大学生ってガッコの勉強だけしてればいいの?
最後の試験が終わった時、雄治に呼び止められ、
「休み中に、あちこち遺跡を回ってみらんか?」
と誘われた。
「敬太郎は、家庭教師先の生徒が受験生やっで時間が取れんらしい。智ちゃんも、なんか忙しくてムリや……っちゅう話やった。しょうがねえから、ふたりで県北やら熊本の方やら回ってみらんか?」
なるほど、面白そうじゃん。――
二つ返事でOKした。日程は、日帰りだと厳しそうなので多分一泊。いや二泊になるかもしれない。交通費宿泊費は割り勘。
OKするにあたって、あたしはひとつ、覚悟を決めた。
(今こそお父さんと戦う!!)
と……。早速その日の夕食時、
「あたしもバイトする」
とお父さんに宣言する。
「今貰っているお小遣いだけじゃ何も出来ないよ。実質昼食代と学校往復の交通費だけじゃん。図書館にももっとしょっちゅう行きたいし、史跡巡りなんかもやりたい。毎日Tシャツとジーンズで通う女子なんて、あたしだけだよ。み~んなオシャレしてる。学祭のミスコンに出場することになったけど、その費用だってかかるし……」
「何言ってんだ。大学生は勉強にだけ専念してなさい。オシャレなんて、社会人になって幾らでも出来るだろ」
お父さんは、頑として首を縦に振らない。
でも、覚悟を決めたあたしは一歩も引かず、徹底抗戦した。
「大学生ってガッコの勉強だけしてればいいの? 少しずつ社会勉強もしなきゃいけないんじゃない!? 実際あたしはこれまで超過保護過干渉家庭に育って、自分でも呆れる程世間を知らないよ。周りの人と会話してても、ホント何も知らなくて話題の幅が狭いし……。先日なんか経済学のレポート仕上げるのに、何書いていいか全然解らなかった。そんなことじゃダメだと思うんだけど」
――バイトは社会勉強、自立の第一歩だよ。大学生活ってのは自己形成が主目的で、大学の勉強ってその補助的なモノに過ぎないんじゃないの!? 単なる金銭的な問題で、バイトしたいと言ってるんじゃないんだよ。
と、粘り強くお父さんを口説いた。その晩は最後まで許可を貰えなかったが、翌朝になって、
「勉強の邪魔にならない程度の時間なら、バイトしても良い。その代りヘンなバイトは許さんぞ」
と、漸くOKを貰えた。やった~♪
早速着替えて、休暇に入った大学に行く。
学生課の掲示板には、バイト求人票がずらりと張り出されている。一枚ずつ目を通していくが、何しろ地方都市なので単価の安い飲食店求人ばかり。そんな中、県史編さん室の資料整理バイトが目にとまった。
即、その場で電話をかけ、交渉する。六時間ずつ週二日、ということで雇ってもらえることになった。
(雄治との遺跡巡り費用は、取り敢えず貯金から捻出するか……)
雄治のアパートに向かった。Webで色々と情報を漁りつつ、夜までかかってふたりで旅行プランを立てた。