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ここに居るのは

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。



クリスティアが部屋に訪ねてきて、ヴァブが迎え入れた。カイルと、ユリウスが悶絶する様なところを目撃したであろう、どこだかの人間を連れて。

「ティア今日は何か約束をしていただろうか?」

そう聞くと、にっこりと微笑んでクリスティアが答えた。

「いいえ、約束はしてません。紹介したい方が居まして連れて来ました。」

そう言い、視線をどこだかの人間に向けた。促された方は自己紹介もせず、棒立ちだ。ユリウスの時はこちらがなにも言わなくても、膝を折り礼を尽くしてきたがこいつは違うらしい。まあ、普通の人間と言うところか。仕方ないので、こいつが両膝を地に着けやすくしてやった。礼儀を知らない奴の存在を知った今、取るべき行動は一つだった。極限まで押さえていた魔力を何時もより多目に放出してみる。カイルや、クリスティアにとって最早日常に近いそれは、苦になら無いだろう。部屋に充満し出した魔力に息苦しさ、重圧を感じたようだ。うっすら奴の額に油汗が滲んできた。呼吸も、浅く早くなっている。クリスティア達は不思議そうに奴を見ているが、言葉にもできず、ついには膝を付きその場に崩れ落ちた。

慌てた二人が、声を掛けているが、息も絶え絶えで答えられない。

あ、アイツが来るかな?とも思ったが、まあいいか。

「礼儀を重んじない奴は嫌いだな。」

一言呟けば、クリスティアが察して

「ザラちゃんごめんなさい。私が悪いの。許してください。」

どうしてか、泣きそうな顔をした。面白くない。クリスティアを苛めるとは。

「この方は、クレハ皇国の皇子様でサリアース様です。私が、きちんとご紹介出来なかったのが悪いのです。礼儀を知らないのは私なんです。」

クリスティアが言い募ったが、唇に指を立て黙るように示すと、きゅっと口を閉ざした。

「勘違いしてはいけないクリスティア。人間が何処の誰だろうと私には、関係無いことだ。」

そう言うと、今度はクリスティアの綺麗な瞳に水分が増した。落ちそうなほど瞳を潤ませているが、我慢しているのだろうが、じっとこちらを見つめて視線を外さない。何故か、そわそわとした気分になる。

「クリスティア。私はこの国の人間が気に入っているから、ここに居る。けれど、他の人間を全部気に入っているかと言うとそうではない。言っている意味が解るか?」

そう尋ねると、こくりと頷いた。それと共に涙がこぼれ落ちた。カイルは只やり取りを黙ってみている。

「そして、私は魔王だ。魔力の塊だ。これは忘れてはいけない。人間のルールに従う必要性を感じた事はない。けれど、ユリウスやクリスティア、カイルやアルフレッドに他の人達に良くして貰ったし、見ていて飽きない。」

ふう、と息をついて、

「しかし、私は人外なのだ。たとえ、これがまともに礼儀を尽くしたとしても、気に入らなければ、同じ事をするだろう。誰が悪いのでもない。私の機嫌が悪いのだ。そういうものだ。覚えておいて。」

伝わるかわからないが、一応言っておこう、

「初めから、コイツは嫌いだな。ユリウスを苛めたし。」

すると、クリスティアは首を傾げ、

「ユリウスを苛めるとは?どういう意味ですか?」

不思議そうに聞いてくる。

「おや?聞いてないのかな。コイツ、ユリウスの執務室に突然訪ねてきて、名前も告げずにこの国をバカにしたんだよ。いや、まあユリウスも悪いと思うけどね?」

途端、クリスティアの眉間に皺が寄った。

「先程も、ユリウスを指差して何か言っておられました。私が妻として相応しくないとか…も、言われました。」

そう言うと、カイルがぎょっとして、違う違うと、首を振っている。じっと見つめると、話し出した。

「王妃様、それはちょっと違いますよ。多分、ユリウス様が相応しくないと…言う意味だと思います。」

どう違うのか良く分からなかった。どっちにしても、夫婦仲を悪く言ってるのでは?クリスティアも、そう思ったらしい。益々困惑している。

「あ~。え~と。どうやら、初めて会った時にユリウス様がスライムの事を妄想中で、城内の者なら見なかった事にしますが、サリアース様には無理だった様です。」

聞いた途端、クリスティアの目が据わった。

「ティアそんな顔しないで欲しい。ユリウスのスライム好きがなければ、私はここにい居ない。ティアは、私が居ない方が良い…」

そう言いかけると、食い気味に

「そうですね!ユリウスの変態も有効な時が有りますね!ザラちゃんとの出逢いをもたらしたんですから!」

まあ、そう言う事である。それに、勉強会が無くなれば帰ることにもなるし。何て考えていると、カイルが声を掛けて来た。

「あの~そろそろサリアース様が死にそうなんですが?」

すっかり、コイツの存在を忘れていた。


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