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アルテアの悩み

僕、アルテアは朝から大忙しだ。城内の工事は滞りなく進み、いつの間にか知らないうちに、皇国からお客が来ていたり、その方が、ユリウス様に悪意たらたらなのに何故か騎士団宿舎で暮らすことになったりしていた。僕も、騎士団の食堂を良く使うので、朝の彼の態度を見たり、執務室での彼の物言いは苛つくところがある。

殆ど僕の事など目に入ってないだろう彼は、多分人間が生きていると言うことを知らないんだと思う。

思わず出た僕の呟きを耳聡く拾い上げたユリウス様は、苦笑いしながら僕の頭を撫で始めた。

「アルテア、彼は知らない国に来て、いっぱいいっぱいなんだよ。許してあげなよ?」

そう言って覗き込むので、

「何時までも子供扱いしないでください。」

そう言って離れると、困った様な、残念そうな顔を隠しませんねこの人。

「アルテアは、まだいいと想うんだけど?」

そう言うので、

「良いとか、悪いとかの問題じゃ無いです。もう17才ですよ。本来なら、クリスティア様はもっと楽して良いのに、不甲斐ないばかりに迷惑をかけているんだし、それに何時も言ってるでしょう!僕は男なんだから、もっとカイルや、アルフレッドと同じような扱いにしてください。」

ますます困った顔を傾げながら、

「ええと、同じだよ?」

ダメだこの人。

後ろに控えたアルフレッドが、無表情のまま呟く。

「アルテア諦めろ。お前の顔が悪い。」

そうの賜った。

なにも言えず固まっていると、ユリウス様がアルフレッドに向かい、

「嫌だな、アルフレッド。顔にいいも悪いも無いでしょう?それを言うなら、僕の好みの顔だから諦めてね?だよ。」

めっとアルフレッドに言い聞かせているが、どちらも悪い。

やっぱりそうなのか?この顔のお陰でこの地位なのかも?ぐるぐる回る思考が止まらない。女の子扱いは、名前のせいだと思っていた。そう、僕は立派な男性である。良く、女性に間違われるけど。

「ホントに、クリスティアに似てるよね?やっぱり血かな~。頭の良さも、要領の良さも最高だし将来楽しみだよね。」

ユリウス様がそう言った。アルフレッドはこくこくと頷いている。本当にそう思ってるんですか?甚だ怪しい。クリスティア様のお母様と、僕の母が従姉妹同士でとても似ているのだけど。

大体に置いて、僕に宰相の素質なんて絶望的だと言っていいが、だからといって騎士なんて以ての外だった。


「アルテア=リースはリース公爵家の恥さらし」

そう言い続けられ、僕は生きるのが辛くなっていた。8才から通った学園でも、バカにされてばかり。図書室の主と化していた。剣術なんて酷いものだった。

お祖父様にとって、僕は認めたくない嫡男で、代わりの居ない嫡男だった。代々騎士団の要職に付き、自分も騎士団団長を勤めて居たのだから特にだろう。

今は、民間人の割合の方が多い位の騎士団も、昔は貴族の名誉ある仕事だったのだ。

前任の団長が処刑され、二代前のお祖父様が、暫くの間団長の任に着いた。

その時、お祖父様はやっと気が付いた。

人には、向き不向きが有ると言うことに。

アルフレッドの師匠が、騎士団を一から鍛え直し、クリスティア様の才能を開花させた。逆にユリウス様はそれなりに柔術、剣術を身に付けたが、それ以上にはならなかったらしい。

兎に角、クリスティア様は凄かった。

教えられた事はすべて吸収、それ以上の応用力をみせ、その時にいた騎士達を訓練の名の元にバッタバッタと倒していった。唯一倒せなかったのが、アルフレッドと師匠だけだった。そう。倒せなかったのが二人だけだったのだ。つまり、お祖父様は、倒されてしまったのだ。

騎士で有ることを誇っていたお祖父様は、自分が守るべきしかも女性に負けたのだ。その時点で、お祖父様は、アルフレッドに団長を譲り、自分は領地へと隠居する事にした。クリスティア様恐るべしである。

そんな中、僕に目を付けたのがユリウス様だった。

学園の図書室はこの国一の本の所蔵を誇っていた。その図書室の住人兼、主となっていた僕は、たまたま学園に来ていたユリウス様と知り合った。実は、アルフレッドの扱きに耐えられなくて、逃げて来たらしい。その時に本の事を聞かれ、嬉々として答える僕をいたく気にいったらしい。僕に、今度官僚の試験をするから受けて見ないか?と言い出したのだ。渋る僕に理由を尋ねた。

「僕の家は昔から騎士団長を輩出した、武官の家系なので、きっとお祖父様が認めないと思います。」

そう言うと、

「君が、遣りたくないって訳じゃ無いんだよね?」

と聞かれ素直に頷いた。するとふふふと笑ながら、

「なら大丈夫。今は、僕に意見しようとする貴族は居ないよ?きっと君のお祖父様は、領地に引っ込むことになるし、君が嫌じゃないなら自由にするといい。」

そう言って、僕の肩をポンと叩いた。予言めいた物言いに、唖然としていると、

「勿論、受かるかどうかは君の努力次第だ。贔屓はしないけど、努力する者には平等にチャンスは訪れるよ?」

「リース公爵家の恥さらし」の僕に初めて自分の道を選ぶことを示してくれた人。ユリウス様に会って僕は変わった。

そして、ユリウス様の予言通り、お祖父様は領地に引っ込み、アルフレッドが団長に就任した。憔悴したお祖父様は、官僚になりたいと言う僕に何も言わなかった。

次の年に開催された官僚の試験を受けて、晴れて僕は国の為に働く官僚となった。最年少で、満点の記録を打ち立てた僕を、誰もがもうバカにすることは無くなった。そして、ユリウス様だけが、

「待ってたよ。さあ、一緒にこの国を作って行こう?」

そう言い、僕を迎え入れてくれた。

その後、一緒に官僚の試験をクリスティア様が受けており、次点が彼女だと知った。

ああ、それからユリウス様の嗜好を知り、アルフレッドが、元々知っていてユリウス様がゆっくり嗜好の事を考えられるよう、国を作ると決めていることを知って何だかもやもやしたのを覚えいる。

その事をクリスティア様も何となく許していて、この国大丈夫か?と思ってしまった。僕が頑張らなければそう心に強く思ったのだった。



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