困った人なので
初めて会った彼は、名前が解らないので、真っ黒君としておこう。見た目で。
まあその真っ黒君は、此方を睨み付けたまま、尊大な態度で立っていた。
皇国。クレハ皇国は、最古の歴史ある国のひとつだ。我が国の西に位地しているが、隣接している訳ではない。間に幾つかの小国を跨いでいる。まあ、小国の中に我が王国も含まれる訳だが。
この大陸の約4分1を占める大国だ。そんなところに、無謀に喧嘩を売る程バカじゃない。
だがこの真っ黒君は何やら思うところ有りのご様子。めんどくさいな本当に。スライムの事で楽しい日々なのに、帰ってくれないかな?
「…話には聞いていたが、アレキア王国にはバカしか居ないのか?ひよった奴ばかりか気持ち悪い変態まで居やがる。」
失礼な!バカは僕だけだ。多分変態も僕だけだ!
「うーん、確かに僕はバカかも知れないけど、礼儀は有るよ。君ほど無知でもないかな?」
肩をすくめてそう返すと、真っ黒君は心底バカにした様にため息を着いた。
「どこが?城の警備はガバガバ。執務室には、頭の弱い王様が一人ニタニタしながら何やら企んでるご様子。なあ?教えてくれよ?どっちが無知なのか。」
鼻で笑いながら言われたけど、ヤッパリ見てたんだ?凄く恥ずかしいんだけど!頭を抱えたいのをぐっと堪えて、細く長い息をつく。落ち着けよ僕。
「言い訳はしないけど、別に君に関係無いよね?と言うか、君誰?お名前は?あれれ?迷子ちゃんですか?」
思い切りバカにして言ってみた。真っ黒君から、汚い言葉が漏れた。あ、やっぱり皇国の方ですね。
「君さ、何しに来たか知らないけど、皇国に帰りなよ。この国に皇国に楯突こう何て輩は居ないよ?」
そう言うと、ハッとして
「誰が皇国だといった?なにも解らない奴は黙っていろ。」
言い募って来るがはっきり言ってどうでも良いのだけれど。要は一歩近付いてくれたってことが、大事な訳だ。
この執務室には、仕掛けが幾つかあった。血生臭い出来事の結果としての物だがあえてここを使っていた利点でもある。それ以外にも、何故かザラが城の何ヵ所かに手を加えてくれた。有り難う。ご迷惑掛けています。
真っ黒君が、踏み出した途端床と天井から魔方陣が浮かび上がった。床の魔方陣は反時計回りに風を吹上、緑色に輝く。頭上の魔方陣は紫に輝くが、なんの効果なのか知らなかった。真っ黒君は、慌てて体を引こうとしたけど、間に合わなかった。苦しげに膝を着く。あ、凄い!毒の効果なんだね!そのまま風を残し、真っ黒君が消えた。と言うか転移したのだ。この城の地下牢に。
毒を受けたまま牢屋行きって、涙を禁じ得ないが、まっ、いいかな。毒を仕込んだの僕じゃないし、殺るつもりなら即死魔法の方仕掛けてるだろうからね。もし、彼がある程度魔法が使えても、ここの牢屋には魔封じされてるし大丈夫です。アルフレッドが、戻るのを仕事の続きをしながら待ちます。うん。
風で飛ばされた書類を回収していたら、アルフレッドが戻ってきた。魔方陣の起動が分かったらしい。凄いね。
拾うの手伝いながら、今遭ったことの説明を聞いていた。その後、部下に声を掛け、地下牢を見に行かせてくれた。
取り敢えず、皇国の使者として謁見の申し込みが会ったのか確認し、無い様なので彼には暫くゆっくりと逗留してもらうことにした。外交でとやかく言われても、許可も無い人なので、知らぬ存ぜぬを貫く覚悟だ。僕の姿を見たのだから、忘れて頂こう。記憶から…。
またもや、皆が無事か点呼をを取ってもらい、ザラが戻ってから会いに行くことにした。
アルフレッドと、皇国が何で送り込んできたのか?それとも、単独の盗賊とか?はたまた、暗殺者だとか…。色々と考えていたが、あることを思い出した。
「あっ。そう言えば、地下牢に鍵掛けて無かった!」
アルフレッドが渋い顔をしたが、様子を見に行ってくれた騎士は
「大人しく入ってましたよ。どうします?掛けて来ますか?」
聞いてきたので、アルフレッドが頷く寸前、
「いいよ別に。毒で弱ってるし。皆に近くに居ないように言っておいて。」
言付ける。何か言いたそうにしているアルフレッドに、クリスティアには内緒ね?と釘を刺しておいた。彼女優しいから…。
ユリウスの性格変わってる!?