そうだ、旅に出てもらおう
のりと、勢いで書いてます。
朝から晩まで、ひとつの?或いは沢山の事柄で頭は一杯だ。1種族に対してだが。
そのことでそわそわし、ぼんやりし、イライラ、ドキドキする。
まさしく、これはKOI。
どう思う?と聞いたら、半眼になったクリスティアが、
「ソウデスネ」
と言ってくれた。やっぱり、恋で間違い無いようだ。浮気な夫でごめんね、と謝っておいた。クリスティアはにっこり微笑んで、ここに印とサインをと言って、たくさんの書類を出してきた。勿論僕は、言われた通りサインをして、王印を押しまくった。クリスティアは、深く頷き輝くような笑顔で、
「誰か、あれの事に詳しい人にお話を聞いてみてはいかが?」
流石、クリスティア。しかし、魔物に詳しい人って?後ろに控えていたアルフレッドを振り替えると、必死に考えてる様子。ポンと手をうち、
「勇者何てどうですか?」
といってきた。思わず首を捻った。
「イヤそれ違うよね。彼が詳しいのは、倒しかただよね?」
そう突っ込むと、嗚呼、納得と大きく頷いた。
「あら、勇者がダメなら、魔王に聞いてみるとか?...何てね。 」
ほほほっと笑うクリスティア。本当。君天才。
「アルフレッド。聞いたか?やっぱりクリスティアは、人とは違うな!こんな考えは、僕には出来なかった!よしいくぞ!」
僕がガタンと椅子を大きく鳴らして立ち上がれば、慌ててクリスティアが止めた。
「ユリウス!冗談です!」
そう言って、僕にすがり付いてきた。ぴったりとくっついたクリスティアの柔らかい胸の感触が感じられ、喜ばしい限りだが、冗談では終わらせたくないほどナイスアイディアだ。アルフレッドが、では、と
「騎士の中から、とっておきの者に行かせましょう。」
と名案とばかりに再び手をならした。アルフレッドの言うとっておきの者とは、きっと彼だな。言われてみればなるほど、いい考えだ。
「わかった。その者を呼んでくれ。」
僕は、王らしく尊大にアルフレッドに申し渡した。
アルフレッドに呼び出され、執務室に訪れたのは、ひどく膨れっ面をした、若者だった。僕より一つ年上の彼、カイルは騎士団のなかで、若手ながらアルフレッドに次ぐ実力の持ち主だ。だが、いつもアルフレッドに無理難題を押し付けられて、少々拗らせているが、それでもやはり彼しかいない。
「よく来たな。」
僕は、両手を広げて歓迎の意を現したが、カイルには通じなかったようだ。ジロリと睨むと、
「今度は何ですか?」
低い声で問う。僕は、笑いを堪えた。カイルはいつも、王となった僕に対してへつらったりしない。それが、とても好ましい。うん。とても良い傾向だ。
「カイル。とっておきの話だ。スライムについてご教授願いたいので、ある方をつれてきてほしい。」
そう僕が言うと、明かに嫌な顔をしたが、こくりと頷いた。仕事に対して熱心なのもいい。
「どこに迎えにいけばいいんです?」
そう聞いてくる。どこ?うむ。彼の者はどこ在住だ?
「魔王城だ。」
アルフレッドが、何てことなく答えた。あ、そうか、そうだよな!と、一人納得していると、カイルの姿が消えていた。嫌。開け放たれた、ドアから飛び出していく姿が、微かに視界に捉えることができた。そのとたん、僕の髪を風が揺らした。机の上にあった書類が、ふわりと宙に舞う。それを慌てて、クリスティアが、キャッチしている。僕は、カイルを追って風にように走り出した、アルフレッドに聞こえるかわからないが、言っておこう。
「廊下は走るんじゃないよ。」
それから、15分ぐらい後に、アルフレッドに確保された、カイルは担がれて、執務室へと帰還した。
「では、カイルよ。アルフレッドによく話を聞いて、旅立ってくれ。」
そう言い、にっこり微笑むと、ギリギリと歯を鳴らしながら、唸るカイルは怖かった。
「カイル。無理だと思ったら、逃げていいからね。」
クリスティアは、カイルに自分の大切な魔石を託している。カイルは、王妃様~と情けない声を出した。
「ごめんね。本当にごめんなさい。私が悪いの。」
なぜか、クリスティアは泣きながらカイルの手を握っている。何か、彼にしたのだろうか?クリスティアはおっちょこちょいだな。そこが可愛いけど。
そして、カイルは魔王に会うために魔王城へと旅立った。