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プロローグ

 巨大な人型機械ロボットがある。

 鉢金を付けた額と両眼モニター。肩から腕にかけてある包帯のような布と、装甲で膨らんだ太腿と、逆に装甲が薄く引き締まった印象のふくらはぎ。シルエットから容貌を例えると『忍者』という言葉がぴったりな機体だ。

 その周りにはタンクトップやTシャツにカーゴパンツというラフな服装の多数の男女が入り乱れ、チェーンクレーンのような機械を人型機械に横付けし、どうにかその場から運び出そうとしている。

 彼らの近くに、地面に座り込んだ一人の人物がいる。

 他の人たちとは違い、体の線がぴったりと出る化学繊維素材の服を着た、近未来的な装いの二十歳前後の容姿の男性だ。


「それ、俺の機体なのに……」


 呆然と呟く彼の言葉は、周りの人たちの耳には入らないようで、作業を進めていく。

 そんな彼のもとに、近づいてくる一団がいた。

 動きやそうな服装という以外、デザインも色もバラバラな一団は、二グループが歩いているらしく真ん中で人ひとりが通れるぐらいの隙間を開けて、並んで歩いている。それぞれの集団の先頭を歩くのは、三十歳ほどの容姿の野戦服姿の男性と、十代半ばのTシャツカーゴパンツ姿の少女だ。

 座り込んでいる青年は、あの少女に見覚えがあった。目の前にある擱座している機体のコックピットから、彼を引っ張りだした人物だからだ。

 青年が見つめている先で、男性の側が「再度確認する」と一言断ってから、少女に声をかけた。


「お前らが蓄えた借金をこちらが払う代わりに、あの機体は俺たちのものってことでいいんだな?」

「もちろんよ。その代わり、あれの『運転手』はこちらが貰うからね」

「ふん。要らんよ、あんなもの。しかし『不殺の赤目』が乗ってきた、この機体。初めて見る型だな」

「よかったじゃない。最新鋭機なら、私たちの借金の分以上の価値があるってことなんだから」

「……価値を知ってごねないとは、やけに素直だな。奇妙なほどに」

「なによ。追加報酬払ってくれるわけ? どうせ払ってくれないんでしょ? なら言うだけ無駄じゃない」

「ふんっ。事前に結んだ契約は覆さない主義だからな。たとえそれが、こちらに不利になる結果に終わったとしてもだ」

「そういうところを信用して、この話に咬ませてあげたんだから、感謝してほしいわ」

「感謝するだけならいくらでもしよう。金を一切払わなくていいのならな」

「この守銭奴! イーッだ!」


 喧嘩別れのような言葉だが、両者とも笑いながら握手し、それぞれが左右に分かれる。

 男性が率いる一団は、忍者のロボットへ。少女が率いる一団――分かれると十人に満たない集まりだ――は、地面に座り込んだ青年へと近づく。

 そして先頭の少女が声をかける。


「『不殺の赤目』。あなたの身柄は私たちが預かるからね」

「不殺の赤目?」


 青年が不思議そうにオウム返しに尋ねると、少女は苦笑いしてバンダナでまとめている頭を掻いた。


「あー、それも、そうよね。こっちが勝手につけたあだ名だものね。ねえ。あなた、名前は?」

「名前? 比野――いや、キシ・ヒノだ」

「キシね。私はティシリアよ。あなたは私たち、人型機械からの土地解放隊の一つである『知恵の月』に迎え入れるわ。もっとも、嫌だといっても、入ってもらうけどね」


 問答無用な口調で、ティシリアと名乗った少女は、キシと名乗った青年の手を取って、無理やり握手させる。

 キシは呆然とそれを受け入れつつ、ふと口を突いて出たように疑問を口にした。


「なあ。これってゲームじゃないのか?」

「私たちの活動は遊戯なんかじゃないわ。真剣に、あなたたちが操る人型機械から、我々の土地を取り戻すために活動をしているの!」

「いや、そういうことが聞きたいんじゃなくて……」


 キシは悩みに沈み、頭を抱える。

 そんな彼の様子が目に入らないのか、ティシリアはキシの腕を引っ張って立たせると、連れ歩いていた男性の一人に押し付けて、人型機械がうずくまっている廃墟の外へと歩き出す。彼女の仲間たちもそれに続いていく。

 その中で、キシは引っ張られながら、ついさっきにあった出来事を、頭の中で回想を始めるのだった。

というわけで始まりました、新連載。

今回はロボットバトルものです!


お楽しみくださいね!

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