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二十六話 カーゴの中

 キシと戦闘部隊の三人は、後部銃座に開いた穴から新規カーゴの中へと入った。細い金属ワイヤーを使っての降下だったため、キシは運動音痴の自分が行えるとは思えず、戦闘部隊の老人に支えられながらようやく中に降りることができた。

 床に到着した後で中を見回すと、機関銃の弾が大量に並べられている大部屋だ。給弾装置に弾を運ぶためのロボットアームもある。

 この火薬庫で戦闘になったらまずいと戦闘部隊は判断し、素早く部屋の外へ出る準備をする。幸いなことに、メンテナンスハッチが見つかり、そこからカーゴの中へと侵入を果たすことができた。

 そこは直線状に並ぶ、人型機械のハンガーたちだ。四つあるそれらのうち、三つは別々の機体が一つずつ入っていて、一つだけ空っぽである。

 入っている内、一つは戦闘部隊も見たことがある機体――つまりはエチュビッテであった。

 他の二つの機体を、キシは観察する。

 片方は500mlアルミ缶で人形を作ったような外観の機体。もう片方は人の体に装甲版をベタベタと張り付けて鎧にしたような機体――よく見れば、脚部は逆関節で、下腿部には無限軌道がついていた。


「円筒を繋ぎ合わせたような丸い四肢と胴体の機体が『ファウンダー』。足が逆関節で装甲版をたくさん貼り付けましたって機体が『ハードイス』。エチュビッテと違って、この二機は初心者にも操りやすいいい機体だよ。どちらも改造を受けた様子がないから、本当に出荷状態レディーメイドのままだ」

「解説どうも。けど、ちゃんと警戒してて」


 膝に乗せていた方の女性に怒られたため、キシは自動拳銃を握り直して、三人の後についていく。

 四人が警戒しながらハンガーを進んでいくが、特に何者かが出てくるということはなく、そのまま先頭にたどり着いてしまう。

 戦闘部隊の三人は拍子抜けした様子で、カーゴの先頭部分を漁り始め、隠された扉を発見する。そして隠し扉の横の金属を剥がし始めた。


「なにをしているんです?」

「この扉を閉じている動力や鍵を切るんだ。そうすりゃ、力づくで開けられる」

「戦闘部隊って、機械の仕組みにも詳しいんですね」

「あくまで、壊すだけはだな。直し方はしらん」

「でも、効果的に壊すので、修復するときも楽だってメカニックには言われていますね」


 なるほどとキシが頷いている間にも作業は進み、電線は手持ち部分に絶縁処理がされたナイフで切られ、扉を支えているらしき金属の棒は三人がかりでへし曲げられてしまっていた。

 そうして力づくで、隠し扉は開けられることになった。

 扉の先にあったのは、人型機械のコックピットに似た空間で、全周モニターには外の景色が映っている。後ろ斜め上を見上げれば、キシたちが乗り捨てたエチュビッテがのしかかっている様子も見える。

 部屋の中央部には操作盤と台があり、どこかから信号を受信しているようで、画面の文字や印が自動で現れたり消えたりしている。


「これを消しとけば、運搬機は動かなくなりそうだの」


 老人は台に近づくと外装を剥がし、中のコードを手探りで確認した後で、一束をナイフで切断。その途端、新規カーゴが走る揺れが収まり始め、モニターに映る景色の移動もゆるやかになっていく。

 やがて、砂と岩の丘に真正面から乗り上げて、完全に停止した。


「さて。あとは、お嬢がトラックで追いかけてくるまで待つとするか。だが、ここに入る場所が問題だなぁ」

「それなら、人型機械が運搬機から出る際にハッチを開けるので、その機構を動かせばいいんじゃ――」

「二人とも、中での作業が終わったのなら、外に出てこれの確認を」

「なんだか危ないものの様なんだけど」


 キシの発言を遮って、部屋の外で警戒していた戦闘部隊の女性たちが、警告含みの声を上げる。

 キシと老人は顔を見合わせると、銃器を構えながら部屋の外へと出る。しかし、他に誰か立っている様子はなかった。

 不思議に思っていると、戦闘部隊の女性たちは機体を止めるハンガーのすぐ横に立って、二人を手招きしている。

 緊急事態ではない様子に、キシと老人は銃器を下ろしながら、彼女たちの近くへ寄った。


「見つけたのは、なんだ?」

「それがね、ガラス筒の中に入った人なんだよねー」


 女性が指したのは、確かに透明な大筒に入って浮いている人間だった。

 上下に機械がくっついたシリンダーの中には、身長は百六十センチほどの痩せ型の女性体。髪も眉も下の毛もなく、衣服も身に着けていない。だが、ヘソの部分にだけホースのような管が繋がれている。

 衝撃的な見た目にキシが唖然としていると、周囲を漁っていたもう片方の戦闘部隊の女性が声を上げた。


「こちらの四角い金属の箱の中には、衣服が入ってる。何着かあるけど、全て女性もの」


 キシが顔を向け、彼女が持っている衣服に見覚えがった。


「ああそれは、ゲームを開始した瞬間に何着か自動で貰える、アバター用の衣服だ。俺が来ているコレに似ているものもあるはずだよ」

「確かにありましたが、新品同然のものが十着ほどありました」

「やっぱり――っていうことは、このガラスの中に入っている人間は、やっぱりプレイヤーのアバターってことか……」


 キシが浮かんでいる人物を見ながら難しい顔をしていると、戦闘部隊の女性二人に軽く突かれた。


「キシも男性だから女性の体が見たいのはわかるけど、そうやってまじまじ見るのはどうかと思うんだけど?」

「同じ女性として、幻滅するなー」

「ち、違うって! アバターってこんな風に保管されるんだと思ったり、顔に見覚えがないか確かめていただけだから!」

「「本当かなー?」」


 異口同音に疑われて、キシは慌てながら再度の弁明を行う。


「本当だって! いかがわしい目でみたわけじゃないんだってば!」

「「ふーん」」


 女性二人の視線が、キシの顔付近から下がっていき、やがて股間部へ。そこに外見上の変化がないと見取り、とりあえずは納得してくれた。


「理由は分かったけど、キシは見ちゃだめ」

「女性のことは女性に任せておきなさいって。幸い、組織うちのうち五人女性だから、手が足りなくなるってことはないしね」

「わかったよ。見ないようにすればいいんだな――って、見るように最初に行ったのは、そっちじゃなかったっけ?」

「むっ。あっさりと悪戯していたことがバレた」

「意外とキシって賢いのかな?」


 あっけらかんと悪事を言い放つ女性二人に、キシは何か言おうとして諦めた。口で勝てるとは思えなかったのだ。

 キシはカーゴの端――ハンガーがある方とは逆側に移動すると、そのハッチを開け放つべく、壁を調査し始める。女性二人に弄られたキシが不憫に見えたのか、老人も手助けを始め、やがて開閉する方法を見つけて、ハッチを一つ運搬用トラックが入れるぐらいまで広げることができたのだった。


カーゴの中にあった初期三機体の外見、作者はこんなイメージを各機体にもっていますという、補足説明です。


ファウンダーのイメージは、『ガンダムW』のリーオーに『ロックマンDASH』のロックのエッセンスを足したような外観。量産型っぽい見た目の中に、主人公機っぽいニュアンスを混ぜつつも、軽くダサめに手直しした感じですね。



エチュビッテのイメージは、『Gのレコンギスタ』のエルフ・ブルックを小型化&華奢にし、背中に『ガンダム0083』のガンダム試作3号機ステイメンの背部バーニアをくっつけた雰囲気。

もしくは、『スパロボ』のリオンの脚部とバーニアを残し、アルテリオンの胴体部と頭、ブラスタの腕を移植といった感じです。

機体装甲が薄くて風防のごとしなのは、ヴァイスリッターを参考にして(オマージュして)います。



ハードイスのイメージは、『ボーダーブレイク』のアイアンフォートD型の上半身に、『マクロス・ゼロ』のデストロイド・シャイアンの下半身を装甲化&マッシブにしてくっつけ、逆関節足のふくらはぎ部分に無限軌道を装着した感じです。

高速移動形態では、無限軌道を地面にくっつけるため、膝立ち正座のような状態になります。

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