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御神宝はペトログラフ

「つまりさあ、宮崎市周辺を都にするのは、あんまし良くなかったのかもしれないね。霧島は時々噴火するし、日向灘沖地震なんかもあって津波の被害もありそうだし……」

そうだろうなあじゃろなあ

「で、ここ県北に高千穂宮を造営した」

「じゃろなあ。ここやったら、隣の大分の統治にも便利やし、この先熊本を抜けっせ阿蘇、熊本に移動し易い。八女、筑後、佐賀平野方面にも移動出来る。九州全体を統治すっとに、良か場所じゃ」


 既にお昼時である。雄治は車を走らせ、途中で見かけたファミレスに向かう。


「でもさ、どうして邪馬台国本家は宮崎市生目が拠点だったんだろう……」

「あれ? 天才紗耶香様らしからん愚問じゃね!?」

「ん?」

「キクチヒコが邪馬台国に歯向かっせ、狗奴国が敵対しちょったからやろ!? そィで都合がわりなって、宮崎市ン方に戻したっじゃろな」

「ほう。なるほど~」


 あたしはあらためてWebマップを眺めた。

 うん、雄治の言う通りかも。熊本県南の狗奴国が敵対したら、ここ宮崎県北高千穂の地は少々危険かもしれない。ダイレクトに攻め込まれるリスクが生じる。しかも八女、筑後、佐賀方面に抜けるルートまでもが狗奴国勢に抑えられてしまう。言わば頭を抑えられるようなもので、都としての機能が麻痺してしまうではないか。


 だから卑弥呼様の頃は、都を再び宮崎市付近に移動させたのか。――

(宮崎市なら卑弥呼様の言うように、霧島の傍らを通って九州山地を縦断し、八代海有明海経由で佐賀平野までのルートを確保出来るもんね)


 卑弥呼様の時代は、霧島の火山活動が沈静化していたタイミングだったのかもしれない。海岸端だといつ津波の被害を受ける分からないので、若干内陸部の生目古墳群付近、或いは大淀川を挟んでその対岸の瓜生野辺りを都としたのか。

 そう考えると、筋が通りそう。――


「じゃっどじゃっど~」

 と雄治も頷く。


 あたし達はファミレスで日替わりランチを食べつつ、しばしの休息をとる。その次に向かったのは、先程の高千穂神社や高千穂峡から西に二〇kmちょっと先にある、幣立へいたて宮という謎の神社である。宮崎県北から熊本県山都町に抜ける、国道二一八号線沿い右手の丘上にある。

「ここも、妙な神社じゃ」

 長い階段を登りつつ、雄治が言う。


 あたしも一応下調べをしているので、雄治の言いたい事は解かる。ここ幣立宮は、応神天皇の謂れのある「隠れ宮」だった、という。

 記紀神話に記載のない神々の、天孫降臨伝承がある。ただし一説によると、天皇の宣命や祝詞には、何故かそれらの神々の名が登場するという。太古には世界中の人種、即ち「五色人」がここに定期的に集い、祭礼が営まれたらしい。御神宝はペトログラフ、つまり神代文字の一つ「阿比留文字」の刻まれた石版なのだとか。


 丘の上まで登り切った。そこにお宮がある。

 境内の趣きは、どうだろう。スゴく良い雰囲気ではあるが、少なくともあたしの直感に響くものは無いなあ……。残念ながら御神宝ペトログラフの拝観も無理だった。御開帳の時を狙って来なきゃダメみたい。


 あたしと雄治はクルマに戻り、次の目的地を目指した。


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