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その日、俺キース=アークロイドは定期会合の為、来たくもない王城に3ヶ月ぶりに訪れた。俺は公爵家の出だが騎士団には入らず、民間で組織されている兵団に入隊した。王子達が勝手に争った結果、ぐっと継承権の低かったユリウスが王となった。俺にも、継承権が有ったが早々に断り、今では兵団団長になった。民間と言っても、騎士団の下に位置付けされている兵団は、連携が必要な事も多い。民間と言うこともあって、貴族の多い騎士団との交渉事には弱い立場でも有るため、俺の存在は重宝されている。が、俺としては貴族の世界が嫌だから、兵団に入った訳で迷惑な話だった。しかし最近は部下に任せきりだったので、会合に久しぶりに出席することになった。昔と違い騎士団にも民間人が入れるようになった。ユリウスの改革だが、今さら変われないだろうと思っている。何度かユリウスとも話しをしたが、可もなく不可も無い感じだった。何時も夜に行っていたが、今回は昼間にあって、久しぶりに白日の城内を見た。懐かしさも有ったが、騎士団の元に急ぎさっさと終わらせて帰るつもりだった。そう、先程迄は。

騎士団の寄宿舎が集合場所だったので、庭園をショートカットで突っ切ろうとしたのだが、庭園が途中から無くなっていた。美しい庭園だったのに、掘り返されて畝になっている。等間隔に何か植えられていて、芽吹いていたが、とても花とは思えない物だった。思わず立ち止まり凝視してしまう。亡くなった母がこの庭園をこよなく愛していた。母は王家の血筋だったのだ。何だか無性に腹がたった。自分は王位から逃げたのだから、そんな権利はない。だが、腹がたって仕方がなかった。ユリウスに言ってやろうと、踵を返そうとすると畝の奥の方から、ユリウスの話し声が聞こえてきた。そちらに向かい歩いて行くと、畝にしゃがみこんだユリウスがいた。ユリウスの側には二人の少女がいて、一緒に畝を見ている。侍女かと思ったが、服装も違うしあまりにも子供だった。三人はこちらには気が付く事無く、真剣に話し込んでいる。貴族の子供と言うわけでも無さそうだ。服が汚れるのも気にせず土を弄っている。

「ステビア、どうだろう?やっぱり駄目かな?」

ユリウスの問に少女の1人が考え込んでいた。

「僕の育て方が悪かったのか、ここだけ、芽吹いて来ないんだ。」

どうやら、この畑はユリウスが育てているらしい。少女は、周りを見渡し、

「少しここだけ陽当たりが悪いのかも?それにこの種は余り水を必要としません。もしかして、水のやり過ぎなのかもしれませんよ?」

ユリウスはその話しにびっくりして、

「水のやり過ぎとか有るのかい?植物は皆水が必要なんだと思っていたよ!」

しきりと感心した後、少女達に頭を下げた。

「ごめんね。せっかく二人に送って貰ったプレゼントなのに…僕に知識が無いばかりに…。」

酷く肩を落としたユリウスは膝まで土について座り込んでしまった。二人は慌てて、

「違うよ!ユリウス様のせいじゃないよ!お母さんを助けて貰ったのに、家じゃ種位しかお返しできなくって…。ごめんねユリウス様…。」

どうやら、二人が贈った物を蒔いたらしい。三人が三人ともが落ち込んでいる。文句を言える気がしない。ここで言ったら、悪者は間違いなく俺になる。俺の後ろからアルフレッドが、ユリウスを呼んだ。俺は気配が感じられなくて、飛び上がらんほどビックリしてしまう。そしてそのまま、ユリウスと目があった。ユリウスも驚いた顔をしたが直ぐに引っ込め土を払い立ち上がった。二人の少女も後に続いて着いてきたが、ユリウスが、

「お仕事の時間になったみたい。また後で色々教えてね?」

そう、言うと二人は頷き、手をつないで寄宿舎の方へ駈けて行った。

俺の近くまで来たユリウスは、

「キース君、久しぶりだね?今日は、会合だったんだね。ご苦労様。」

そう声を掛けて、城内へ入っていった。残された俺は、何となくとぼとぼとと、寄宿舎に向かうことになった。

寄宿舎の前にさっきの少女達がいて、一人の騎士と話していた。彼は確か民間の募集で入った青年だった。民間の青年達は魔物と戦う機会が多いので、それなりに強い者が多い。カイルとか言う青年も強い。兵団に入って欲しかった。騎士は少女達の頭を撫でて、手を振り見送った。その騎士と視線が合うと、恥ずかしそうにペコリと頭を下げる。

「キース兵団団長、お疲れ様です。今日の会合は寄宿舎の食堂の個室になります。」

そういった。どうやら、案内役だったらしい。

「やあ、ミント君だったね?ご苦労様。ところで、彼女達は誰だい?」

そう聞くと、申し訳なさそうに、

「すみません。二人は僕の妹でして…。今王都に遊びに来てるんです。」

そう答える。いくら騎士の身内と言っても、自由に城内を歩きまわる少女達に驚いて、渋面になっていたらしい。慌てて、ミントが謝りだした。

「申し訳ありません。本来城下で宿を取ろうとしたのですが、ユリウス様の招待なので…。寄宿舎の方にお世話になっているんです。」

と何度も頭を下げた。それを手で制して、

「いや、いい。ユリウス様の了解のもとなら俺にとやかく言う権利はない。」

そう言ったがまだ頭を下げてくる。俺はもしかして恐れられてないか?仕方なく、先を促して、会合の場に入った。

会合場所は寄宿舎の食堂に設けられている個室で、食事も用意されており、会食しながらのようだ。会場には副団長のノエルが来ていた。カイルは居ないようだ。もうすぐ、アルフレッドも来ると言われた。席に付くが、食事の多さに団員を何人か連れてきてやれば良かったと悔やんだ。ただ1人なら、好きに帰れるだろうと踏んでの事だった。

騎士達も揃い、会合が開始され、一通りの話しが着いたところで、徐にアルフレッドが話し出した。

「そう言えば、兵団から問い合わせが来ないが、伝わっているのだろうか?」

そう言われたが、なんの事かわからない。思わず眉間に皺がよる。

「アルフレッド、流石にそれは知ってるはず。城下に何度も行ってるし、親しい人達や、孤児院にさえ訪問を何度もしてるんだぞ?」

ノエルが言うが、クリスティア様の事だろうか?クリスティア様が孤児院の訪問をしていることは、知っているが?

「そうかな?でも、こんな話し聞いたら真っ先に、キース団長が乗り込んでくると思っていたので。」

ああと、ノエルは納得したように頷いた。どういう意味だ?嫌みか?

「あの…。知ってますよね?今城に客人が居ること?」

ノエルが恐る恐る聞いてきた。ああ、先程の子供達の事か?そりゃ城にと言うのはどうかと思うが、俺はどんだけ心が狭いと思われてるんだ?

ああ、あの…。と言いかけた途端、

「それにしても、何も言ってこないし、見にも来ないとは、ある意味すごいですね?私なんて、未だに魔王様は怖いし、レイブンさんには手合わせしてもらったりしてますけど。」

はははっと笑いながらノエルが言った。ちょっと待て。魔王様?なんだそれは。レイブンって誰だ!?

俺の表情を読んだアルフレッドが大きくため息をついて、

「やっぱり知らなかったか…。キース団長これはまあ、事後報告となるが今の城には魔王ザラ様、勇者レイブン、皇国第5皇子サリアース様、スライムのヴァブが滞在しています。ああでも、ザラ様は自宅に一時帰宅してるが…。」

と、普通の事のように言いはなった。

「なっ、何だと!魔王に勇者?しかも皇国皇子まで!なんだそれは!?」

俺の叫びに、騎士達は皆一斉に視線を反らした。何でだ!?



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