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決めたら即効
とりあえず、授業の合間にある小休憩にダッシュする。周りが、珍しそうに霧乃を見る。まぁ、普段冷静に行動しているし、騒がしくしていないからそんな風に見られても仕方ない。
しかし、ダッシュだ。この休憩を逃したら放課後だ。そんなのごめんだ、絶対に嫌。律儀な自分も嫌だった。桐谷の事なんか無視してればいいじゃないか。そんなの知らない、と。
だけと、そうもいかなかった。不思議だった。どんな感情に動かされているのかわからないけど…霧乃は桐谷と向き合う事にした。そう決めた。さっき、決めた。
(目があっただけで、声をかけられた。なら、ずっと桐谷だって、私のこと気にしてたかもしれない。気にかけてたと、思いたい)
ただ、放課後のロングタイムに向き合う勇気はなかった。だから、今。
コンコン
ノックする。
どうぞ。
桐谷の少し低めの声。
ドアを開ける手は少し汗ばんでいた。
走ったせいにした。緊張なんかしてない。
そう、言い聞かせて、うつむいたまま準備室に入った自分の顔をあげた。
ああ…
そんな目で…
(そんな目で見ないで)