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ぎゅ、したいのでください。

アルフレッドとザラが教室に戻ってきた。ザラがなにやら抱き抱えている。

スライムだ。ヴァブとは違う種の様だ。透明なのにうっすらと発光している。凄く綺麗で清らかな印象を受ける。

「アルフレッド。城内の様子はどうだった?それに何この可愛いスライム?…。

僕を試してるの?嫌、もう無理。ダッコさせて!」

思わず、城内の事もそこそこに両手を広げてザラに襲い掛かりそうになる。僕の行動を予測していたであろうアルフレッドに襟首をがっちり捕まれて、後少しのところで届かなかった。

「だと思いました。」

冷静に言われ、阻止された。

「城内は至るところで亀裂や落下物があり危険ですが、幸い火の気もなくこれ以上の被害はほぼ無いかと。」

そう言い、続けて

「人的被害はほぼありません。粉塵を吸い込んだもの、避難時に転倒等で軽度の外傷や、落下物にての外傷等を負った者も既に、治療はすんでいます。行方不明者もおりません。点呼は既にとれています。」

本来僕が一番気にしなくてはいけない情報をくれるから、アルフレッドはとても有能だね。でも今は、この素敵すぎる存在から目が離せない。

「ユリウス様。」

低くて落ち着いた声だ。確固たる信念を持った者の声。安心感と優しさを持つ声。

…けど、今日は違った。内に秘めた苛立ちを感じた。

「はっ。」

と思わず、足を揃えて背筋をびしりと伸ばす。右手を握り込み左胸に当て、我が国の騎士の敬礼を示す。

いつもは僕とスライムについて花を咲かせてるアルフレッドは、有事の際とても厳しい。王座につく前に騎士団にて、護身術とかをみっちり教え込まれた僕は、アルフレッドのこの声が怖くて堪らない。一種のトラウマになっていた。と、共に条件反射として騎士の敬礼をしてしまう。

「今は、その時ではありません。」

告げられた言葉に落胆と、後悔をのせて、

「申し訳ありません。」

謝っちゃったよ。

側に居たレイブンは微妙な顔になっている。眉尻が下がり子犬の様なそれでいて、酸っぱい感じだけどどうしたんだろう?アルフレッドは、そんなレイブンに視線を向けた。

「すみません!」

いきなり深々と頭を下げるレイブン。え?何かしたの?

「これって、きっと俺のせいだよね!?」

レイブンが項垂れたままアルフレッドにきいた。それに答えたのはザラだった。

「そうだな。レイブンのマジナイが切欠になったな。」

益々がっくりと肩を落とすレイブンが気の毒になった。けれど今はそれより、

「マジナイ、ってなんですか?」

そう聞くと、

「あーあー…、ヴァブに渡した魔石が闇属性の塊だったんだ、あんまり良くないと思って光属性に成るよう、呪いをこっそりしてたんだけど…多分、相反する力が反応したんだと思うんだ…」

むむむっと考え込みながら、

「自分でもここまで強烈な光属性になると思ってなくて…。」

困り果てて居る。

「勇者だし、当たり前だな。ヴァブが消し飛ばなかったのが、逆にビックリだな。」

ザラがいった言葉に反応してしまった。

「えぇ!?ヴァブさんどうかしたんですか?怪我とか!?そういえばどちらにいらっしゃるんですか?」

僕が慌てて聞くと、ザラと、アルフレッドの視線がザラに抱かれたスライムに注がれた。どしたの?この子が何か?

「ええと…闇属性から、光属性にジョブチェンジした様ですよ?」

アルフレッドの言ってることが今一…。うっ、え?この子が?ヴァブなの?

うむ。深く年寄り染みた頷きを返すザラに、あーとか、うーとか意味不明の声を発し頭を抱えるレイブン。すると、

「…何かすみません…。ご迷惑をお掛けしてるみたいで…。」

透明発光スライム、ヴァブが言葉を発した。あの人間滅べ宣言したヴァブから発っせられたとは思えないほど、弱々しくも、思い遣りのある可愛い声だった。

「声まで変わってる!?」

やっぱり、ぎゅ、したいので僕にください!必死な僕の訴えはザラに無視された。

「今は光属性だけど、何年?ん?何時間?とにかく魔石や、魔導書食べたら多分元にもどる。」

ええー勿体ない!

「では、光属性の魔導書とかだけなら戻らない?」

尋ねると、

「何にしても戻るよ。作った人間のエゴとかも加味されるからな。残念だがな。」

ああ、本当に残念です。

「ザラ様は魔導書作れないんですか?」

思わず聞いちゃった。

「うむ。必要性を感じないな。と言うか魔法は自分の中にある。自分自身が魔力だからな、それを形に作って残す何て面倒くさいし伝え切れるとも思えないな。」

ふぅ。一息ついたザラは、

「人間てその辺努力家だよな。」

染々呟いている。誉められてる気がしないんですが。







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