だから苦手なのに 2
はじめまして、霧乃ちゃん?
私には少し年の離れた兄がいる。
そんな兄が4年前に連れてきた大学の友人。
それが、桐谷柚だった。まだ中学にあがったばかりの私から見たらとても大人に感じた。
そして、カッコいいなとも思った。背も高いし、何より周りにいる同じ年の男子なんかとは全然違った。
優しくしてくれた。
子どもだった私にかまってくれた。
兄に対するそれと同じように、彼になついて。
何度か家に遊びに来てくれた時には勉強も教えてくれた。
いいなと思うのに時間はかからなかった。
そりゃそうだ。私は子どもだったのだから。
憧れのような気持ちだ。
彼には、彼女がいた。何度か見た彼女は髪が長くて気さくで、可愛い人だった。兄とその友人達とグループで皆仲が良かったようだった。
春には花見、夏はバーベキュー、冬はスノボだったろうか。バーベキューには一度兄にひっついて、連れていってもらったことがある。
そのうち、彼女とは別れたと耳にはさんだ。
だからどうという訳でもなかったのだが。
季節は巡り、一年たった。
私は気軽に桐くん、と呼んでいた。私は霧ちゃんと呼ばれて、兄にキリキリどっちがどっちかわかんねぇなと笑われた。
なんだそれ、とも思ったが幼い私は同じ響きの名前なのが気に入っていた。…本当に幼いな、恥ずかしい。
一度、彼が兄の部屋に泊まったことがあった。いつもは兄が一人暮らしの友人宅に行くのだが、その日はDVDを見ながら飲んでいたようだった。
ノックして兄の部屋を覗くと、二人はゴロンとそのまま横になって寝ていた。そっと、二人に毛布をかけて、チョコンと桐谷の横に座ってみた。
そう、あの時毛布なんかかけなかったら、
いや、横になんか座らなかったら、
あんなこと、起こらなかっただろうに。