手の二番目の扉に手を掛けました。
「ここの家は、本来シルバの家。そこに私が来て4…5…6…」
むむむと、いつになく考え込むザラちゃん可愛い。
「もうすぐ、六百年位になるかも。」
そう、言い換えた!よく分からなくなったんだね?長いものねその年数。でもそのシルバさんってもう亡くなっているのでわ?
そう思うと、なんだか悲しくなった。お友達と言っていたし…。
「シルバは生きているよ。今は旅に出てるだけ。二年前に手紙きた。」
えええー。約六百年前にここに来たんですよね?その時もうシルバさんの家だったんですよね?シルバさんって何歳?それとも子孫の方?人じゃないの?聴きたい事が溢れ出す。
「シルバは人科に属している。けど、普通の人とは違う。魔力に魅せられ自身の領分から逸脱した、魔法使い。人の間では確か…。変な渾名が付いてると嘆いていたな…。何だったか、忘れたけど。深淵を覗いたどころか、深淵にどっぷり浸かって今だそのままなんだ。」
珍しく饒舌になっているザラちゃん。余程大切な方と見受けられます。ちょっぴりジェラシーです。
「そうなると、時間もあやふやで、今のところ長生きしているな。これから分からんけど?」
最後の方が投げやりですが?何かあったんですか?