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四十九話 ファウンダー・エクスリッチの真骨頂

 ファウンダー・エクスリッチと布魔が向き合う中、キシと相手のパイロットも全波帯通信オープンチャンネルで言葉を交わしていた。


『そんなにボロボロになっているんだから。さっさと逃げ帰ったら。俺、あの二機を追わなきゃいけないんだよね』

『その小憎たらしい口。本当にあのクソ店員のコピーか? 本物じゃねえのか?』

『そう思うんだったら、このミッションが終わった直後に、君が言う店員は東京にある第一号店で働いているから、電話して聞いてみたら?』

『……その見慣れない機体の特徴がようやくわかったから、さっさと倒してそうさせてもらうぜ!』


 ダーツ銃を連射しながら、布魔が迫ってくる。ミイラ男のような外観を形成していたティシュー装甲は、ほぼ全てなくなっていて、忍者然とした黒い機体の端々にくっ付いている程度だ。

 防御性能が格段に落ちているのに接近戦を挑んできたことに、キシは舌打ちしたい気分で、ファウンダー・エクスリッチを後ろへと下がらせる。

 そこで、相手からの通信がやってきた。


『また、少しでも距離を空けようとしている。やはり、接近戦に難があるんだろ!』


 布魔のパイロットはそう言い放ちながら、ダーツ銃を持つ方とは逆の手で、機体背部に収納されていた刀を引き抜いた。鍔は無く、黒塗りの刀身をしている。


『暗殺剣風の刀か。夜間だったら見え難くて、避けづらいだろうな!』


 キシは評価を下しながら、弾倉の装着が終わった散弾銃を右太腿の増加装甲下から引き抜き、発砲。

 飛来する弾丸が布魔へと飛び、ティシュー装甲を失った胴体にいくつか穴を穿った。

 これで少しは離れると思いきや、さらなるダーツを放ちながら、遮二無二に突撃してくる。

 散弾銃が排莢の後に自動装填され、発砲。

 距離が近づいたため、さらに多くの穴が布魔に開くが、被害を無視して突っ込んでくる。

 ここで散弾銃の必殺距離――あと少しで刃物が有効になる距離。

 キシは冷静に相手の頭に照準し、発砲。散弾の半数でも命中すれば、頭部はズタズタになるはずだった。

 ここで布魔が意外な行動を取った。横に百八十度回転し、背中を見せたのだ。

 どんな意味があるのだろうとキシが訝しがりかけ、布魔の後頭部を見てハッとする。

 頭部へ放たれた散弾は、後頭部にくっ付いていたティシュー装甲にぶち当たったのだ。


『機体後部にはティシュー装甲が残っていたのか!』

『狙いが正確で困るのは、そっちの方だったな!』


 少し前のやり取りを揶揄する半笑いの言葉が、全波帯通信で送り付けられてきた。

 その間にも両機体の距離は縮まり続け、とうとう刃物の距離になった。

 背中を見せていた布魔は、再び反転し、機体正面をファウンダー・エクスリッチに向けながら、左手にある刀で斬りかかってきた。

 しかし刃物の間合いとはいえ、刀の必殺の間合いには少し遠かった。

 ファウンダー・エクスリッチが上半身を上に傾けながら避けると、切っ先だけが肩口に入り、左肩だけに薄い斬り傷だけを残して通り過ぎていく。

 キシは武器を振った直後の無防備な布魔の胴体へ散弾銃の銃口を向け、引き金を引く直前で、少しだけ狙いを左に反らす。布魔の右手にあるダーツ銃が狙ってきていると悟ったからだ。

 発砲音、散弾がばら撒かれ、ダーツ銃をくず鉄に変える。

 しかしその寸前で、布魔の右手は銃を手放して引いてあり、散弾は機体にかすりもしなかった。

 武器を失わせたところで、キシは自動排莢中の散弾銃を、再び相手の胴体に向けようとする。

 だがそこで、布魔の銃を手放した右手が、左手が持っていた刀の柄を握る姿を目にした。

 キシはファウンダー・エクスリッチの左腕を操作し、盾を刀の軌道と自分の機体の間に位置させることを優先した。ここで仮に布魔の胴体を吹っ飛ばしても、振るわれる刀に両断されて相打ちになると判断したためだ。

 その決断は功を奏し、斬撃は盾とその下に隠してあった回転弾倉式拳銃を両断しただけで、機体の腕に被害は受けなかった。


『チッ。硬ぇな!』


 全波帯通信での舌打ちと共に、布魔は素早くファウンダー・エクスリッチの左側に回り込んでくる。散弾銃を右手で持っているため、そちらに回られば照準がつけ難くなると読んでの行動だった。

 ここでキシは、突如背中の大型バーニアを大噴射させ、機体に加速度を叩き込む。

 前へと大飛びしたファウンダー・エクスリッチに、横に回ろうとしていた布魔は反応が遅れて、追いすがることができなかった。

 キシは少し飛んですぐに着地し、即座に長身地旋回。相手と向き合い、散弾銃を構え直す。

 そして散弾を放って布魔を近づけないようにしながら、キシは取るに足らない雑談を全波帯通信で送り始めた。


『この機体を見慣れないって言ってたから、君はここ数年でプレイし始めたプレイヤーだな』

『……チッ。その機体、有名な改造機たったのか?』

『改造項目にレシピがある機体だよ。ファウンダー・エクスリッチ。最初期に活躍した、初期三機体で作れるテンプレ改造機さ』

『知るかよ、そんな機体。初期三機なんて売っても二束三文にしかならねえ、雑魚中の雑魚じゃねえか』

『その雑魚な改造機に、翻弄されている君は何なんだろうね?』

『こっちの腕が劣ってるってんだろ。いつも古参組は、リアルマネーで改造機を買う連中を、そうやって見下しやがる!』

『事実だろ?』

『お前らがよくいう『弘法は筆を選ばず』ってやつだろ。けど、そいつは違うんだぜ。弘法の腕に達するまで筆は選ぶべきなんだよ。使いやすい機体、強い武器、最新の装甲に頼れば、多少腕が拙かろうと勝てる。違うか!』


 下がるキシを追いかけて、布魔が左右に蛇行して散弾を避けながらも、徐々に近づいてくる。

 ファウンダー・エクスリッチの大型バーニアを逃走に使えればよかったのだが、これは前方へ直線的にしか使えないブースターのようなものだ。そして『幻影舞踏ミラージュダンス』は大型バーニアのその特性を、無理やり機体を振り回して歪めることで斜め移動を可能にする回避法。

 どちらも、後ろへの逃走は使えない。

 上手くファウンダー・エクスリッチの弱点を突かれてしまい、徐々に窮地になりつつあるが、キシはまだまだ余裕だった。


『筆を選べっていうのは、その通りだよ。実際、俺はは既存機体レディメイド部門と軽改良機ライトカスタム部門で世界一になったけど、機体性能の差が顕著にでる他の部門では、日本の代表にすらなれなかったほどだ。腕が良くても、機体のスペックが足りなきゃ負けるなんて、重々承知しているよ』

『へぇ。他の老害どもとは意見が違うってのか。流石の日本代表さまは、言うことが違うな』


 関心したような言葉だが、キシは全て布魔のパイロットの言葉に賛成とも言い難かった。


『けど、どんなにいい機体に乗ろうと、機体を十全に使えないんじゃ宝の持ち腐れっていうのも事実だよ。実際、俺がその布魔に乗っていたら、ファウンダー・エクスリッチなんて誰が乗ろうと一分以内に鉄くずにできるしね』

『……分かったよ。いまから一分以内に、片付けてやるよ!』


 背部バーニアを噴かして、布魔がより前に出てくる。

 キシは左手で背中から、手榴弾を二発取り出す。これで手榴弾の在庫はお終いだ。

 それらをサイドスローで布魔に投げつけ、その軌道を散弾銃で追う。

 この行動の狙いを悟り、布魔は前進を止めると、真横へと退避する。

 相手を少しでも爆炎に巻き込むべく、キシは散弾銃を発砲。散弾に貫かれた手榴弾二つが、同時に爆発した。

 巻き散る破片と広がる爆炎。

 それらを少しは被ったものの、布魔は依然健在だ。

 キシは操縦桿を操作し、腰からアサルトライフルを取り出す。それと同時に、短銃身散弾銃を軽く上に投げ、銃口が手前になるように右手で掴む。

 不可解な行動に見えるが、布魔のパイロットは見抜いた。


『どうやら散弾銃は弾切れのようだな!』


 嬉しそうな声の後で、再び布魔がバーニアを最大に噴かして前へ飛び込んでくる。

 キシはアサルトライフルの照準を合わせ、単発発砲。

 布魔の肩に弾丸が当たり、そこにあった装甲がはじけ飛んで後ろに流れた。しかし突進は止まらない。

 もう一度発砲。今度は三点射。

 布魔が横に避け、二発外し、一発命中。腰にあった弾薬箱が弾け飛び、アサルトライフル用の弾と弾倉が零れ落ちる。

 再照準――そのとき、布魔が零れ出てきた弾丸と弾倉を片手で救い、ファウンダー・エクスリッチの顔へと投げつけてきた。

 露骨な目つぶし。

 しかし当たった衝撃で暴発しないとも限らないため、キシは対処を強制されてしまう。


(仕方がない)


 アサルトライフルでの牽制は続けながら、右手の散弾銃の銃床で飛んできた銃弾と弾倉を打ち払う。

 この対処が適切だった証明のように、何発かの弾丸が暴発し、ファウンダー・エクスリッチの胴体に火花を散らせた。

 こうして対応で一手損をさせられている間に、布魔は再び刀の間合いに入り込んでいた。


『貰った!』

『ダメだね!』


 振るわれた刀に対し、キシは散弾銃を盾にして受け止める。

 刃が銃の構造を斬り裂き、あっという間に半ばほどまで達した。

 この瞬間、キシはファウンダー・エクスリッチの右手を思いっきり引かせた。散弾銃自体に不意の力を発生させて、銃身を噛んでいる刀を捻り折ろうとしたのだ。

 しかし、リアルマネーをつぎ込んで購入したらしき刀は、とてつもない名刀だったようで、多少は曲がりはしたが折れない。

 そんなごく短い攻防を行えるぐらいしか、散弾銃は刀を押しとどめることができなかった。

 真っ二つにされた散弾銃を投げ捨てながら、キシは左手のアサルトライフルを右手に持ち替える。

 続けて左太腿の外部装甲を展開しつつ、頭部狙いで振るわれた刀を屈んで避けた。

 外部装甲の中にある武器――銃剣に改造されたナイフを取り出しつつ、屈んだ状態から伸びあがることで後ろへ跳躍。空中にいる間に、アサルトライフルの先に銃剣を装着する。

 さらに着地した直後、口頭命令を発する。


『両足、外部装甲、パージ!』


 爆発ボルトが作動し、不必要になった両足の外部装甲が外れて落ちる。その下にある、ハードイスの装甲がつけられたファウンダーの脚部が現れた。

 余計な重りを取り払ったことで、少しだけ移動速度を上げる成果を得る。

 しかしその多少の速度など関係ないとばかりに、布魔が前へと出てきた。

 接近し振るわれる刀に対し、キシはアサルトライフルを構え銃剣で阻止する。

 金属が噛み合う音が弾け、刀とアサルトライフルが軋む。

 この衝突の影響は、斬撃に最適化された刀よりも、斬撃を想定していないアサルトライフルの方が濃く反映された。やや銃身が曲がってしまったのだ。

 現時点で射撃に影響があるような曲がり方ではないが、これから連続して防いだ場合、射撃不可能の事態になることは目に見えている。

 それを悟ったのはキシだけではなく、布魔のパイロットも同じこと。

 

『一気に攻め切る!』


 言葉に出すことで目的をはっきりさせ、布魔のパイロットは猛攻を仕掛けてきた。

 一方でキシは、アサルトライフルの銃剣で受け続ける。布魔が刀を振るう速度に対して、ファウンダー・エクスリッチの腕の稼働速度では反撃に転じられないのだ。

 この腕の速度も、キシが徹底して布魔と接近戦を演じようとしなかった理由の一つだった。

 こうして徐々に追い詰められつつあるキシは、とうとうアサルトライフルの銃剣ではなく銃身で受けざるを得なくなった。

 弾き飛ばされるようにして、ファウンダー・エクスリッチの腕からアサルトライフルが離れる。

 一縷の望みをかけるように、ファウンダー・エクスリッチは大型バーニアを噴射させ、前へ体当たりを敢行。刀を振り切った体勢だった布魔はショルダータックルを食らい、後ろに大きく弾き飛ばされる。


『ぐあ――悪あがきを!』


 布魔の背中のバーニアを噴射させて、姿勢制御。背中からではなく、足で着地し、刀を構え直す。

 一方でファウンダー・エクスリッチは、もう武器がないかのように、右腕を前に真っ直ぐに突き出す格闘の構えのような姿をしていた。

 そのとき、ニセモノカーゴがある方向から、爆発音がし始めた。あの周囲に置いておいた人型機械の残骸が、接近する敵機体を感知し、自動的な射撃を行っているのだ。

 しかし定点防御のため、移動できる敵人型機械が普通に対処すれば、時間稼ぎ以上の働きは出来ないような防衛装置だ。

 そしてニセモノカーゴに弾丸が撃ち込まれたら、それが作戦終了の引き金になる。

 そうとは知らずとも、その戦闘音を聞いて決着の時間が近いことを、布魔のパイロットも悟っていた。そして機体に刀を改めて構えさせる。


『仲間がいたようだが、無茶苦茶に銃撃している音からするに、護衛に残した連中はヘボなんだろ。なら、お前をさっさと斬り倒して、先に行った二機よりさきに運搬機を壊して、ポイントを回収させてもらうぜ!』


 宣言と共に飛び掛かってくる布魔へ、キシはファウンダー・エクスリッチを右腕を前に突き出させたまま、言葉を口にする。


『全外部装甲、パージ』


 口頭命令に従い爆発ボルトが作動。両腕と胴体についていた外部装甲が落ちる。

 全身につけられた、ハードイスの装甲。後付け装甲の肘と肩の部分には、腕の動きを補助するために、関節の外側にパイプとボックスギアが繋いでいる。

 そして右の腕――前腕部に短い弾倉がささったサブマシンガンがくっついていた。外部装甲と本来の腕との間に配置した、隠し武器だ。

 その銃口を目にして、布魔は大慌てで横に跳んで逃げようとするが、それよりサブマシンガンの銃口が火を噴く方が早かった。

 軽快な連射発砲音と共に、至近距離にまで迫っていた布魔の顔面に小さな穴が多数開く。

 しかし、これだけでは破壊判定はでなかったようで、横に退避をされてしまう。

 キシは撃ち終わった短い弾倉を左手で引き抜くと、弾薬箱からバナナ型長弾倉を取り出し、サブマシンガンに入れる。

 そして弾倉を左手で握りながら、右腕で照準しつつ、布魔に接近していく。

 唯一飛び道具を持ち、その銃が近距離でも取り回しの良いサブマシンガンという、ファウンダー・エクスリッチが有利な状況。

 絶体絶命の窮地に追いやられ、布魔のパイロットは腹を括った。


『こうなりゃ、相打ちだ!』


 刀を腰だめに構え、吶喊してくる。

 仮にサブマシンガンの銃弾が頭部を破壊しようと、勢いに乗った布魔の機体は、そのままファウンダー・エクスリッチのコックピットを貫くだろう。

 かといってここでキシが避けたとしても、同じ状況が続くだけ。

 決死の突撃で、一気に形勢逆転――とはいかなかった。

 キシはファウンダー・エクスリッチに左腕を振るわせる。腕につけたハードイスの装甲の下から、ナイフの刃が飛び出してきた。隠し刃だ。

 その刃を振るい、キシは布魔の刀を横に弾く。同時に、右の腕にあるサブマシンガンの銃口が、相手の頭部にくっ付けられる。

 引き金を引きさえすれば決着という構図に、布魔のパイロットは悔しがる口調で全波帯通信で言い放つ。


『どんだけ武器を隠し持ってやがるんだよ!』

『粘り強く戦い、隠し武器で相手を倒すのが、ファウンダー・エクスリッチの真骨頂なんだ。いい勉強になっただろ』


 そういいながら、キシは操縦桿のボタンを押してサブマシンガンを撃とうとして――ふと悪戯心が沸いた。

 そこで、こっそりと左腕にあるナイフの先を、布魔のコックピットに押し当てる。


『『チェック』――『メイト』』

『なっ!? またオレから機体を奪いやがって、お前はやっぱり、あのクソ店員のコピーだ! 次に会ったら、絶対に撃破して――』


 怒り口調の通信が、激しい放電音を伝えてきたのを最後に途切れた。

 ティシュー装甲を失い、機体に多数の弾痕が刻まれた布魔は、こと切れるように膝から地面に落ち、前へと倒れる。

 その背中をキシはファウンダー・エクスリッチに踏ませる。せっかく鹵獲したのに、これから爆発するニセモノカーゴに向かわせるわけにはいかないからだ。

 そしてキシは、全波帯通信から特定者通信に切り替えて、砂丘に偽装したカーゴの中にいるティシリアと連絡を取る。


『こちらは作戦終了。ニセモノカーゴの方はどうなっている?』

『お疲れ様、キシ。向こうはーっと――作業していた人は全員退避完了済みで、いつでも起爆できるそうよ。『砂モグラ団』の報告だと、いま人型機械の残骸を破壊し終えた二機の敵機体が、ニセモノカーゴに進軍中だそうよ』

『敵機体がニセモノに弾丸を撃ち込んだら自爆させて、その瞬間に通信設備の電源を落とす――わけだけど、その設備を乗せた機体運搬用トラックは、爆風範囲から出ているよな?』

『その点は心配しないでいいわ。爆風にあおられて転ばないように、地面に人型機械の脚部フレームを突き刺して、そこに横付けさせてあるわ』

『大丈夫なようには聞こえないけど――まあいいや。タイミングは任せるから、盛大な爆発、期待しているよ』

『任せなさい。一世一代の大花火を見せてあげるわ。もっとも発破指示を出すのは、現地で作業している人で、私じゃないけれどね』

『ん? その口ぶりだと『知恵の月』のメンバーじゃないのか?』

『休憩所にいた人を数人連れて、ビルギがトラックを運転していったの。その彼らが、爆破ボタンを押すことになっているわ』

『それって、本当に大丈夫なのか――』


 キシが通信で疑問を呈した直後、ニセモノカーゴがある場所が盛大に爆発した。

 その爆炎は、噴き上がった砂と爆煙でキノコ雲を作るほど大きく、数キロは離れた地点にいるはずのファウンダー・エクスリッチが立つ場所まで衝撃が伝わってくるほどだった。


『……なあ、本当にトラック大丈夫なんだよな?』

『えーっと――なんか通信で死にそうだったとか、口汚い声が聞こえているから、平気なようよ』

『生きているならよかった。とりあえず、通信設備を止めたかどうかだけ、確認よろしく』

『もちろん、それは真っ先に聞いたわ。ちゃんと止めたそうよ』


 ティシリアの報告を受けて、キシはとりあえずは作戦終了を実感した。

 それと同時に、カーゴをニセモノにすり替えて爆発させ、その瞬間に通信設備を切ることで、人型機械の大元に『知恵の月』のカーゴが撃破されたように見せかけられた、少しだけ心配になった。


(この作戦が成功したか失敗したかは、他の組織流れてくる情報か、ほとぼりが冷めたころに通信設備を起動させて確認するしかないんだろうな)


 いち早く成否を知りたいが、それは叶わないと理解して、キシはとりあえずファウンダー・エクスリッチに布魔を持ち上げさせて、砂丘に偽装している本物のカーゴがある場所へ向かって無限軌道による移動を開始したのだった。

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[一言] キシは少し飛んですぐに着地し、即座に長身地旋回。 長身地旋回>超信地旋回
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