表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/70

何時までも一緒に

旦那様が迎えに来るのを待っている。


旦那様は私が働いていた屋敷の長子で、侯爵家の大事な跡取りだったの。屋敷で働くようになって、色々な失敗をしたわ。でも何時も優しく教えてくれたり、庇ってくれたり、笑い掛けてくれて好きになるのに時間はかからなかった。憧れの人だった。

旦那様に婚約の話が舞い込んで、とてもがっかりしたけれど、幸せになってもらいたいと、心から思っていたわ。見守っていたいと、思っていたのよ。

ところが、旦那様に一緒になって欲しいと言われ、悩んだけれど、初めから答えは決まっていた。それが旦那様を不幸にするとしても、その答え以外あり得なかった。


「エリーサ、待ったかい?」

そう、何時も優しい声を聞かせてくれるのよ。

「いいえ」そう答えて、手を繋ぐ。家に帰るまでのデートを楽しむの。ほんの一時の二人だけの時間を。


「良いわね!エリーサ!素敵だわ」

私とノエルの話を聞いてクリスティア様は満足げに頷く。私の今の仕事は王妃様の侍女。何でも自分でなさるクリスティア様にとって、余りお役にたてていない。それでも、この方を見ているとほっとするわ。


ノエルが騎士となって、ユリウス様の下で働くようになり、何故か私はユリウス様に呼び出された。謁見の間に通されると思っていたのに、執務室に直接呼ばれ、ユリウス様、騎士団団長のアルフレッド様とそこに、膨れっ面をしたクリスティア様がいた。

突然呼び出したことをユリウス様が頭を下げて謝り、話をしだした。

「ノエルから君は侍女だったと聞き、少しお願いがあるのだけれど。」

そう話された。けれど、それを遮って、クリスティア様が叫ばれた。

「私に侍女なんて必要ないです。自分で何でも出来ることユリウスは知っているでしょ?」

そう言われた。けれど、ユリウス様は苦笑いしながら、

「勿論知ってるよ。ずっと一緒だったんだからね。でも、残念なことに、僕はこの国の王に、君は王妃になったのだから、僕らがこの仕事を終らせるまでは、王妃として頑張ってよ。」

そう言い聞かせた。ぷくりと膨らませた頬に、まだまだ幼さが見えて、可愛いなあ、と思った。

「でも…。」とクリスティア様が言い

掛けたのを今度はユリウス様が遮った。

「ノエルは侯爵家出身だけど、彼女は普通の家の方だよ。ノエルが彼女に惚れ込んでやっと結婚したんだって。凄いよね!かっこいいよね?」

そう、力強く言うと、明らかに興味が湧いた顔をクリスティア様がなさった。

「えっ、では婚姻は難しいかったでしょう?」

そう言われ、素直に頷いた。

「はい。誰も認めてくれませんでしたので、旦那様が市井に下られ庶民として婚姻しました。」

そう答えたの。すると、クリスティア様は痛ましいお顔をなされた。きっと、爵位を捨てた旦那様の事を憐れんでおられるのだと思ったの。

「えっと、ごめんなさい、お名前何て仰ったかしら?」

と聞かれたので、慌てて、

「エリーサです。」

と答えた。すると、

「良く頑張りましたね。お子様もいらっしゃるとか?子育ての邪魔にならない程度で、私の側に居て貰えないかしら?」

そう仰られたわ。びっくりして、返事が出来ずに居ると、

「取り敢えず、ノエルと相談して今後の事を決めると良いよ。勿論断っても良い。それによって何か変わることはないから安心して。ただのご覧の通り、クリスティアは、少々普通の令嬢とは違うから、一般の人の方が気が合うかと思ったんだ。」

そう話され、クリスティア様を優しく見つめておられました。

「ユリウス、私がどんな人間か知って貰うのに、二人でお話したいの。」

そして、私を見て微笑み、

「私のお部屋に行きましょう。後から、ノエルさんに迎えに来て貰えば良いわ。」

そう言った。王妃様と二人きり何てドキドキして、失敗しそうだったが、そっと側に来て座る私の手を握り、ねっ?

と、首を傾げる仕草が可愛くて、頷いてしまい、手を引かれるまま後について行ってしまったの。

導かれた部屋は、侯爵家で見た物よりも落ち着いてはいるが、物が良いのが一目で分かった。やはり王宮は違うのだと感じたの。王妃は、私に柔らかそうなソファに座るよう勧めたわ。

そのうちに、ご自分でお茶の用意をなされ、美味しそうな、お菓子を並べられた。そして、目の前に腰かけ、お茶を勧められたの。そこで、夢見心地から覚めた私は、ペコペコ頭を下げて、お茶を頂いたわ。今でも忘れない。あの味を…。

一口飲んで意識が飛びそうになってカップを落としてしまったの。もしかして、この方私を殺そうとしている?そう本気で考えたくらいよ。でも、私が意識を飛ばしたのを、本気で驚いたらしく小さく悲鳴を上げ側に飛んできたわ。そこまで、覚えてるけれど、後は何も分からなかった。

私は気を失ってしまったらしいわ。



最終兵器クリスティア

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ