全部君にあげる
君じゃなきゃ、意味がない。
さぁ…と木漏れ日が窓から差し込み、手元に少しの明かり。
ふと、二階のその窓から目を外にむける。
小さくため息をして、一際白い肌の少女を自然と目でおってしまって深く深ーく、ため息をつく。
2年1組、朝上 霧乃 17さい。
たまに見せるはにかむような笑顔が一部の男子に人気あり。長い黒髪をポニーテールに束ねたウナジの白さとクールな瞳、スラリと長い手足に加えて運動神経の良さは女子に圧倒的なファンをうんでいる…
成績容姿ともに中の上、いや…磨けばまだまだ…むぐっ!!
突如として背後、頭上で解説よろしく現れた同僚の口を手でふさぐ。
おいしいねぇ、おいしいなぁ、ね?桐谷センセ??
ふさがれた口から、手をのけてやって俺に悪魔のような笑顔で、それでいて面白そうに、くっくっくっと笑いながら話しかけてきた、コレ…いや、こいつは、桜木郁。大学から、職場まで同じ腐れ縁。俺たちは、高校教師になった。
…るさい。桜木。
ぼそりと言った、俺のつぶやきが聞こえたか聞こえないか、三時限目終了のチャイムがなったと同時に桜木は、さてとっと、腕を伸ばし長身で伸びをしながら、勝手気ままに部屋を出ていく。
去り際に次は愛しの朝上ちゃんの授業じゃん。桐谷センセ?
そう言い残して。
ほんと、うるさい。どうにかしてくれ。
そう思いながら、古典の教科書を手にもち、額にあてる。
自覚させないでくれ。
頼むから。