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二人と一体


 レイブンの言うところによると、この女の子が、魔王だそうだ。

 俺は思わず頭を抱えて絶叫した。

 「くそ!骨まで溶けろ。バカ王」

 俺の叫びに、レイブンも女の子もびくりと体を震わせる。レイブンはおろおろと俺にいい募った。

 「ほっ、本当だぞ。子供に見えるが魔力が半端ないんだぞ。俺なんてね、さっきからビリビリ来てるんだけどぉ。」

 なんで、最後の方可愛い感じにいってんだ。キモい。例え、何者だろうと、とりあえず話ができるならコミュニケーションとるべき。騎士として、人として。

 だいたいこのちっこくて、ほわほわのくりくりのきらっきらのお子様が魔王って。俺が困りきってると、少女が話しかけてきた。

 「どうして?ここに来たの?ダメってあんなに忠告してたのに。」

 あ、看板立てたお方は貴方ですか?とても分かりやすい道案内でしたね。思わず遠い目になった。

 「私の力強いよ。でも、シルバが人と争っちゃダメっていうから、わざわざみんな来ないように立てたのに...」

 がっかりしている。気の毒だな。

 レイブンまで、何か項垂れてるし。あんたさっきの勢いはどうした。気を取り直して俺は言う。

 「君が魔王なら、お願いがある。」

 そういうと二人の目が鋭く俺を睨み付けた。

 「おい。魔王なんかに一体何のお願いだ。」

 「そう。私に願いなんて、ろくでもないこと。」

 二人の息ぴったりだ。

 「願いがあるのは、俺じゃない。俺の主がちょっと話が聞きたいので会いたいそうだ。」

 そう伝えると益々怪訝な顔をする。ですよね?怪しいですよね?わかります。とても良く。罠か?それとも世界征服でも夢見てるのかってね 。

 でも違います。思わず、ボソボソと答えてしまう。

 「はぁ?」

 「えっ!」

 レイブンには聞こえなかったが、魔王には聞こえたらしい。

 「えっ?今なんていったんだ?」

 疑問で一杯のレイブンに比べ、驚愕の表情が浮かぶ少女が叫んだ。

 「スライムに埋まりたいからスライムのこと教えてですって!なにそれ!!」

 益々項垂れる俺と、ぎょっとして魔王を見つめるレイブン、開いた口の塞がらない少女。微妙な空気。王様の爽やかな笑顔が浮かんだ。sine。

 

 結局、詳しい話をするために、魔王の家のキッチンでテーブルを囲んだ。レイブンはそわそわとしていたが、見た目に反し、魔王は冷静に俺の話を聞いてくれた。

 「つまり貴方の主はスライムが好きすぎて変なふうに患っちゃってるのね?」

 魔王よ。その通りであります。大きく頷く俺を見て、少女は満面の笑みを浮かべた。何故に?

 「面白いね!色んな人間を見てきたけど、スライムにそんなに固執する人間は初めてだな。人間なんて、弱いし、脆いし、下らないと思ってたけど?うんうん面白いね。」

 なにやら、少女の琴線に触れたらしい。

 「それで、私にどうしろと?」

 それでも疑問が浮かぶのは当然。

 「スライムについて詳しくご教授願いたいとのことです。」

 ほうほうと頷く少女の様子は、まるで何百年と生きた老人のようだった。

 「でもさぁ、魔族って人間の敵だろう?」

 いまだに吹っ切れてないご様子の光の子よ、うるさい。

 「違うよ。」

 少女は答える。えっ?と、思わず見つめ合ってしまった俺とレイブン。

 「別に、敵とか無いよ。魔王は魔力の集合体。その魔力に引かれるのが魔物で、恐れるのが人間。」

 そう言い大きくため息をつく。

 「魔物は、大きな魔力に酔って理性を無くす。人は悪心を抱くのよ。人は本能で怯えるから、魔王を倒そうとするの」

 そう悲しそうに俯いた。

 「えっ!そうなのか?」

 勇者レイブンは初めて知ったようだった。知らなかったのかよ。自分の敵だろう?胡乱気に見ると、レイブンはぶるんぶるんと大きく首を横に振り、

 「仕方ないだろう!俺は無理やりこっちに連れてこられたんだから!」

 そう力説する。なんじゃそりゃ。

 レイブン曰く、勇者は、召喚されこちらの世界に来た人間のことで、本当のところこの世界に思い入れなどないんだと。けれど、召喚時の契約によって、召喚者の願いが体にインプットされてるとか。インプットって何だ?そう聞くと、抗い難いなにかだってさ。余計わからんかったんだけど。何やら俺の知らない世界の謎はまだまだ有るらしい。

 

 


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