人の性とは勝手な思い込み
スライムについて書いてありますが、勝手な解釈なので気にしないでください。
『分裂と繁殖』
黒色スライムを乱獲し始めた頃、数が激減仕出し、慌てた人間はどうすれば都合が良いか考え始めます。
商人が冒険者を雇い、黒色スライムの繁殖を考えるようになりました。スライムについて、詳しくない彼らは幾度となく失敗を繰り返します。
「当たり前ですね。はい。カイル君何故ですか?」
急にザラ様に質問されカイルは焦りながら考えた。
「えっ、えーと、あっ、雌雄が無いからですか?」
「はい。正解です。スライムには雌雄がありません。両性という訳ではありません。では、どうやって種族を増やすのでしょう?はい。アルテア君。」
「えっと、繁殖じゃないから、分裂とか?」
アルテアが答えると、大きくザラ様が頷いた。
「正解です。」
スライムは分裂して、個数を増やしていきます。前にスライムは個の体積以上にはならないし、集合、一体化する事を勉強しました。しかし、個の体積は魔物として成長がある限り個々の差、年数、食事量や質、生活環境により変わってきます。何より、魔物とて、自然が作り出した生き物です。自分達の種族の危機や食事量の減少等、敏感に感じとります。ある程度育ったスライムは、分裂して個数を増やしますし、増えすぎたスライムは一体化し個数を減らしたり、時には、共食いもみられることがあります。
「そんな訳で、友達から聞いた話では、アルーム地域では、今スライムの養殖が成功して、沢山の石炭を食べさせ、分裂したスライムを可燃物として使っているそうです。」
結局スライムが可哀想なのは変わらなかった。
「しかも、何と殆ど共存といっても良いくらいの道具としての使い方です。」
?どういう意味かわかりません。僕としては、共存と言うのは凄く心に響きます。
可燃物して使われますが、始めスライム本体に火を付けるという使い方だったのですが、今は火を食べさせ、体内の石炭をゆっくり燃やして光源としてるようです。何が違うのか、これは分かりません。突然変異か、元々火を食べる種類だったのか。炎が小さくなれば、スライムも小さくなり、それに石炭を食べさせるを、繰り返します。炎は、雨風に影響されることが少ないため大変役立つそうです。
「あー、まだ行った事無かったなー。」
レイブンさんが、残念そうに呟いてます。僕もそのスライムが見てみたいです。輸入出来ないかな?
「ユリウス」
そう呼ばれ、背筋をのばす。
「はい。」
うむと、頷くザラ様は、
「このスライムも、素手では触れないからな?触ると爛れるそうだぞ。」
ザラ様、僕の心読めるんですか?
本日の勉強会が終わった。ヨミを残し皆が部屋を後にした。カイルを執務室に呼び、レイブンさんにお願いしてサリアースを、寄宿舎に連れ帰ってもらった。
カイルに、サリアースの授業での態度について聞いてみる。すると、まあ、予想通りの洗礼を受けたみたいだ。でも、こちらに来てからザラ様は、本当に思慮深く、思い遣りの有る優しい魔王様だった。サリアースに対する当たりが酷いのは、多分僕のせいだな。自分の個人的羞恥のせいで、ちょっと可哀想かもしれない。まあ、勝手に入ってきた彼にも問題は有ると思うけど。
人間の友達が居ると言うだけあって、ザラ様は多分普通の魔王様より、人間寄の見方が出来る方だ。だが、それは、全て勝手な自分達の期待であって、ザラ様は関知しない。良く肝に命じておく。
それでも、仲良くなりたい、笑ってもらいたいと思うから人間の性とは強欲だ。魔王様の有り様をとっくの昔に超越しているザラ様が、幸せだと嬉しいので今度何か希望を聞いてみよう。
サリアースは今日の授業中ピリピリしていた。騙されないぞ!っていうのと、魔王様のお仕置きこわっ、との狭間で揺れに揺れたのだろう。寄宿舎に帰っていく後ろ姿は、御老体。よろめいていたが、それを気付かせまいと頑張っていて、涙を禁じ得なかった。まあ、バレバレでは有るがきっと騎士団の皆が、彼を労ってくれるだろう。今の騎士団は、結束が固い。何より皆地方出身者が多いため、助け合いの心を持っている。良いことだ。アルフレッドの教育の賜物か?はたまた、ノエルの人徳の成せる技なのか。
副団長ノエルは、三十半ばのふんわりした優しい印象を受ける男だ。侯爵家出身だが、メイドをこよなく愛してしまい、家を捨てたなかなか愛に生きる男である。騎士団の試験に一般人として受見事合格、城下に自分の家を構えている。何時もニコニコしているが、アルフレッドの留守を預かるしっかり者だ。…嫁以外の事は。
その嫁エリーサは、子供を二人生んだ後、今は城内の侍女となっている。しかも、クリスティア付きの侍女だ。元々、クリスティアは自分の事は自分で出来るので、エリーサは、定時に自宅へと帰る。それを送るノエルというのがここでは当たり前の日課となっている感じだ。未だラブラブなのだ、見習いたいな。
ノエルから、ルールの報告を後から聞いて、最後のナンパをするなは、自分の嫁さんを守るためかな?と思ったが敢えて黙っておいた。色恋沙汰で、上手くいかなくなるのは世の常。彼の釘刺しは必要だと思ったからだ。
そんな彼、ノエルは、実際有能である。剣の腕前では、少し思うところも有るが、体術に関してだと、カイルよりも明らかに上だった。
そして、怒らせると一番厄介な人物だ。今のところ、僕に被害は無いので良いのだけど、もしサリアースが彼を嘗めてるなら大変なことになるだろう。騎士団の中にはそんな命知らずは居ないので。取り敢えず、僕にとるような態度は早々に改めるべきで有るが、彼にはきっと無理だろうな。生き方が違うから。自分で学ばないと身に付かないものだ。